新たな力


某月某日。
馬超様の執務室に呼ばれたかと思いきや、他の用事で馬超様が呼ばれて私は放置されてしまった。
すぐには戻って来そうになかったので、少々乱雑に散らばる物々を片付けて差し上げようと手が動く。馬超様に対してちょっと甘いかな、と自嘲気味に小さく笑った。

「おーい若…ってあれ、いちこちゃん」

「こんにちは、馬岱様。今馬超様はご用事で外されています」

「それで君が若に代わってお片付け?
ごめんね、うちの若が元気すぎちゃって」

馬超様のお守りで大変苦労されているだろう馬岱様が現れた。いちいち可愛い言葉選びにいつも癒される。
馬超様の不在を告げると、私の発言に眉を下げて笑っていた。

「若の副官になってもう結構経つよね」

「そうですね。馬超様も私の扱いに慣れて来たご様子で」

慣れすぎた結果寝ているところへやって来て戸を開ける事態(複数回)なのですが。
その他諸々を察してか、あらら、とおどける馬岱様。床に落ちている竹簡を拾い上げて中身を眺めている。

「でも、君のお陰か若もちょっとだけ変わったのよ」

「そうなんですか?」

「うん」

初めて馬超様の副官に就いた時から然程変わっていない気がするのだけど。様々な場面の馬超様を頭に浮かぶだけ浮かべるも、違いがよく分からなかった。
それが顔に出ていたのか、馬岱様は私を見て小さく笑う。

「若をよろしくね」

改めて言われてしまうと自然と背筋が伸びる。勿論ですと胸を張った。それが私の仕事なのだから、至極当然のこと。
それじゃ後でまた来るよ、とひらひら手を振って出ていかれた。


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