我らが出会って


某月某日。
しとしとと長雨が降る。いつもはからりと乾いた地面も、今日は一歩でも外に出れば足に土がまとわりつく。
そんなわけで、この方は大人しく部屋で執務をなさっているのだが。

「こちら届けてくれと頼まれた書簡です」

「そこに置いてくれ」

「はい。
…馬超様、今日はどうかなさったので?」

大人しく執務とは言うものの、静かすぎる。というか、上の空のような。
普段竹簡に向かう姿勢も真っ直ぐそのものだが、今は筆が止まったまま。外の雨に目線が行っている。

「西涼のことを思い出していてな」

「西涼、ですか」

「ああ。西涼はここよりも滅多に雨は降らない。降らないからこそ、違いを感じて西涼を思い出してしまうな」

この方の下につく前に色々お話を伺ってはいた。時々「これぞ涼州の何たら」と仰るのも聞いていた。
が、こんなしみじみとした形で西涼について聞くことはなかった。

「いつかお前を連れて行ってやりたいものだな」

「…遠乗りには少し遠すぎですね」

「まあ、そうだな」

距離を越えては行けども、魏軍という壁を抜けることは簡単ではあるまい。そういった意味でも、西涼は遠い。
それを汲んでか否か、多分前者で、さみしげな笑みを向けられてしまった。

「でも馬超様とならそれも悪くないです」

「俺も、そう思うぞ」


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