不器用
不器用
「あれ、甘寧は?」
水軍の鍛錬を横目に船の辺りを探すも、奴の姿はなかった。大抵いつもここにいると思って来たのだけど。
でもいなかったらいなくても別に構わなかった。鍛錬の相手をしてもらうついでに昼食に誘おうかな、などと思っていただけだったから。
「兄貴ならさっき凌統様に連れられて行きましたぜ」
「ふーん。ならいいや、別に大した用じゃないから」
船を整備していた「野郎ども」の一人がそう答えた。
彼らは甘寧の部隊の一部だ。まあ言わずとも知る人ならすぐに分かるだろう。鈴といい鵞鳥の羽根といい、大量生産をした甘寧のような人間が沢山いるのだから。
勿論「兄貴」というのは甘寧のこと。
「姐さん、本当に兄貴と仲が良いっすね」
「お二人が並ぶと絵になると思うんすが」
「言いたいことは分かるけど…今更?」
甘寧と古い仲であるということは、同時に彼らとも長く顔を見知るということにもなる。
久々に甘寧抜きで話をしているにしても、私達をよく知る彼らから今頃そんなことを言われるのも納得がいかない。
「姐さんたちもそろそろ良いお年じゃねえですか。心配してるんですよ、俺らは」
「人より自分たちの心配すれば。そんなおっかない見てくれしてたら女なんか早々寄って来ないよ」
「それ以上に俺たち、兄貴に似て不器用なんすよ」
いざ女を前にするとうまく行かねえよなあ、と勝手に盛り上がり始めた。
今まであいつの色恋沙汰について何も聞いて来なかったけど、そこそこ女の子の扱いは慣れてるもんだと勝手に思っていた。
「なに、甘寧のやつ奥手だったりするの?」
「いやあ、俺たちも詳しく知ってる訳じゃないんすが、あんまり上手く行ってないみたいっすよ。しばらく女の話も聞いてねえし」
だから心配してるんですよ、と数人に深く頷かれながら言われた。そんなことを私に言われても。
最近甘寧と私の間柄について彼是言われる。姫様といい、こいつらといい。
どうにも調子が狂う。話題が私から好みの女のことに移ったところで、そろりとその場を離れた。
「これだもんなぁ」
「姐さんもああいうのに不器用そうなのが分かるよな」
「そこがまた良いんじゃねえのか?兄貴からすれば」
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