子供だった
子どもだった
「前に言った三年前まで男がいたって話は知らなかったが、」
「ごめんあれ嘘」
「あ?」
「いたっちゃいたけど、ひと月持たなかったから無効」
言うなれば初めてのお付き合い、というものだったけど、別に恋愛感情があったわけでもなかった。
ただ、周りが「もう良い歳なんだから」と言ってくるからそうしただけだった。
でもどこの馬の骨とも知らぬ男と関係を持つなど、私には無理があった。
「…まあそんなこったろうと思ったぜ。
お前、色恋とか興味薄いだろ」
「うん」
「それを言いてえんだ俺は」
確かに、さっきまでの話と私の記憶を振り返っても色気のない人生だったことが見て取れる。でもそれが楽しかった。甘寧とつるんでいるのが。
「女として扱うなっていうのがお前の今までの言動に表れてるじゃねえかよ」
「ああそういうこと」
合点がいった、と頷く。確かにそうだった。男勝り、とでも言おうか。
私は理解したのに、奴はまだ物足りなさそうというか、何か言いたげだった。
え、まだ何かあるの、と聞けば溜め息混じりに少しだけそわそわし始める。
「やっぱ分からねえか」
「いや今ので大体分かったけど?」
「いいや分かってねえよ」
そこでぐいと酒を煽った。いやほんと、今昼間だよな。
「俺はお前がいつも隣にいることが嬉しかった」
「私も楽しかったよ」
「俺は女扱いしてねえ振りをしてただけだ」
「…うん」
甘寧の言いたいことはそこで何となく分かった。少しずつ居心地が悪くなる。
何かが崩れた気がした。いや、大事なことから目をそらしていただけかもしれない。
とっくの昔に崩れていたことに、本当は気付いていたのでは?
「俺はいちこを…」
「いい、言わなくて」
全部聞いても仕方ないと思った。奴には悪いけど、今はこれ以上聞けない。
先行ってる、と言って席を立った。甘寧の酒代まで全部払っておいた。
鍛冶屋の前まで来て、お金が足りてなかったので一度城に戻ってから来ます、と言うと、いつも贔屓にして戴いているので、と半額にして貰えた。武器を受け取って城に帰る。
酷い事をしていたのは私の方なのに、理不尽に殴られたような気分だった。
「なあおい、あれ姐さん一人じゃねえか。さっき兄貴と一緒に城下に出てたろ」
「本当だ。何かあったのか」
「ただ単に別行動してるだけじゃねえのか」
「馬鹿野郎、よく見ろ。覇気が無えぞ」
「確かに。いつもならもっと颯爽としてるもんな」
「何かあったのか…」
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