花子


1キヨ





おれはいたって普通の男子高生だった。運動は得意、勉強はあんまりだけど、覚えればいける。昼を一緒に食べる友達も普通にいれば、先生からの信頼もそれなり。女子とも男子とも普通に喋る。好き嫌いはある。あとちょっと女子にもてる。それを引いても普通の男子高生、だった、はずだ。

「え?」
「は?」

隣のクラスの#name2#と中身が入れ替わってしまった、らしい。


トライアングルジンジャー



チャイムの鳴るギリギリに席につく。ちょっとだけ息切れして額に汗がにじむ。チャイムが鳴ったあとにばたばたとこーすけが教室に入ってきて笑う。おれより息切れして汗をかいたこーすけが隣に座っておれの名前を怒ったように呼んだ。おれはあっけらかんとしてはよー!と背中を叩いた。こーすけは隣に住む幼馴染みだ。あとヒラとフジってやつもいるけど割愛する。四人とも小学校からの付き合いでノリと勢いで高校まで一緒になってしまった。寝坊するおれをいつも待ってくれるのはこーすけだけだし、そんなこーすけを走って置いていくのは多分おれくらいだし。

「へっへっ、おつかれ」
「キヨほんとおまえふざけんな」
「ごめんご」
「もう明日から待たねえからな」
「えっ、うそ、ごめんて」
「昨日もそう言ってただろ」
「ちゃんと起きるから!!」

こーすけは怒った顔をして信用ならないと言った。そんでもって先生にうるさいって怒られた。こーすけにざまあみろと笑われたので肩パンしといた。そのあとの授業は睡眠学習。先生に起こされたり、こーすけに起こされたりしたけど、おれは睡眠を貫き通した。朝走ったからねみーんだよ。そのくせこーすけはちゃんと授業受けてるから、テストの点いいし。さっきも名前が出たけど、幼馴染みのフジが休み時間のたびにヒラを連れて遊びに来てるというかなんというか。フジが来るたびにクラスの女子がフジくん…!とかわくからおれの睡眠は邪魔されまくり。それは放課後まで続いた。先生がさよーならというと、教室は騒がしくなっていく。やっと終わった。帰ったら寝よう。こーすけ、と声をかけようとしたら、先生がおれを呼んだ。にたにたと笑って教卓に積まれたノートを叩いていた。

「こーすけ手伝って」
「頑張れよ」
「こーすけえ!」

また明日なと手を振って帰っていくこーすけの背中が憎らしい。他の友達に助けを求めれば、部活やら委員会やら家の用事やらで全てきっぱり断られてしまった。おれ嫌われてるのか…。わるいな!と謝る友達の背中を見つめながらおれはスクバを背負って、ノートを抱えた。 結構ずっしりしてて重い。おれはぶつぶつと悪態つきながら職員室を目指す。職員室についたおれを待っていたのは楽しそうに笑う先生だった。寝てたおれが悪いのかこーすけを置いてったのが祟ったのか。もうどっちでもいい。早く帰りたい。おれは足早に来た道を戻っている途中、ノートを抱えて階段をゆらゆらと一段一段降りる女生徒がいた。おれと同じように任されたのかなあとか考えながら通り過ぎようとした瞬間だった。女がぐらりと崩れた。

「あぶねえ!」
「えっ、わ」

次の瞬間におれの足が階段をのぼることはなく、ノートがバサバサと床に落ちる音と、体に残る激痛があった。頭がぐわんぐわんする。女を庇おうとして一緒に階段から落ちたのはすぐにわかった。女は無事なのだろうか。ただ頭が痛くて起きる気がしない。

「大丈夫ですか?!」
「いっ、てえ」
「え」
「は?」

自分の声がおかしいことに気付いて呆然とする。目の前でむくりと体を起こした姿を見て頭が真っ白になった。

20150314

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