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理解できてないのは向こうも同じみたいだった。わたしの顔で口をあんぐり開けてアホ面さらしてる。ちょっと恥ずかしい。いや、そんなことはどうでもいい。なにがどうなっているんだ。わたしは階段から落ちて、多分この人が助けてくれて、それで、それで。
「おい」
「はい」
「おれたち、入れ替わったのか?」
わたしの顔でわたしの声で、わたしが言うのを避けていたことを確信ついたように彼は言った。もうわけが分からない。自分の身に何が起こってるのか理解できない。気付いたらわたしの目からは涙がぽろぽろとこぼれていた。
「うわあ!泣くな!おれの顔で泣くな!気持ち悪い!!」
彼の言うことがどんどん真実めいてきて、余計に涙が止まらない。これからどうしたらいいのか分からない。そもそも体が入れ替わるってなに?全然わかんない。ドラマとか漫画とかなら見たことあるけどあんなの全部フィクションで、現実になんて普通あり得ない。しかも決まってああいうのは元に戻るって。でも、そんなのわかんない、わかんない、わたしは一生、未来永劫この人の体で生きていかなきゃいけないの?わたしまだ、ヒラくんに何も伝えてないのに。
「おまえもしかしてさあ、」
「…?」
「いや、なんでもねーや。とりあえず落ち着けよ」
ほら、と彼はわたしの制服のポケットからハンカチを取り出した。わたしが朝決めたハンカチ。少しだけまた辛くなって泣きそうになる。わたしはそれを素直に受け取って涙をごしごしぬぐった。彼の言う通りだ、今は落ち着いて現状を理解しなければ、それで、解決策を。
「とりあえず怪我はねーか?」
「えっ、」
「えっ、てなんだよ」
「いや、ちょっとびっくりして」
まさか身の安全から気にしてくれるとは微塵も思っていなかった。そんなわたしの態度に彼は不服そうに顔をしかめる。そんな彼にも怪我はないようで一安心する。巻き込んでしまった以上、わたしも少なからず責任を感じていたのは事実だ。
「あ、わたし、」
「#name2#だろ、おれ清川」
「え、あ、うん、清川くん」
清川くんはわたしの言葉を遮って言った。もちろんわたしと清川くんはファーストコンタクトだ。それなのになんでわたしの名前を知っているんだろう。そんなわたしの考えを無視に清川くんはわたしの落としたノートを拾い始めていた。
「先生に頼まれてたんだろ、これ」
「あ、うん」
「とりあえず渡しに行こうぜ」
清川くんはわたしの体で簡単にノートを抱えあげると、先を進んだ。こんな状況なのにすごく冷静で落ち着いている清川くんがすごく羨ましくて、すこし妬ましい。
「……本当にごめんなさい。清川くんにも、怪我なくてよかった」
「うん、…おれも、ごめん」
清川くんは一瞬悲しそうな顔をして笑った。凄く無理して笑ってた。
20150319~1208~20180719加筆修正
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