2キヨ
理解できてないのは向こうも同じみたいだった。おれの顔で口をぽかーん開けてアホ面さらしてる。ちょっと恥ずい。いや、そんなことはどうでもいい。なにがどうなっているんだ。おれはこいつを支えようとして、結局一緒に階段から落ちて、それで、それで。
「おい」
「はい」
「おれたち、入れ替わったのか?」
こいつの顔でこいつの声で、おれ自身が一番言いたくなかったことをおれは言った。出来ることなら言いたくなかった。言うことで自分の身に何が起こってるか理解して認めてしまうことになってしまうから。そしたらあいつの目からは涙がぽろぽろとこぼれていた。
「うわあ!泣くな!おれの顔で泣くな!気持ち悪い!!」
おれの言うことがどんどん真実めいてきていて、余計に泣き始めた。これからどうすればいいのか分かんねえ。そもそも体が入れ替わるってなんなんだよ。全然わかんねえ。こういうのはドラマとか漫画とかでよくある展開で、最後はいい話で元にもどってちゃんちゃんで終わるけど。現実になんて普通あり得ないし、元に戻るかなんて、わかんねえ。おれは一生、未来永劫こいつの体で生きていかなきゃいけねえのか?そういやこいつ、ヒラの。
「おまえもしかしてさあ、」
「…?」
「いや、なんでもねーや。とりあえず落ち着けよ」
ほら、とおれはこいつの制服のポケットからハンカチを取り出した。花柄ピンクの女子らしいハンカチ。こいつはすこしだけそれを見て眉間にシワを寄せた。そのあとすぐにそれを受け取って顔をごしごしぬぐった。おれ自身が、今は落ち着いて現状を理解しなければ、それで、解決策を。
「とりあえず怪我はねーか?」
「えっ、」
「えっ、てなんだよ」
「いや、ちょっとびっくりして」
まさか身の安全を気にするとは微塵も思っていなかったのだろうか。こいつの態度におれは顔をしかめる。ちょっとってーかかなりショック。でもまあ怪我はないようで一安心。巻き込んでしまった以上、おれも少なからず責任を感じていたのは事実だ。
「あ、わたし、」
「#name2#だろ、おれ清川」
「え、あ、うん、清川くん」
おれは#name2#の言葉を遮って言った。もちろんおれと#name2#はファーストコンタクトだ。どうして?って顔をした#名字#の考えを無視しておれは#名字#が落としたノートを拾い始めていた。
「先生に頼まれてたんだろ、これ」
「あ、うん」
「とりあえず渡しに行こうぜ」
おれはこいつの体で簡単にノートを抱えあげると、先を進む。ちょっとだけ体に力が入らない。ほんとは全然理解なんかしてなかった。股下がスースーして違和感しかないし、肩まで伸びた髪の毛はうざったいし、さっきは軽く感じたこのノートがめちゃくちゃ重いし。それでもおれは男だしプライドもいっちょ前にある。
「……本当にごめんなさい。清川くんにも、怪我なくてよかった」
「うん、…おれも、ごめん」
#name2#は一瞬悲しそうな顔をして笑った。一生懸命笑ってた。
20150319~1208~20180719加筆修正
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