3キヨ
朝起きたらまずあくび。んで鏡見ながら寝癖直して歯磨いて、気分で焼いたり焼かなかったりする食パンにジャムどーしよっかなーってアホみたいに悩んでから適当に朝のニュースを見る。したらこーすけがうるっさいチャイムを鳴らしに来るからそれをBGMに着替え始め、行きたくねえなあとか思いつつ、履き潰したスニーカーをとんとんって爪先を叩いて履いて家の鍵をかける。朝から怒ったこーすけにどつかれながら、笑って、 途中でやべーぞ!ってこーすけを置いて学校へ行く、起きたらそんないつもみたいな朝が来るんだって、あるわけないのに、俺は頭のどっかでそんなことを望んでいるのだ。
トライアングルジンジャー
「清川くん、起きて」
「ん…あと、五分…」
「#name2#」
俺の声が、俺の今の体の名前を呼んで、はっとする。ばっと起き上がると#name2#がおはようと俺に声をかけた。少しボーッとした頭で返事を返すと朝が来たことを確認する。少し早めに起きたのであろう#name2#にセットされた俺の髪型とか制服とかやっぱりちょっと、いつもの適当の俺と違って違和感。まあでも誰がどうやっても俺はイケメン。そういうことだ。そんなことを考えていたら#name2#の手が頬に伸びてきてそのまま頬をつまんだ。いてーよ!と怒鳴る俺に#name2#は謝りながらピューッとリビングに逃げた。なにやってんだあいつ。朝起きて誰かが居るとか違和感しかない。#name2#は昨日俺んちに泊まった。恐らく一週間は#name2#が家にいる生活が続くのだと思う。
昨日、体の違和感と共にやっとの思いで先生へノートを届け終わった後、「とりあえず俺んち泊まれ」って#name2#に言った。#name2#は驚いた顔して断ってきたけど、そんなやましーこと考えてるわけじゃないから!これからのこととかこれからのこととかこれからのこととかさ!ほんとまじ心外!俺んち一人暮らしだし、俺たちにとって最適な空間だと思うんだけど。まあ問題だったのは#name2#の家だったんだけど。
「わたしの部屋は上がって右、クローゼットの中に引き出しがあるから、下着は一番上。お父さんはまだ仕事でいないから、お母さんに友達と勉強でお泊まり会してくるって言い逃げてきて」
「おいおいそんなんでいいのかよ」
「うん、後からメールするから。あ!充電器忘れないでね!」
「パンツとかさあ…」
「清川くんって意外とそういうとこ気にするんだ」
「……」
なんでこいつこんなさらっとしてんの?#name2#はなんも気にしてないように自分の部屋の下着とか必要なものを俺に取ってくるように言った。気にしてるの俺だけ?よろしく!と笑った俺の顔に軽い殺意を芽生えさせながら俺はちょっと一瞬、#name2#になる。よその家なのに、自分の家みたいに振る舞うのはすげえ違和感。ただいま、って#name2#どんな感じに言ってたのか分かんない。でも台所から#name2#の母親がおかえりって、声を返してくれて、俺はすげえ罪悪感に苛まれた。ああ、#name2#って母親似なんだなとか、そんなこと考えてる暇も、#name2#の下着を見るような下心も、そんな余裕なんか一ミリもなくて、#name2#に言われた外泊の件を適当に母親に伝えて、俺はこの酷く居心地の悪い空間を飛び出した。そしたら外であいつは泣いてるし。俺も泣きてえよばーか。
ぼろぼろと#name2#の目を無理矢理、#name2#の制服の袖で拭った。その後空いてる方の手で#name2#の手を引いた。きっと、周りから見たらすげー異様な光景。泣いてる男とそれを引く女。俺がすげえ情けない男みてえじゃんな。まあほんとは俺だってわんわん声あげて泣きたい。泣きたい。泣きたい。鼻水が垂れて、目の前が霞んだ。さようなら俺の、清川清志としての人生。
20151206~1208加筆修正
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