4キヨ
やっべえこーすけ!と俺は歯磨きをしたまま洗面所から顔を出した。俺の口から泡立った歯みがき粉がぽたりと垂れていくけど、そんなの気にしてる場合ではない。俺はそのまま必死にこーすけのことを#name2#に話した。けれど#name2#は汚ないと俺を制し、俺を歯磨きに集中させた。その後に話したこーすけの話はこうだ。
こーすけ、本名山田こうすけ。隣に住む幼馴染み。毎日迎えに来る、んで一緒に登校してる。そんで毎回遅刻しそうになると走ってこーすけを置いていってる。ひでえな俺。
「それじゃあわたし山田くんと一緒に行く。清川くんはそろそろ出て」
「は!?おまえなんでそんな簡単に言ってんだよ!いろいろあるだろ!いろいろ!」
「なに今さら言ってるの清川くん、わたしたちもうこれからこの体で生きていくって昨日話したでしょ」
「〜〜っ!わかったよ!」
俺は全然納得していなかった。ムッスーとした顔のまま、急いで朝食を食べて#name2#のスクバを持った。こうすると本当に#name2#そのものだ。だけど#name2#ではない。#name2#は俺の目の前にいる。このまま腰をおろして学校なんか行かないで家にいたい。そうしたら、少しは楽なんじゃねえのかって、思って。それに俺ばっか余裕がないみたいですげえ腹が立つ。こーすけのことだってすんなり受け入れてさ。
俺だってずっと自分のこと#name2#だって言い聞かせてるけど、全然無理。すぐ俺の部分が出て来てぼろが出ると思う。俺は不安しかない。こんな早くに登校したこととか入学式以来だし、履き慣れないスカートに股下はスースーするし。まあ唯一の救いと言えば#name2#がそんなにスカートを短くしないタイプのJKだったという点だけど。それ以前に俺は#name2#のこと、何も知らねえ。
「清川くん、おにぎり。お昼に食べて。あと、教室に着いたら本読んで、そしたらヒラくんと少し喋ってくれたら後は平気だから」
「うん」
「わたし、特になにもないから」
「うん」
「ごめんね」
「俺も、特になにもねーから」
おにぎりありがとう、行ってきますと俺は#name2#に告げて家を出た。自分の家を、自分じゃない姿で出る俺の複雑な心境。ああ、もう、わけわかんねえ。はやくはやく#name2#になれって、焦ってる。なんつーの、見た目は#name2#、中身は清川、みたいな、夕方のアニメみたいなそんな。言うのは簡単だけど、理解するのとか、全然違げーし。
気にしたことないこの通学路の、電信柱に貼られた病院の広告が俺の足を早らせる。病院の行けば治るとか、ありえない。行ったら頭とか開かれて研究されて、世紀の大発見みたいな。そんないい話あるわけない。もういっそ公言するか?俺は#name2#じゃないって、そしたら俺は俺で生きていけんのか?でも、もういいんだ、決まったことだ。昨日全部話した。泣いて帰った昨日、#名字#と。
めくった小説のページと、頭に入らない文章の隙間に、低いトーンのおはようが響いた。
20160227
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