05


戦、戦、戦。佐武鉄砲隊はここ数週間、異様なほどに忙しい日が続いていた。私は、未熟が故に忙しくはなかったが、腕利きの照星さんはかなり忙しかった。
ようやく仕事が落ち着き、一安心していたら、照星さんが縁側に座っていた。


「照星さん」

「なまえ…」

「眠そうですねぇ」

「あぁ…」


ここ最近ずっと戦で忙しかったせいで、あまり眠れていなかったのであろう照星さんは、憔悴しきっている様子だった。私はこんなに元気なのに。照星さんに戦には行くなと言われて、私は一人で村に残っていたのだ。すごーく暇だった。


「照星さん」

「…何だ」

「私が、照星さんに元気を分けてあげる」

「は…?」

「はい!膝枕ー!」

「………」


照星さんの横に座って、ポンポンと膝をわざとらしく叩いた。私の予定では、

照星さんは私を呆れたように見る

私がそれを怒る

照星さんが怒った私を見て笑う

てな具合の、いつものやり取りをしようと思っていたのだ。しかし、そうならなかった。照星さんが私の膝に寝転んだのだ。


「し、照星さん!?」

「今度は何だ」

「えっと。えっと…」

「煩い。眠るから、黙れ」

「う…はい」


言われ方こそは厳しいものの、これはもしかして。いい雰囲気なんじゃないの?心臓がバクバクいってる。だって照星さんが私の膝の上で目を閉じているのよ?わぁ、まつ毛やっぱり長いなぁ…。鼻も高いし。うわー、やっぱり綺麗な顔だ。


「…おい」

「はい?」

「何のつもりだ」

「何が?」

「頭巾」

「寝るのに邪魔かと」

「何故、髪を触る?」

「綺麗だったから」

「どんな言い訳だ」

「照星さんが嫌ならやめますけど…駄目ですか?」

「…好きにしろ」

「わーい。やったぁ」


首もとが苦しそうだったから、外した頭巾を綺麗に畳んで、そっと脇に置いた。
サラサラと綺麗な髪を指で撫でる。照星さんは余程疲れていたのだろう。大人しく、私にされるがままになってくれた。


「私、強くなりたい」

「どうした?」

「私も皆と一緒に戦に行きたい。戦いたいんです」

「………」

「今回みたいに私だけ置いてきぼりなんて嫌ですし」

「駄目だ」

「へ?」

「戦は危険だ。なまえを連れて行くわけにいかない」

「むぅ…私だって、そこそこには…」

「…鈍い」

「はえ?」

「失いたくないから、連れて行けないと言っている」

「………え」


ドキリとすることを言われて、私の心臓は限界まで高鳴っていた。痛いぐらい。
もしかして照星さんは私のことを心配してくれた?それは、私を失いたくないから…てことは、もしかしてもしかして。


「照星さん…」

「………」

「わ、私のことを…」

「……ぐー」

「…て、寝てるし!」


照星さんは私の膝の上で寝息をたてていた。ということは、寝ぼけただけなの?やっぱり、世の中そんなうまいことがあるわけないですよね。えぇ、本当にね。
少し残念な気持ちで、照星さんの髪を再び指先で撫でた。照星さんを好きになって早いもので、もうすぐ2年も経つんだ。
初めて会った時より少しだけかもしれないけど、進展しているのかもしれない。とはいえ、こうして私の膝に寝てくれるだけでも信じられないぐらいのことだ。
照星さんの寝顔を私はじっと見つめながら、耳元でこっそりと好き、と呟いた。少しだけ、寝ているはずの照星さんの顔が赤く見えたのは、気のせいだろうか。


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