06
今年に入って6度目の親からの手紙に内心、うんざりしながら私は目を通した。どうせ書かれていることは同じ。お見合いをしろ、帰ってこい、とかそんなの。
ところが、どんな手紙にも応えなかった私に遂に親が強行手段を取ったようだ。
「うわぁー…」
「どうした?」
「あ、照星さん」
縁側で手紙を読んで青ざめていたところに、照星さんがペタペタと歩いてきた。やっぱり今日も素敵ですね照星さん、と言ったけど、いつも通り無視された。
「で?どうした?」
「あー。親から…」
「またいつものように帰ってこい、と言われたか?」
「いえ、お見合いの話が」
「何を悩むんだ。いつものように断ればいいだろう」
「それが、もう返事をしちゃったみたいなんですよ。はぁー、嫌だなぁ…」
「…見合いをするのか?」
「まぁ、仕方ないんで…」
「………」
受けてしまったものは仕方がない。相手に失礼だし、行くだけ行かなきゃだな。照星さんが「行くなよ!」とか言ってくれたら、喜んで行かないんだけどなぁ…なんて、期待をしても無意味だと重々承知だったから、あえて聞かなかった。どうせ、傷がえぐれて胸が痛むだけだし。
そんなわけで、お休みをいただいて私は実家へと帰った。帰るなり両親に綺麗な身なりに無理矢理されて、泣きそうだ。趣味だのお稽古ごとだのといった興味もない話をヘチマみたいな顔をした男の人とダラダラ話し、後は若い人でとかお決まりのことを言われて部屋に残された。
「外に行きましょうか」
「はぁ。そうですね」
「今日はいい天気ですね」
「はぁ。そうですね」
「鳥が気持ち良さそうに空を飛んでいますよ」
「はぁ。そうで…」
何を言われても気のない返事しかしてなかった私も、さすがに言葉に詰まる。見上げていた空から鳥が急に落下したのだ。恐らくは見知らぬ誰かが猟をしているんだろうけど、照星さんかな、と思った。
やっぱり私は照星さんのことが好きで、どこにいても彼のことを考えてしまう。
「あの、実は私には好きな人がいまして…」
「えぇ。構いませんよ」
「…え」
「少しずつ私のことを好きになっていただければ、私は別に構いませんので」
「や、えっと…」
「挙式はいつにします?」
「えっ。えー…」
「子供はたくさん欲しいなぁ。10人とか欲しいです」
「えーっと…」
「なまえさん、これから宿に行って作りませんか?」
「やだ…離して!」
何なの、このヘチマ男は!人の話を全く聞いていない上に、腕とか掴んできて!照星さんなら、こんなことしないのに。もっと紳士的で優しくてかっこよくて。あー、もうっ。この人、殺しちゃっていいかな。苦無で殺っちゃっていいかな。
私が殺すか殺さないか迷っていたら、ヘチマ男の頭にゴリッと銃が当てられた。火縄のにおいは私にとってはもう照星さんのにおい。だから、期待なんかしないと思って振り替えると、本物だった。
「おい、貴様。おなごに無理強いとは感心しないな」
「ひっ…」
「引き金を引かれてこの場で死にたくなければ去れ」
「う、うわぁぁぁ!」
情けない声をあげて、ヘチマ男は逃げていった。あーあ、情けない男だなぁ…。しかし、助かった。危うく自分の両手をヘチマ色の血に染めるところだった。
「照星さん、ありがとう」
「…別に、ああいう輩が気にくわないだけだ」
「うん。でも嬉しい」
「………」
「あ、そういえば、照星さんはこんな所で何を?」
「…猟だ」
「猟?あ、もしかして、さっきの鳥って…」
「いいから、帰るぞ」
「え。あ、待って!」
こんなところに、わざわざ猟をしに来るだなんて…でも、助かったからいいか。
やっぱり私は照星さんのことしか好きにはなれませんと照星さんに言うと、いつものように無視されるかと思っていたのに、低く何かをボソリと呟かれた。よく聞こえなかったから、聞き直したんだけど、結局教えてはもらえなかった。
まぁ、いいや。とりあえず私はもう少しの間は照星さんと一緒にいられそうだ。
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