07


夏休みになって、虎若が帰ってきた。田村と一緒に。田村も6年か。感慨深い。虎若と田村は相も変わらず照星さんにベッタリとくっついている。羨ましい。照星さんは虎若や田村には優しい。私には冷たいくせに。何よ、この敗北感は。


「照星さーん、もっと私にも構って下さいよー」

「馬鹿なことを言ってないで、さっさと仕事しろ」

「そうですよ。なまえ先輩には竹谷先輩という彼氏がいるじゃありませんか」

「は?竹谷ぁ?」

「なまえ先輩は竹谷先輩と付き合ってるんですよね?」

「な!ち、違うわよ!私は竹谷とは別に何とも…」

「でも、竹谷先輩と町で会っているんですよね?」

「たまにだけど…」

「ほお…」

「ち、違いますからね?私は照星さんのことだけが好きですからね?ね?」

「さて。では二人とも火縄銃の的当てを見てやろう」

「わーい」

「お任せ下さい。火器を使わせたら忍術学園一のこの田村、照星さんの為に…」

「照星さん、私も…」

「竹谷くんの所に行け」

「えぇ…照星さーん!」


田村のせいで、照星さんに誤解された上に冷たくされた。あぁぁぁ、田村ぁー!
確かに、竹谷とは会っているけどそんなんじゃないのに。会っても、虫と動物の話しかしないのに。浪漫の欠片もない!
こそっと照星さんたちの後を追ったけどギロリと照星さんに睨まれてしまった。仕方なく仕事をこなして、夕飯を食べ、田村は帰っていき、虎若も寝たようだ。私はというと、屋根瓦の上からぼんやりと一人で星を眺めていた。星が好きだ。照星さんの名前に入っているから、なんて不純もいいところな理由なんだけど。


「なまえ」

「し、照星さん…」

「寒くないのか?」

「まぁ…」

「そうか」


カタリと照星さんが私の隣に座った。どうしよう、昼間のことを釈明した方がいいんだろうか。でも、照星さんにどんなに言い訳をしてみても虚しいだけかも。
結局は照星さんは私のことに興味なんかないんだ。ちょっといい雰囲気になって喜んでみても、先に繋がったりしない。悲しい。照星さんを想い続けて私はきっと一人で死んでいくんだ。寂しいなぁ。


「竹谷くん」

「はえ?」

「竹谷くんとは、どういう仲なんだ?」

「生物委員の先輩と後輩ってだけです」

「なのに、頻繁に会っているとはな…」

「ち、違いますからね?私と竹谷は本当に何もないですからね?」

「私には関係無い」

「そうです、けど…」


けど、少しは気にして欲しい。どうすれば照星さんの視界に入れるんだろうか。私は照星さんが好きで好きで堪らなくてこうしてここにいるというのに。想いが届くことはないというのが辛すぎる。


「照星さん」

「何だ」

「私のこと、別に好きにならなくていいです。でも、少しは気にかけて下さい」

「………」

「少しだけ、少しだけでいいですから」


少しだけでもいい。付き合ったり、結婚したりしなくてもいいから。だから私を少しだけ特別な存在として見て欲しい。そうでなければ、私がここに就職させてまらってまで照星さんの隣にいる意味がないじゃない。せめて、記憶に残して。私が心の中を涙ながらに吐露したら、頭をポンっと照星さんに優しく叩かれた。


「なまえは変わった奴だ」

「…ですかね?」

「お前のような奴は今までいなかった」

「それ、誉めてます…?」

「ある意味では、そうかもしれないな」


恐らく動物を愛でるような気持ちでだろうけど、照星さんは頭を撫でてくれた。少しは、私は照星さんに特別扱いをしてもらっているということなんだろうか。
いずれにしても、照星さんに優しくしてもらった私は次の日は、ご機嫌だった。ただ、嬉しさのあまりについ浮かれすぎて、火薬壷を一つ割っちゃって照星さんに物凄く怒られてしまったんだけどね。それでも、あの日の夜のやり取りは、私の人生で一番の幸せな出来事となった。


[*前] | [次#]
小説一覧 | 3103へもどる
ALICE+