08
最近、世の中荒れている。今に始まったことじゃないんだけど、戦が多い。おかげで、佐武も忙しい。ゆっくりと照星さんとお茶を飲む時間もないぐらい。私も戦に行きたい。戦というか、照星さんに会いに行きたい。照星さん不足だ。
と、いうわけで私は火縄銃を持って佐武村の鉄砲隊を追いかけることにした。
「照星さーん」
「…なまえ?」
「照星さーん。寂しくて会いに来ちゃいました」
「なまえ、伏せろ!」
「え?」
ダーンという銃声が聞こえるのと同時に照星さんに頭を地面に押し付けられた。
あぁ、そういえば、ここは戦場なんだった。
「無事か?」
「ありが…ぎゃー!」
「騒ぐな!」
「だって、だって…」
「弾は抜けている」
照星さんの左肩からポタポタと血が流れ落ちていた。咄嗟に私を庇ったせいだ。私の…私のせいだ、私のせいだ、私のせいだ!
慌てて照星さんの傷の手当てをしようと思って着ていた着物を裂こうとすると、照星さんにそれを制止されてしまった。
「止血しなきゃ!」
「だからといって着ている着物を裂く奴があるか。お前は女なんだぞ!?」
「そんなの、関係ない!」
「あ、こら…っ」
私は気にせず苦無で自分の着物を裂き、ぐるぐると照星さんの傷口に巻いた。私の安物の着物なんかより照星さんの身体の方が比べられないほどに大事だ。
「帰りましょう!」
「馬鹿を言うな」
「手当てが先です」
「なまえ、とりあえずお前は帰れ。ここは危険だ」
「嫌!私も戦います!」
「前に言っただろう。なまえを失いたくない、と。もしもお前を失ったら私は…」
「照星。お前も人の子だったのか。戦場で女と戯れるとは、余裕じゃないか」
低い声にぎくりとして振り向くと、どこかの城の忍がいた。あぁ、こいつが照星さんを撃ったんだ。この男が照星さんを撃った…っ!頭に血の上った私は男に向けて火縄銃を構えた。この男は、絶対に殺してやる!
「なまえ、やめろ!」
「へぇ?殊勝だな」
「止めないで下さい!」
「君、死んじゃうよ?」
「死ぬのはあんたよ」
「まだ気付かないのか?あの木の上から照星を狙っている、仲間の存在に」
「!?」
慌てて振り替えると、仲間が確かにいるようだ。木の上に誰かの気配があった。まずい、囲まれている。このままでは、照星さんも私もやられて死んでしまう。それだけは避けなきゃ。照星さんだけは助けなきゃ。
「がっ…」
「まず、あんたが死ね」
苦無を喉に突き刺し、まず手前にいる男を殺した。驚いたように照星さんは倒れる男を見たけど、そんなことは気にしていられない。照星さんが火縄銃を撃たないということは、恐らくは弾切れということだろう。だから私が殺らなきゃ。私が照星さんを護らなきゃ。私が照星さんを助ける。
キラリと木の上が光った。まずい、こっちに向かって火縄銃が撃たれてしまう。
「照星さん!」
「…っ」
咄嗟に私は照星さんに抱きつき、照星さんを庇った。銃声の後、照星さんから離れて彼の無事を確認すると何故か青い顔をしている。その青い顔で呆然としている照星さんの顔に、赤い液体がポタリと垂れ落ちた。
「なまえ…」
「よかった、ぶじ、で…」
「なまえ!」
「へへ…あれぇ…?」
ぐらりと視界が暗くなって平衡感覚がなくなる。お腹がズキズキと酷く痛んだ。
「なまえ!」
あぁ、撃たれちゃった、かぁ…。でも照星さんが無事でよかった。よかった…。
足がもたれて私は大地に倒れた。心配そうに照星さんが私を大声で呼んでいる。こんな時に思うことじゃないけど、やっぱり照星さんはかっこいい。大好きだ。
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