12


「照星さーん!こっち」

「大声をあげるな…」


毎日二桁のメールを送ってくる高校生と食事に行くことになった。周りから援助交際に見られないだろうかと若干、不安だが。
痴漢から高校生を助けた。ただそれだけなのに何故か妙になつかれてしまった。


「照星さん、照星さん」

「分かったから行くぞ」

「えへ。えへへ…」


何がおかしいんだか、ヘラヘラと笑っている高校生が今日は随分と寒い日だというのにコートの一枚も着ていないことに気付いた。私のマフラーを首にまいてやった。すると、にっこりと笑ってお礼を言われた。


「照星さん、優しい」

「寒いだろう」

「はい、寒いです」

「なのに何故、そんな格好をしているのだ」

「いやー。浮かれすぎて、着るのを忘れてましたぁ」

「浮かれすぎて?」

「それはもう、照星さんにまた会えるのが楽しみで」

「あぁ…」


何というか、妙な子だ。メールでもそう感じたが、会うと余計におかしい。
いや、でも今時の高校生とは、そんなものなのか?


「で、照星さん。これからどこに行きますか?」

「どこに行きたい?」

「んんー…パスタ」

「パスタか。そうだな…駅前の店でもいいか?」

「はい、もちろん!」


にこにこと嬉しそうにマフラーを握り締めながら歩く姿は、小動物のようだ。まるで、年の離れた弟のようだ。若大夫は元気だろうか。最近、会ってないが。


「照星さん」

「何だ」

「好きです」

「…は?」

「好きです。愛してます」

「………」

「あ。付き合ってとか、そういうのじゃなくて。私は照星さんが好きなんです」

「そうか。分かった」


年上に憧れるとか、そういうのだろう。好きも何も、会ったばかりなのだから。
しかし、本当に今時の高校生は何を考えているのか分からん。私ももう年だな。


「照星さん、好きです」

「そうか」

「む…信じてませんね?」

「信じるも何も…」

「大好きなんです。ずっとずっと前から照星さんが」

「ずっと前から?」

「室町時代から」

「………そうか」

「あ、信じてなーい」


酷いなぁと言って、パスタを食べる姿はまるでリスのようだ。その様は可愛いとは思うが、好きだと言われてもどうすれば…。
アホらしい。私は何を考えているんだ。子供に振り回されて…あぁ、落ち着け!


「お前は…」

「むぅ。なまえですぅ」

「…なまえはまだ色んな可能性があるだろう」

「はぁ。可能性ですか」

「だから、いつか私のこともきっと忘れる日が来る」

「…あぁ、その台詞、久しぶりに言われました」


ふぅ、となまえは溜め息を吐いてから笑った。まるで何かを悟ったかのように。
何だ、この子は。身体の血がザワリと騒いだ。私は何を期待しているのだろう。早く次の言葉を聞きたい。


「久々に私も言います」

「な…」

「今回は絶対に惚れさせてやるから、覚悟しろよ」


サッと霧が晴れるような感覚に陥った。何だ、この子は。妙なことばかり言う。
しかし、面白い。この子に興味がわいてしまった。何故だか、妙に気になった。妙な子に好かれたものだ。ふ、と笑みがもれた。これから楽しくなりそうだ。


[*前] | [次#]
小説一覧 | 3103へもどる
ALICE+