13


照星さんとご飯に行けて、にへにへと笑いが止まらなかった先週。それが今週は苦しさに溢れていた。遂に受験なのだ。受験といっても、そう難しい学部ではない。ラクラン大学にしては偏差値も低い方だし。ただ、模試判定がCだというね。これ、落ちるんじゃない?
ハラハラとしていると、メールがきた。見る気にはなれない。どうせメルマガだろうし。はぁー、と溜め息を吐くと電話が鳴った。そんなに緊急の用事なのか?重い気持ちで携帯のディスプレイを見ると、照星さんからだった。途端にテンションが上がる。


「も、もしもしぃっ」

「…元気だな」

「そりゃあもうっ!私は元気だけが取り柄ですから」

「そうか。元気ならいい」

「へ?」

「最近、連絡がないから電話してみただけだ。特に用はない。じゃあな」

「うわーん!待って、まだ切らないでぇ!」


心優しい照星さんからの電話で張り詰めていたものがプツリと切れてしまった。
電話で私がわんわん泣くと照星さんは困惑したような声を出した。当たり前か。


「どうした?」

「じゅ…」

「じゅ?」

「受験勉強が出来ないんですぅ…馬鹿だから」

「は?」


受話器から、何ともいえない声が聞こえた。驚かれてる。切羽詰まってるのに。照星さんは弁護士なんだから、頭がいいだろう。こんな問題も楽々解けるはず。
と、いうわけで。照星さんに頼み込んで勉強を教えてもらえることになった。


「照星さーん!」

「まったく…」

「照星先生と呼ばせて下さい。よろしくどうぞっ!」

「いいから早くやるぞ」

「はぁーい」


にこにこと笑いかけると、照星さんに呆れた顔をされた。わーい、照星さんだ。
適当にカフェに入って、教科書を開いて分からないところだらけの問題を呆れられながら上から順番に教えてもらった。


「やっぱり、照星さんは凄い!賢い!天才ですね!」

「何故だ!何故、二次関数も分からない?」

「えー?えへへ…」

「笑うな。ほら、次」

「ふあーい…」


一生懸命、勉強を教えてもらった。照星さんの顔を見ることも忘れて没頭した。頑張って問題を解いて、分からなかったところが分かってきた。おぉ、すごい!


「うん。何だか、急に受かる気がしてきました」

「そうか。受験はいつだ」

「実は明日です。明日の9時からなんですよ」

「は!?」

「いやぁー。これはもう受かる気しかしませんよね」

「アホか!今日の明日だぞ?間に合うと思うのか」

「ええ」

「徹夜をする気か」

「はい。もちろん」

「はぁー…仕方ない。私も付き合ってやる」

「本当ですか?やったぁ」


へらりと笑うと、照星さんが本当に呆れた顔をした。でも、いいの。ふふふ。
きっと、照星さんは私のことを馬鹿だと思っているだろう。でも、私の受験勉強に付き合ってくれるんだ。
冷めた紅茶を飲んで、再び照星さんの低い声で勉強を教えてもらった。照星さんはここは出るとか当たりをつけてくれて集中的にそこを徹底して教えてもらう。受験まであと9時間。大丈夫、絶対に受かる。だって、私には照星さんがついているんだもん。どんな神様よりも、心強いよ。


「照星さん、大好き!」

「いいから、次」

「はい。えっと…」

「そこは、まず分配法則を使ってだな…」


照星さん、私やります!絶対に受かりますからね!


[*前] | [次#]
小説一覧 | 3103へもどる
ALICE+