16
助けて、とメールが届いて驚いてなまえの家に走った。本当に何事かと思った。
家に行くと、家だというのにマフラーをぐるぐると首に巻いたなまえが出てきた。
「風邪か」
「うみゃぁ…」
「おいっ!」
バタリと倒れたから咄嗟に支えた。熱がかなりある。もう病院に行ったのか?
抱き抱えて、ベッドに連れていく。部屋には薬があったから、病院には行ったようだ。季節の変わり目特有の風邪だな。寝苦しそうだったから、マフラーを外してやる。というか、寝る時にマフラーを巻くな。こいつは本当にアホなんだな。
青白い顔をして寝ている顔を見て、思わず溜め息が出た。いつも煩いだけに体調が悪いのだろうが静かだと調子が狂う。ろくに食事も摂っていないのだろう。ゴミ箱には、薬の殻しか捨ててなかった。
台所に立って、冷蔵庫を開くと驚くほどに何も入っていない。普段から料理をしていないことがありありとうかがえる。仕方がないから、買い物に出掛けた。適当に野菜と米を買ってなまえの家に戻る。雑炊を煮込んで、なまえの様子を見に行くと、少しうなされていた。泣いている。頬を指で撫で、冷たい涙を拭うと、なまえが目を覚ました。起こしてしまったか。
「嫌な夢でも見たか?」
「照星さんに嫌われる夢を見てしまいました…」
「私に?」
「ずずっ…」
「すするな。鼻はかめ」
「うぅー…」
床に無造作に置かれたティッシュを渡して、鼻をかませた。まるで子供だな…。
まだポロポロと泣いているなまえを見て苦笑した。そんなにも悲しいのか?
「泣き止め」
「照星さんに嫌われた…」
「夢だろうが」
「…じゃあ、私のこと好き?」
「…まぁ、嫌いではない」
「照星さーん!」
なまえに抱き付かれて困惑はしたが、肩が震えていたから私はそっと抱き返した。そんな、夢ぐらいで泣くことはないだろうに。ましてや本人がここにいるのに。
頭を撫でて、しばらくすると落ち着いたのかなまえから離れていった。珍しいな。
「本調子ではないだろう」
「ふえ?」
「…まぁ、いい。ところで、飯は食えそうか?」
「んー…」
「雑炊を作った。食え」
「えっ!照星さんが?」
「まぁ、食欲がないのなら無理することはないが…」
「食べる!食べます!」
「そうか」
大声を出して咳き込むなまえを見て、また笑ってしまった。こいつはアホだな。
少しだけ取って、手渡してやった。熱いから気を付けろと言ったのに熱いと騒ぐのだから、本当に呆れて笑ってしまう。
「美味しい…」
「そうか」
「美味しい…です」
「泣くな」
また泣き出すなまえの頭を撫でた。甘やかしすぎだろうか。たまにはいいだろう。ごしごしと涙を拭ってやると、いつもよりは弱々しいものの、ようやく笑った。なまえは笑った顔がよく似合う。いつも何がおかしくてだか分からないが、にこにことしているなまえが一番なまえらしい。
早く元気になれよ。そして、また笑え。
笑った顔を見せられるようになったら、食事にでも連れていってやろう。ろくな食事を普段から摂っていないようだし。食事先でまたアホみたく笑うなまえを想像すると、思わず私も笑ってしまった。
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