20
「ねぇ、誰と住むの?」
「…ただの知り合いだ」
「女?」
「まぁ…」
「ふーん、お前がねぇ…」
「そうゆう仲ではない」
「へぇ?」
「その笑い方、やめろ」
雑渡に家を探してもらった。色々とリスクはあるものの、こいつに頼めば間違いなかろう。あのエリアに住んでいるし。
なまえの大学は雑渡の彼女と同じだった。できるだけ、大学から近い所になまえを住まわせてやりたかった。夜道は危険だ。なまえは自分では全く気付いていないようだが、人目を惹く様な容姿をしている。だから、なまえを一人で満員電車にあまり乗せたくなかった私は過保護だろうか。
「照星」
「何だ」
「初詣に来てた女なんでしょ?どんな奴?」
「…妙な女だ」
「はぁー。物好きだねー」
「放っておけ」
あまりなまえのことを雑渡には言いたくなかった。同じ孤児院で育ってきたから、雑渡のことはよく知っている。今でこそ女遊びをしなくなったようだが、あまりなまえと雑渡を関わらせたくはなかった。
雑渡と別れて、待ち合わせ場所に向かうと少し寒そうに手を擦り合わせていた。今日は春だというのに、随分と寒い。以上気象と天気予報で言っていた。なのに例によって、またなまえは薄着だった。
「悪い。待たせたな」
「うぅ…ざぶい」
「上着はどうした」
「忘れまし…っくしょ」
「まったく…」
震えながらくしゃみをするなまえの首に、マフラーをかけてやる。このやり取り、今年で何度目だ。早く学習して欲しい。
「照星さん、優しい…」
「これから同居するのに、風邪をひかれたら適わんからな」
「うあ。そういう理由ですか…」
「そうむくれるな。飯に行くぞ」
「あ。待ってぇ」
小走りで私の後を追ってきたなまえを見て思わず笑ってしまった。小動物の様だ。
ファミレスに入って、暖かいシチューを食べながら新居の鍵を手渡した。
「もう入居できるそうだ」
「うわぁ…」
「色々とやることは多そうだ」
「ですねぇ。門限とか?」
「子供か。適度に帰ってこい」
「ふへ。ふへへへ」
「…何だ、気持ち悪い」
「照星さんと同棲だぁ」
「同居だ」
「むぅ…」
頬を膨らませて、むくれるなまえがかわいいと思うようになったのはいつからだったか。見ていて飽きない奴だと思っていたが、まさか同居することになるとは。
これからどんな生活になるのだろうか。家に帰るとなまえがいるのか。考えるだけで年甲斐もなく、少しワクワクした。
「何、笑ってるんですか?」
「何でもない」
「えー、教えて下さいよぅ」
「それより、こぼしているぞ」
「え。あぁー!」
「アホ。落ち着いて食え」
「むー…」
「さて、食後にコーヒーでも飲むかな」
「あ、私はクリームソーダ!」
「この寒いのに?」
「アイスクリーム大好きなんです」
「太るぞ」
「むぅ…」
私が笑うとまたむくれるなまえの顔は見飽きない。そう、室町時代からずっと…。
[*前] | [次#]
小説一覧 | 3103へもどる