雑渡さんと一緒! 131


「わぁ、お部屋も可愛い」

「へぇ…」

「あ!ねぇ、昆奈門さん。窓からも街が見えますよ」


綺麗だとはしゃぐなまえは本当に子供のようで愛らしい。こういう素直な反応をいつまで見せてくれることやら。
さて、と風呂を覗くと聞いていた通り天井からは星がよく見えた。ご丁寧に蝋燭まで用意されているのだから、実に雰囲気がいい。佐茂はこういう小洒落た所を相変わらずよく知っている。私では到底こんな所、見つけられなかっただろう。
湯を張ってから部屋に戻ると、なまえはビクッとした。その反応に思わず首を傾げる。今さら私に抱かれることを恐れているとでもいうのだろうか。二年前ならまだしも。
二年前、私は無理矢理なまえを抱こうとした。頭に血が昇りきり、実に愚かで短脈的な行為をしたと反省してもしきれない。そして、よく私と時を共にしようと思えたものだと、なまえの度胸というか懐の深さに感心さえする。こうして結婚してもらえたことは奇跡に近いだろう。ただ、今日も抱くことを拒まれるのだろうか。今すぐにでも抱きたいんだけど。


「…ねぇ、駄目?」

「だ、駄目というわけではありませんが…」

「じゃあ、一緒に風呂にでも入って…っ!?」


そっとワンピースに手を掛けると、見たことのない下着が目に入った。白くて、なまえによく似合っている。ただ、非常にいやらしい下着だった。何これ、えっ、何これ!?
私が動揺していると、なまえは恥ずかしそうに私と距離を取った。頬を染めて震えている。そして、妙なことを言った。


「わ、分かっています。似合わないって…」

「…ほう?」

「だ、だけど、きぃちゃんが…っ」

「あぁ、例の?」

「…例の?」

「いや、私の好みの下着を贈ったと聞いていたから」

「ひぇっ!そ、それ佐茂さんが言ったんですか!?」

「まぁ」

「ぎゃあっ!恥ずかしくてもう佐茂さんに会えません!」

「んー…」


お前の好みの下着だと佐茂は言った。成る程、お前は私をこういう目で見ていたわけね。あぁ、そう。
震えているなまえのワンピースを脱がせてまじまじと下着を見る。ふーん、そう。あいつ、何なの。実に腹立たしい。もう二度となまえを会わせたくなくなる。次に会ったら蹴ってやろう。私の嗜好を分かった気にならないでもらいたい。


「…あのさ、北石に伝えておいてくれる?」

「な、何を…」

「実に好みだから、ありがとう、って」

「えっ、き、きゃあっ」


悔しい。実に好みだ。実に色っぽいし、なまえによく似合っている。お前たち、私のことをよく知っているね、本当。
なまえを押し倒して、キスする。舌を絡めて、角度を何度も変え、酸欠でお互い苦しくなっても辞められない程に私は興奮していた。そっと首筋に唇を這わせ、痕を残してから下着の紐に食いつく。首をぐっと逸らせると紐はあっという間にほどけ、なまえの胸が露わとなった。そのまま舌を這わせると、なまえは色っぽい声をあげた。


「んん…っ」

「…お前は恐ろしい子だよ、本当に」

「は、はい…?」

「これでまだ21か。末恐ろしいね」

「な、何…っ」

「あまりに美し過ぎて私は先が怖いよ。なまえは間違いなくいい女に成長する。今でもこんなにも綺麗なのだから」


胸に幾つか痕を残した後、頂きを舐める。そっと柔らかな胸に触れると、なまえは何とも官能的な声をあげた。血が下半身に集まるのをはっきりと感じる。早く挿れたいと騒ぐモノをなけなしの理性で律し、ネクタイを投げ捨てる。お互いの時計を外し、ワイシャツを脱ぎ捨て、ベルトに手を掛けるとなまえは私を制した。


「お、お風呂が先です」

「それはまた、酷なことを言うね」

「だって…」

「私、もうこんなに興奮してるんだけど?」

「ひっ、ひぇ…っ」


なまえの右腕を掴んで主張の激しい下半身に触れさせるとなまえは悲鳴をあげた。ズボンの上からでも分かるほどにそそり勃っている。もう無理。もう、止まれない。
服を全て脱ぎ捨て、続行する。脇腹に唇を這わせながら肌触りのいい下着の紐をほどく。そのまま指を挿れると、よく濡れた秘部は喜んだ。水音がなまえの愛らしい喘ぎ声と共に部屋に響く。恐ろしい程にいやらしく、思わずぞくりとした。


「あっ、や、やだ…っ」

「気持ちいいくせに」

「やっ、い、イっちゃうっ、あっ、あぁ…っ」


ビクッと身体が跳ねたのを確認してから指を抜く。二本の濡れた指を舐めてから、なまえの脚を開き、まだひくついている所を舐め上げた。なまえの荒い息遣いが私の熱を上げる。
愛撫なんて意味のない行為だと思っていた。女を悦ばせたところで何の意味があるのか、と思っていたが、これは意味のある行為だった。自分の愛した女を自らが悦ばせることが出来るというのは支配欲を満たし、そして、焦らされてから挿れた方がずっと快感を感じる。興奮することで心拍数と体温が上がり、互いの熱を共有することが気持ちいい。こんな幸せなセックスなんて今まで知らなかった。


「…ね、挿れていい?」

「そ、そんなこと聞かないで下さい…っ」

「ねだってよ?欲しいって」

「う、時々昆奈門さんて意地悪ですよね」

「さぁ。どうだろうか。欲しいの?欲しくないの?」

「あっ!あ、や…だっ、指じゃ嫌ぁ…っ」


私をまだ焦らすとは悪い子だ。指で再度激しく攻め立ててやると、あっさりとなまえはイってしまった。
この二年で随分と感じやすい子になったものだ。私が教えた通りにちゃんと反応してくれる。この肌を自分しか知らないと思うと優越感で胸が熱くなる。愛おしくて仕方がない。
なまえの腕を掴んでキスをすると、細い脚を絡めてきた。


「ほ、欲しいです。挿れて…」

「ほぉ?何を?」

「そ、それは言えません!」

「それは残念だ」


もっと虐めてもよかったけど、正直もう挿れたくて仕方がない。早く挿れさせろと煩い程に騒いでいるモノを押し進めると、ぎゅうっとナカが締め付けてきた。全て中に出せと言わんばかりに締め付けられ、今にもイきそうになる。
気持ち良過ぎて眩暈がした。本能のままに腰を振る。色っぽい顔で喘ぐなまえの頬に唇を寄せてから脚を抱えた。


「き、きゃあっ…奥は駄目っ、だ…めぇっ」

「はは…好きだね、本当…っ」

「あっ、あんっ…気持ちい…っ」

「ん…っ、私も気持ち…っあ…」


イきそうになって動きを止める。こんなに早くイくほど弱かった覚えはないんだけどなぁ。なまえを相手にすると気持ち良過ぎてすぐに絶頂に達してしまいそうになる。
汗が身体を伝って落ちた。きっと私は今、さぞ熱に浮かされた顔をしていることだろう。情けない顔を見られたくなくて、抜かずになまえの向きを変え、後ろから激しく突いた。


「きゃあっ!あ、あぁ…っ」

「は、っ気持ちい…っ」

「やっ、あ、イ…くっ、あ、あぁっ」

「う…っ」


ぎゅうっと一際キツく締め付けられ、中で全て出してしまった。あぁ、気持ち良過ぎてまた間に合わなかった。
中で出したことがバレないよう慌てて抜くと、ナカから白濁液が滴り落ちてきた。何とも官能的な見た目をしているが、生憎と自分の精液を舐めるだけの性癖は備わっていない。
そっとなまえの髪を撫で、まだ快感の中にいるのであろう表情のなまえにキスをしていると、ふと風呂に湯を溜めていたことを思い出した。風呂を覗くとばっちりと溜まっている。というより、溢れている。幸いにも排水溝が吸ってくれていたから床にまで溢れ出たりはしていなくてホッとした。


「あぁ、お風呂ですか…?」

「そう。今すぐに入れそう」

「入れそうの域を超えて…わぁっ、凄い。綺麗…」


天井を見上げたなまえは星空を見て笑顔で喜んでくれた。
ただ、すぐにペタリと座り込んだ。それが何を意味しているのか分かってしまった私はなまえから目を逸らして湯船に入った。そして、おいでと手招きをすると、無言でなまえも入ってきた。無言の圧をひしひしと感じて何とも恐ろしい。


「…ま、まぁ。大丈夫でしょ」

「どうするんですか!?望まない子が出来たら!」

「少なくとも望んでいるよ、私は」

「私は卒業するまで産めませんからね!?」

「いいじゃない。休学したって」

「嫌です!これ以上遅れは取りたくありませんから!」

「遅れ?何の?」

「そ、それは…」

「…何か隠しているね?今なら許してあげるから言いなさい」

「私はただ、きぃちゃんと一緒に卒業したいだけですよ?」

「本当だね?信じていいんだね?」

「はい。だから、避妊具を使いましょう」

「嫌だよ、今さら」

「今さらって何ですか!?」

「もう結婚しているのに避妊なんて必要ないでしょ」

「必要ありますけど!?だいたいね、昆奈門さんは…」

「あー、分かった。分かったから今日はもう終わり」


せっかく誕生日なのに喧嘩なんてしたら勿体無い。だから、今日のところはこの話は終わりにしよう。私がそう言うと、なまえは納得はしていないようだったけど溜息を吐いた。
ただでさえ、田舎町なのに、更にこんな山奥だから星が異様に見える。どの星が何なのかはさっぱり分からないけど、夜空とはこんなにも綺麗なものだったのかと驚きを隠せない。思えば、夜にゆっくりと空を見上げることなんて今までしたことがなかった。それだけの余裕なんてなかったから。
では、今は余裕があるのかと問われると、あるとは正直言い難い。仕事は忙しさを増すばかりだ。だけど、どんなに忙しくても、娯楽を失えば生きる意味を見いだせなくなることを私は知っている。なまえと出会う前がそうだったのだから。もう二度とあんなつまらない生活には戻りたくない。
空に向かって微笑んでいるなまえを抱き締める。この想いは永遠だ。決して揺らがない。なのに、嫌な夢をよく見るからだろうか、ここ最近失われるような気がして仕方がない。


「昆奈門さん?」

「愛してるよ、なまえ」

「…はい」

「二回目はちゃんと外にするから」

「はい…はい!?に、二回目!?」

「さて。早く洗ってベッドに戻ろうか」


風呂を出て、ベッドでまた身体を重ね、確かに今が幸せであることを確認するように何度もキスした。
こんな漠然とした不安に駆られるなんて馬鹿げている。私が過去に殺めた奴から報復を受けることとなり、なまえを失うかもしれない、なんて考えることはもう辞めよう。そう思いながら、更なる快感を求めてなまえを激しく打ちつけた。


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