雑渡さんと一緒! 239
多分、開いてはいけない扉を開いた。また新しい性癖を手に入れてしまった。いや、何かでもなまえも悦んでいたし、いいのか…いや、まずいな。エスカレートしないように気を付けないと、いずれアブノーマルなプレイに発展しそうな気がする。このあたりで踏みとどまっておかないと…
セックスなんてやることは一つなんだから、同じ女とヤっていたら飽きるものかと思いきや、今のところ飽きが来ない。なまえと何回くらいヤってるんだろう…と単純計算してみて、ちょっと自分の性欲の強さに引いた。いや、でも好きな子と毎日ヤれる状況が整っているのならこんなもんなのか…?一般的な頻度がよく分からない。ちょっとハイペースなのかなぁ…いや、まぁ一晩にだいたい一回しかしていないし、別にいいのか。なまえも嫌がっていないし。うん、別にいいだろう。
「なーに百面相してんだよ」
「お疲れ」
「おう。昨日はどうも」
「したの?プロポーズ」
「したよ、昨日」
「あ、そー…へぇー…」
「死ぬほど焦ったわ。まさか見られていたとはね」
「結果的にサプライズになったじゃない」
「あの後、別れ話持ち掛けられてさぁ。前もって聞いておけてよかったよ、本当…急死に一生を得た気分になったわ…」
「はは。ウケる」
「ウケねぇよ!」
いや、ウケルよ。よく北石なんかと結婚しようと思うね。私なら絶対に嫌だ。あんな面倒な女、関わりたくもない。
しかし、佐茂と北石が結婚ねぇ…と煙を吐きながら遠くを眺める。何だかんだ感慨深いものがある。私の同期となまえの友人が結婚することになるなんて、紹介した時は夢にも思わなかった。このまま付き合いが続いていくのかな。それこそ、子供が生まれたら家族ぐるみの付き合いとかになっていくのかな。だとすれば少し面白いなと思った。未知の世界だ。
「で?お前は何を考えていたんだよ?」
「んー?いや、なまえと何回ヤったかなぁって」
「お前…昼間から何考えてんだよ」
「別にそんないかがわしいことは考えてないよ。ただ、一般的なセックスの頻度ってどんなもんなのかなと思っただけ」
いや、多いと言われたからといって頻度を減らす気があるわけではないのだから、別に考えたところで何の意味もないんだけどね。かといって少ないと言われても、ちょっとこれ以上は増やせないというか。体力的に厳しいものがある。
「この前、照ともそんな話したわ」
「へぇ?」
「世界平均は年100回なんだとよ」
「あ、そう。うーん…まぁ、よかったのかな」
「よかった?」
「うち、月15回くらい。ダブルスコアだね」
「う…そだろ!?マジで言ってんの!?」
「佐茂は?」
「週1とかだよ!」
「えー。少なくない?何で?あ、北石だからか」
「違ぇよ!俺が一般的だよ!」
煙草を吸っているというのに急に大声を出すから佐茂はムセていた。知っていたけど馬鹿だな、こいつ。
しかし週1が一般的なわけがないだろうに。それでは世界平均にどう頑張っても達することが出来ない。おまけに、自分でもまぁまぁ処理しないといけない。あんな虚しい行為をするくらいなら北石を抱いた方が絶対に有意義なのに。いや、私なら北石を抱くぐらいなら間違いなく自分で抜くけどさ。
「どんな体力してんだよ、お前…」
「普通じゃない?」
「異常だし、それに付き合ってるなまえちゃんも凄ぇよ!」
「いや、人の妻であらぬ想像をしないでよ」
「人聞きの悪いことを言うな。なまえちゃんも可哀想に…」
「可哀想?」
「ほどほどにしておいてやれよ。あんな小さい子なんだし…」
「…なに、ヤり過ぎたら駄目なもんなの?」
「身体、普通にしんどいんじゃね?お前、大きそうだし」
「あぁ、どうも」
「別に褒め…たことになるのか。いや、褒めてはねぇよ」
「どっちだよ」
身体…身体かぁ。確かになまえの身体は小さい。そこがまた愛らしくて好きなんだけど、確かに負担は掛けているかもしれない。じゃあ、昨日抱いたから来週までなまえを抱かない方がいいってこと?えっ、普通に無理なんだけど。
夕飯の後片付けをしているなまえをじっと眺める。あー、やっぱり今日もしたいなぁ…我慢しないといけないと思うと余計にしたくなるのは何でなんだろう。忍耐が足りないのかな。
「どうしたの?そんな難しい顔をして」
「いや、どうしよっかなぁと思って」
「何が?」
「なまえを抱くべきか抱かないべきか…」
「はぁ…成る程、馬鹿なの?」
「いや、まぁ聞いてよ。今日喫煙室で佐茂とセックスの世界平均の話になったんだけどさ、年100回なんだって」
「へぇ…え、喫煙室って会社の?」
「そう」
「あ、そうですか…へぇ…」
「いや、引かないで聞いてよ」
男の会話なんてこんなもんだから。特に佐茂とは余計に。
私はつらつらと佐茂とした会話をなまえに話した。ついでに佐茂と北石が結婚することもついで程度に伝えておく。で。話せば話すほどなまえの表情が段々と険しくなっていった。
「会社で夫婦生活についてまで話さないでよ!」
「大丈夫、佐茂しかいなかったから」
「そういうことじゃないの!恥ずかしくないの!?」
「ない」
「どんな神経しているのよ!」
「生物学的に考えてもセックスをすることは自然なことで、むしろしていない方がずっとおかしなことなんだよ?」
「そういうことじゃない!」
じゃあ、どういうことだというんだ、と私が言うとなまえは呆れたように私と距離を置いて座った。失礼だなぁ、別に妙なことは何もしたりはしないのに。
なまえの持って来てくれた珈琲を口にし、いつものようになまえの肩を抱こうと腕を伸ばす。大丈夫、肩を抱くだけだ。
「佐茂はね、週1なんだって」
「へぇ…って、知り合いのそういう話は聞きたくない」
「そ?」
「そうだよ。何か気まずいよ!」
「ふーん。そうなんだ」
「知っていたけど、昆はおかしいよ。馬鹿!」
「ほぉ?随分と生意気なことを言う」
いい度胸だ、と珈琲を置いてなまえを押し倒す。ただの馴れ合いのつもりでやったことではあるけど、ふと冷静になるとなまえをまた抱きたい欲が出てきた。どうしてもそういうことばかり考えてしまうのだから、やはり私の性欲は困ったことに人よりは旺盛なのだろう。
危ない、となまえから離れると、不思議そうな顔をされた。
「…なに?」
「なにが?」
「いや、何もしないから」
「何かされたいの?」
「されたいというか…何となく違和感があったから」
「いや、なまえのことを考えるとセックスのペースは落とした方がいいのかなぁと思って。私は物凄くヤりたいけど」
「物凄くって…」
「でも、なまえはしたくないでしょ?」
「私、そんなこと言った?」
「言ってない。えっ、してもいいの?」
「だから、そういうことを気軽に口にしないでよ…」
それも、本当に何気ないような顔で言うなんてどうかしているよ、となまえは言った。あれ、もしかして今まで通り抱いてもよかったのか。そうだよね、あーよかったー。
そうっとなまえの腰を抱き寄せながら顔を近付けるとなまえに拒まれた。これはいただけない。一度ヤることを受け入れたんだ、最後まで責任を持つべきではないだろうか。もう、私はその気になってしまっているのだから、今更拒むことは許さない。ちゃんとじっくり可愛がらせてもらわないとね。
「まずはシャワー!それは絶対!」
「ねー」
「ねー、じゃなくて!」
「んー」
「んー、でもなくて!」
「大丈夫。むしろご褒美だから」
「何がよ!?」
「さぁて。何だろうねぇ?」
「ひ、ぎ…ぎゃあぁ」
「またそんな可愛くない声出しちゃって」
ちゃんと可愛がってあげるからね、となまえを抱き締める。あぁ、いい抱き心地だし、いい匂い。可愛い。
別に世の中のセックスの頻度なんてどうでもいいことだ。要は互いに合意して、互いに気持ち良くなれるのならば回数だの頻度だのなんて気に留める必要もない。ただ、じゃあいつまでこの頻度を保てるのかと問われるとなかなか答えづらいものがあり、やっぱり今後もちゃんと気力と体力をつけておくためにもジムには通い続けないといけないなぁと思った。
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