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2026 06/19

[chapter:君が為]





「おい、お前ら。話がある」
捕まえた二人の部屋に来た王はそう言った。明らかに苛々と不機嫌そうに言われた王の言葉に、各々休んでいた二人は体を向ける。
「何ですか、マンドリカルド王?城を歩ける時間ですか?」
「それとも、勉強の時間?」
「まずは、こちらの質問に答えろ。『フライドポテト』とやらを知っているか?」
尋ねてくる二人を無視し、王がそう言うと二人は目を見開いてお互いを見た。しばらく目で会話するように見つめ合うと踊り子が尋ねてくる。
「それ、私達が答えないといけないのかしら?」
「『あの子に関する情報の提供』があるだろうが。答えろ」
踊り子の言葉に王は即座に答えた。それに踊り子はようやく納得する。



なるほど、王はこういう状況を見越して、この条件で頷いたのか。



正直、踊り子は何故こんな安易なものを受け入れたか、分からなかった。次点の策を立ててはいたが、王があっさりと頷いたから、これで成立させたのである。
なるほど、これは確かに自分達でないと確認できない。
「じゃあ、尋ねるけど…なんで、貴方が『フライドポテト』を知っているのかしら?」
「リツカから聞いた」
「えぇ?!」
王の言葉に踊り子は思わず叫んだ。踊り子の反応を見た王は「煩い」と不機嫌そうに言うと説明する。それを聞いた踊り子は頭を抱えた。
「あの子は…あの子は…!本当にもう…何をしているの…?」
「いやはや…さすがはリツカ…僕等の予想の斜め上をいくね…」
呆れ返る踊り子に演奏家は楽しそうに笑いながら呟いた。そんな二人に苛々しながら、王は尋ねる。
「そんな反応を示すという事は知っている、もしくは食べたことがあるな?なら、協力しろ」
その言葉に二人は顔を見合わせ、頷いた。踊り子が指を一本たて、提案する。
「なら、交渉を開始するわ」
「何?」
「貴方の要求は『フライドポテト』に関する協力。なら、こちらもそれに対し、一つ要求する」
踊り子の言葉に王は忌々しそうに舌打ちした。だが、踊り子は平然としたままだ。
この踊り子は先程王が自分達に使った手を利用してきたのだ。これはチャンスだ、活かさない手はない、と。だから、一つでも要求をすべく、交渉を提案したのである。
「『あの子に関する情報の提供』に該当するだろうが」
「『フライドポテト』の情報は、それ程安くないわよ?それくらい貴重な料理なの。調理法とか聞いた貴方なら、それくらい分かるわよね?」
「くそっ…!」
王が吐き捨てるように言うと、踊り子はあっさりと返してくた。それに王はまた舌打ちした。やはり、知っていたか!と。
そもそも『揚げる』という調理法自体がそれくらい貴重なのだ。少なくとも、旅していた王は知らなかった。この時点でいかに貴重な情報か分かる。
更にはそれで出来る『フライドポテト』という料理は更に価値が上がる。芋を油で煮て塩を振るだけというシンプルで簡単だが、料理として成立するこのレシピはある意味恐ろしい物なのである。下手をすれば、この情報だけで戦争すら起こる可能性がある。
忌々しい事この上ないが、これも正解を知っているのは、この二人しかいない。思い人の笑顔の為に王は話を聞くしかなかった。
「こちらの要求は『一日に教える知識を一つにする』よ」
「それは、何に対して言っている?」
「そうね…『男同士のやり方の正しい知識』だけにしましょう」
踊り子の提案に王が問うと、踊り子はそう言った。それに王はやはりそちらにするか、と思い、再度舌打ちしたくなった。明らかに時間を稼ぎに来ている。足元を見られた王は機嫌が明らかに悪くなった。
「料理の方はいいわ。私達だって、あの子が喜ぶ事ならしたいもの。だから、こちらは知識の提供は限定しない。あ、勿論、条件はつけさせてもらうわ。『協力するのは一人だけ』と『こちらが協力できる範囲』という条件よ」
これには王も正直安堵した。内心、ホッと息を吐く。こちらも長々時間をかけられたら困ったし、それ以前に思い人の笑顔が遠くなってしまう。それは嫌過ぎる。
「で、どうする?こちらの要求を受け入れる?」
「…一応聞くが、お前達は食べた事はあるのか?作った事はあるのか?」
「食べた事はあるけど、作った事はないわ。作り方は知っているけど、あの子の知識並みね」
「僕もだね。それに僕は料理が壊滅的だ。それなら、まだ彼女の方がいいよ」
確認する踊り子に王は苦々しく思いながら、二人に尋ねた。それに各自答える。答えを聞いた王は悩んだ。
食べたことがあるなら、正解は知っている。だが、作り方は思い人程度の知識しかない。踊り子はともかく、演奏家は料理すら作れない。
欲を言えば、作ることもできる方が有り難かったが…仕方ない。せめて、正解を分かっていて、まだ料理をしそうな踊り子にしよう。
「女、お前が手伝うなら、要求を飲む。だから、協力しろ」
「交渉成立ね」
「こちらは材料を揃えたら、それを教えてやる。それから、城の料理人に協力しろ」
王の言葉に踊り子が確認するように頷く。それを見た王は、それだけ言い放つと苛々と不機嫌そうなまま、部屋を出て行った。そんな王を見送ると、二人は顔を見合わせる。
「驚いたわね…強引に物事を進めるだけかと思っていたのに…」
「まぁ…恋する人間は、いつでも相手に好かれようと必死なのさ…」
「こういう要求だけなら…いえ、それは彼に悪いわね…忘れてちょうだい…」
踊り子の言葉に演奏家が戯けて答える。それに踊り子が何か言いかけたが、すぐに口を閉じた。演奏家も黙り込む。
それは、彼に失礼すぎる。あの子の『恋人』に悪過ぎる。
そう思いながら、それぞれ待機時間を過ごした。

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