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2026 06/19
[chapter:開始宣言]
マスターは城に向かっていた。恋人と共に。彼の愛馬、ブリリアドーロに乗って。
マスターとマンドリカルドが城に向かう道中、全ての人が彼らに道を譲った。マンドリカルド王が命じたのか、それとも彼ら二人の迫力に気圧されたのか。
二人は進んでいく。ブリリアドーロに乗って進んでいく。城に近づけるだけ近づく。
「恐れ入ります、リツカ様。ここから先は貴方様お一人でお進み下さい」
城門の結界前に来ると、城を守る門番が槍を構え、城を守るように阻みながら言った。王がそう命じたのだろう。
その言葉にマンドリカルドは馬を降り、マスターを下ろす。マスターが地面に降りると、自分は馬に跨った。
「気をつけて下さい、マスター。決して、あいつ相手に油断しないで下さい。俺達が略奪を終えるまで、無事でいて下さい。一切、奪われないで下さい」
「ありがとう、マンドリカルド。君達は後から来てね。君らが来るのを俺は先に中に入って待っているよ。マンドリカルド王と共にね」
「ご武運を。マスター」
それだけ言葉を交わすと、マンドリカルドは去って行った。これから彼は自分の仲間と共に略奪を仕掛ける為に仲間の元へ行く。
自分は先発隊だ。一人で王と戦う。王と約束を果たす為に。
「マンドリカルド王に謁見の許可を!俺は貴方との約束を果たす為に来ました!!俺との約束を果たす為に俺と会って下さい、マンドリカルド王!」
マスターが叫ぶと全てが開かれる。城を守る兵士も城門も王の元へと向かう道も全て。
そんな中、一人の人物がマスターの前へと現れ、恭しく頭を下げた。王の伝令を伝えに来て、こちらの伝令を王に伝えた使者だ。
「お待ちしておりました、リツカ様。王の許可は出ております。王の元へとご案内しますので、ついて来て下さい」
その言葉にマスターは使者と共に城の中へと進んでいった。王との約束を果たす為に。
「承りました、リツカ様。我らは貴方様の要求を受け入れるとお約束しましょう。そして、必ず王に伝えましょう。私の全てをかけて」
マスターの要求を聞いた使者は恭しく頭を下げると、そう言った。その後、城にいる自らの王の元へと向かう。
「あぁ、そうだ、そうだろうとも!お前はそういう奴だ!!なんて熱烈な口説き文句なんだ、リツカ!あぁ、どうしよう?!このままでは俺はお前に狂ってしまう!!お前への愛に俺は狂ってしまう!あぁ、何故、お前はそんなに美しいんだ?!何故、こんなにも俺の心捉え続ける?!何故、ここまで俺を魅了する?!このままでは、本気でお前に狂い過ぎて死にそうだ!」
使者からマスターの言葉を聞いた王は歓喜に震えながら、叫んだ。誇り高く、気高く美しい思い人の為に叫び続ける。
「いいだろう、お前の望みを叶えてやろうじゃないか、リツカ!俺の全力で持って、お前の願いを叶えてやろう!!誇り高きタタールの王として!傲慢な暴君で略奪者として!!俺の全力を持って、お前と全面戦争してやろう!俺の全力を持ってお前の前に立ち、全力で戦ってやろう!!そして、俺はお前の全てを手に入れてやる!お前の全てを奪ってやる!!お前の愛は勿論、お前の命だって!」
誇り高く宣言する。笑いながら叫ぶ。狂いながら、叫ぶ。
「お前の愛で俺を殺してくれ、リツカ!そして、お前は俺に全て奪われてくれ!!その為なら、俺は命すら惜しくない!」
そう叫んだ彼は、やっぱり誇り高きタタールの王で傲慢な暴君で略奪者だった。
「ここから先は貴方様お一人で進んで下さい、リツカ様。そして貴方様に、我らが王の願いを叶えるという慈悲を下さった事に感謝を」
「こちらこそ、ありがとうございました。マンドリカルド王の為に命懸けで俺達に対して取り組んで下さった貴方に俺なりに最大限の感謝を述べさせて下さい」
「我が身に余る褒賞を授けて下さり、恐悦至極。貴方様に感謝を述べ、貴方様を我らが王の元に案内するという名誉ある大役をさせていただいた上、貴方様から直接感謝の言葉を賜った私は王の臣下の中で最も幸せな者です」
我らが王の願いを叶えて下さい、と言って恭しく頭を下げると使者は去っていった。その言葉通り、去っていく使者は誰より幸せそうだった。あの傲慢な王は傲慢な性格以外は有能なので、きっと臣下には慕われているのだろう。
その気持ちを振り払うように首を緩く振ると、マスターは目の前の扉に向き合った。目の前には見慣れた立派な扉。その扉をこんこんとノックする。
「マンドリカルド王、入室と謁見の許可を。貴方との約束を果たす為、貴方が狂う程に愛し、貴方の全てを奪う略奪者が来ました」
「許す。入れ」
「許可をいただき、感謝します。マンドリカルド王」
マスターがそう伝えると部屋の中から、そう言う声が聞こえてきた。それに感謝を述べるとマスターは扉を開き、部屋の中へと入っていった。
見慣れた部屋の中には王がいた。マスターが王に囚われていた間、ずっといた王の自室だ。王は自分と最愛の人と戦争する場所に最も相応しいと、この場所を選んだ。
玉座に座るようにベッドに座り、己の最愛の人を迎え入れる。王として誇り高く相手に敬意を表しながら戦争相手を招く。
「待っていた、リツカ。俺の最愛の人にして俺の戦争相手で俺をお前の愛で殺す殺人者」
「お招き下さり、感謝致します。誇り高きタタールの王、傲慢な暴君にして略奪者。俺が愛で殺す哀れな人」
王の言葉にマスターは頭を下げながら言った。自分の戦争相手にマスターも最大の敬意を表し、王と対峙する。そんなマスターに王は問う。
「戦争を始める前に宣言していいか?お前と戦争する為に」
「俺にも宣言する事を許してくれるなら、許しますよ、マンドリカルド王」
「では、遠慮なくお前に宣言しよう、リツカ。そして、お前にも宣言する事を許そう」
王の問いにマスターはそう答えた。それに王はマスターと向き合い、しっかりと真っ直ぐに見つめる。マスターも王に向き合い、その目を見つめ返す。
灰色の瞳の視線と青い瞳の視線が交差する。お互いに指を刺し、宣言する。
「宣言しよう、リツカ!俺はお前と全力で全面戦争し、勝利し、お前の全てを奪い尽くすと!!己の全てを賭け、全身全霊を以て、お前の愛もお前の命すら奪ってみせると!タタールの誇り高き王として!傲慢な暴君の略奪者として!!」
「俺も宣言しましょう、マンドリカルド王!俺の全てを使い、俺も貴方から俺達が欲しい物を略奪すると!!あらゆる能力を使い、あらゆる策を巡らし、あらゆる手段を以て、貴方から奪い尽くし、この戦争に勝ちます!そして勝利した後、貴方は俺が殺しましょう!!俺の愛で貴方を殺しましょう!貴方の全てを終わらせ、貴方の全てを抱え、俺達は未来へと進みます!!人類最後のマスターとして、約束しましょう!」
「素晴らしいぞ、リツカ!最高の殺し文句だ!!最高の口説き文句だ!やはり、俺の目に狂いはなかった!!お前こそ、俺の全てを捧げるに相応しい最愛の人だ!俺の全てを奪うに相応しい最高の対戦相手だ!!ならば、全てを賭けて戦ってやる事を改めて約束しよう!俺の最後の略奪の相手にしてやろう!!誇り高きタタールの王として!傲慢な暴君の略奪者として!!お前の暴虐の全てを許し、お前の願いを叶えてやると約束しよう!」
王が宣言する。マスターも宣言する。そんなマスターの宣言に王は歓喜に身を震わせながら、賞賛した。それにマスターは頷き、了承した。
さぁ、略奪の時間だ。タタールの王にして傲慢な暴君の略奪者と人類最後のマスターの全面戦争は、こうして始まった。