1

2026 06/19

先輩後輩初夜戦争




その日、藤丸と岸波は緊張していた。藤丸のマスタールームのベッドの縁に座って藤丸はインナーとズボン、岸波はシャツとズボンという軽装で向き合っている。
「結果がどうなっても恨みっこ無し。良いね?」
「は、はい!お願いします!!」
岸波の言葉に藤丸は緊張の面持ちのまま頷いた。
こうなった原因は数ヶ月前に遡る。
「サーヴァント、ムーンキャンサー。岸波白野、召喚に応じて参上した。なんて、一度言ってみたかった。夢が叶って嬉しいよ」
未来の月のドバイの一件の後、男の岸波白野がやってきた。BBにより、記憶は消された藤丸だが、岸波が自分を助けてくれる良い先輩というのは何となく分かっており、すぐに懐いた。後で合流した女性の岸波白野とも仲良しだが、早くから交流があったこと、それとBBの配慮により記憶を消されたとはいえ、自身のピンチを何度も助けて貰ったのは記憶以外の場所が覚えていたので、仲が深まるのは早かった。
月世界とはいえ、世界を救ったマスターという意味でも先輩であるからか、藤丸は何かと岸波を頼った。岸波は岸波で先輩として後輩の成長を阻害しない程度に藤丸に助言をしたりして助ける。サーヴァントとしても強いから(唯一対粛正防御を破れる)、そちらの方でも岸波を頼りに頼った。
その一方で人らしい部分も強い。例えば、藤丸がこっそり夜食を食べようとした所を見つけた時は「俺も一緒に食べたい」と自ら共犯になったり、「こんなに面白い場所があるの?藤丸君、一緒に行こうよ!」とトンデモ特異点を一緒に冒険したり。
良い意味でも悪い意味でも岸波白野は頼りになりながらも、気軽に付き合える「(割と)普通の」良い先輩であった。
そんな岸波に藤丸が心惹かれるのは当然で。岸波も何だかんだ可愛い後輩マスターが気になっていき。そのせいか、二人が一緒になると、何やら甘酸っぱい雰囲気が漂うようになった。
暫く、その雰囲気を堪能するように二人は動かなかった。周りもそんな二人に微笑ましさのようなものさえ感じ、暫く見守っていた。
そんな中、焦ったい二人に痺れをきらした人物がいた。女の岸波白野だ。こちらも気を使って見守っていたが、あまりにも奥手な男の自分に痺れをきらし、可愛い後輩マスターを焚き付けたのである。
「藤丸君、男の私が好きでしょ?見ていたから、分かる。私としても気を使っていたけど、ここまで告白しないのはどうかと思ったから、言わせてもらうね。男の私も君が好きだ。でも、多分あちらからはきっと告白をしないよ。初めての恋だからか、変に気を遣ってしまい、しないようにしている。だから、君から告白をしちゃおうよ」
そう言って、藤丸に告白するようにけしかけたのである。
何やかんやあって藤丸から告白して付き合う事になった後、それを藤丸から聞いた男の岸波は「流石、女の俺。俺というやつを誰よりも分かっている…」と遠い目をしながら呟いたそうだ。
そんなこんなで二人は恋人として付き合って順調に愛を育み。お互いの呼び方も「岸波先輩」「藤丸君」から「白野先輩」「立香さん」に変わり。
当然のように恋人として夜の営みをする関係にまで来たのだが、ここで問題が発生した。
どちらが上になるか?問題である。
「そりゃ、俺が上でしょ。俺が先輩なのだから」
「白野先輩は夏の時、あんなにもどすけべな格好のスポーツトレーナーをしていたのにですか?」
「立香さん、ちょっとあっちで俺と二人きりで話をしようか」
当然のように即答した岸波の言葉に藤丸が首を傾げながら呟くと、岸波はやや強引に後輩を連れて人目がない物陰に行った。帰ってきた時、岸波はにこにこ満足そうな顔をしていたのに対し、藤丸は赤い顔をして恥ずかしそうに俯いていたが、そこに触れてはいけない。
とはいえ、何やかんや策略を巡らせて上になろうとする岸波に対し、藤丸も何だかんだ抵抗を繰り返した。人類最後のマスターにしては藤丸は隙が多く、その度に岸波はあれやこれやの手で押し切ろうとするが、最後の最後で藤丸は踏ん張る。流石は人類最後のマスター。この土壇場の踏ん張りが凄いからこそ、藤丸はどんな危険な戦いにも最後には勝ちを得てきたのだ。
これには流石の岸波も手を焼いた。考えに考えた結果、藤丸に一つの提案をする。
「立香さんのマイルームで二人きりで一夜を過ごそう。君のベッドで決着をつけようじゃないか。その結果により、以後の役割も決めよう」
「良いですよ。俺の方が上だって、先輩に教えてあげますね」
岸波からの提案を聞いた藤丸はちょっと勝ち誇ったように笑いながら頷いた。幾ら別とはいえ、先に世界を救った先輩といえど未経験なら、勝ち目があると踏んだのである。だって、女性の岸波白野がけしかけた時に教えてくれたから。
そう、藤丸は岸波を侮ってしまったのである。
まぁ、それは藤丸にも当てはまるのだが。藤丸は元は普通の男子高校生で、付き合う人は勿論、初恋だって岸波が初めてだったので。
なのに、藤丸は俺達の体型はそう変わらないし、何なら俺の方が二センチ高いから、上になれる!と思ったのである。
そんな藤丸を見て、岸波はこっそりほくそ笑んだ。やっぱり乗ってきたな、と。
伊達に月の聖杯戦争を経験していないし、千年生きてもいない。恋愛経験はからっきしだが、戦い自体は何度も経験済みだ。他の英霊に比べれば貧弱な体躯(とはいえ、しっかり鍛えられてはいる)だが、それでも技術や戦略を駆使し、何度も勝ってきた。勝ってきたからこそ、最弱から熾天の座に至ったのである。
先輩マスターとして、年季の違いを見せてあげるよ。
何故か自分が彼氏の方だ!とはしゃぐ藤丸に岸波はそう思いながら笑みを浮かべた。
そして、今。二人は軽装でベッドで向き合っている。
「じゃ、始めようか」
「お願いします」
岸波の一言に藤丸が軽く頭を下げて、二人の戦いが始まった。お互いに相手の腰に手を回して抱き締め、顔を近づけて唇を重ねる。数回触れ合うだけの口付けを交わすと、舌を出した。そのまま、相手のそれに触れようとしたら、
「んんっ?!」
藤丸の口からくぐもった声が出た。岸波が出された藤丸の舌に食いつくように自身の口に吸い込んだからだ。ちゅくちゅくと吸い付きながら可愛がると、口内に入れた藤丸の舌に自身のを絡める。最初は先端を舐め回し、力が抜けて緩んできた所で即座に奥に招き、藤丸の舌を可愛がる。上も下も横も舌で激しく絡め擦り、たまに歯で甘く噛む。繰り返される刺激に岸波の口内にも唾液が流れてくる。それを飲み込みながら、岸波は藤丸の舌に自身の舌をこれでもかと絡め、可愛がった。
すると、藤丸の体から力が抜け、薄く口が開かれる。それを知った岸波は即座に藤丸の口内に舌を入れ、根本から藤丸の舌を可愛がる。溢れる唾液を送り、その滑りも借りて、藤丸の舌を奥から撫でるように擦ったり絡めたりして翻弄する。
その間、岸波のキャラメル色の瞳はじっと藤丸を見ていた。戦理眼を駆使し、藤丸を攻略していたのである。勿論、普通に可愛い恋人の様子を何一つ見落とさない為にも、だ。
岸波の熱っぽくも甘いキャラメル色の瞳に藤丸の青い瞳も甘く蕩けていく。そして、体にも甘い痺れのようなものが走る。
「や…ぁ…」
藤丸が甘く鳴くと岸波は漸く舌を抜いた。そのまま少し距離を取ると、目の前の後輩は頬を赤らめて青い瞳を蕩けさせながら、微かに体を震わせている。どうやら、岸波とのキスの余韻に浸っているらしい。
自分のキスに可愛らしく蕩ける後輩を見て、岸波は微かに笑った。
「どうしたの、立香さん?まだキスしかしていないよ?それとも、このまま俺が上で続きをしようか?」
「ぁ…だ、駄目です!俺が上です!!俺が上なんです!白野先輩は大人しく俺にされて下さい!!」
「先輩として、それは聞けないなぁ」
揶揄うように岸波が言うと藤丸ははっと正気に返りながら叫んだ。慌てて自分が上だと主張してくる。
「先輩として、それは聞けないなぁ」
そんな藤丸に笑顔で言うと、岸波は藤丸のインナーシャツの中に手を入れた。それに気付いた藤丸も岸波のシャツの中に手を入れる。お互いの手が腹を撫でながら、上に上っていく。
胸についた手は探るように薄い肉を揉んできた。それに熱い吐息が漏れる。それに気を良くしたように手は薄い胸を揉みしだく。
熱い吐息を漏らしながらも、藤丸は必死に手を動かした。揉まれる感触に息を吐きながらも、相手の胸を触って目当てのものを探す。真ん中辺りに手を動かすと突起に触れた。その感触からか、岸波がびくりと体を震わせる。その反応に気を良くした藤丸は、その突起を指で触りまくった。その度に岸波から熱い息が漏れる。キャラメル色の瞳も熱さを増していく。そんな岸波を見た藤丸はいける!と強く確信した。呼吸を荒くしながら、岸波の胸の突起を触りに触る。自分の胸も揉まれているが、揉まれているだけだからか鈍い刺激なので耐えられる。
と思っていたら、
「ふぁっ…?!」
唐突に突起を撫でられ、ぞくりとした。甘い刺激が腰にまで走る。藤丸の胸の突起に触れた指は、そのまま先端だけを刺激するように擦ってくる。
「ぁ…や…ゃだ…やだぁ…やめて…やめてぇ…」
胸の突起の先端だけ刺激されているというのに、藤丸は首を左右に振りながら善がり鳴いた。片方の胸をそうされながら、もう片方は優しく穏やかに、だがしっかりと胸の肉を揉んでくる。
そうされたからか、岸波の胸の突起を触っていた藤丸の手は止まった。それに気付いた岸波はこれでもかと藤丸の胸を可愛がってくる。薄く筋肉ついた胸を揉みながら、先端ばかり撫でてくる。
まるで羽の先っぽで触れてくるかのように優しくソフトな触り方。だからこそ、藤丸の胸は過敏になった。指でこすこすと先端を撫でられる度に甘い痺れが走り、腰の辺りに溜まっていく。
気づくと藤丸は腰をへこへこと前後に揺らしていた。懸命に歯を食いしばり、もじもじと体を揺らす。
「触って…触ってぇ…!ちゃんと触ってよぉ…!!」
甘く鳴きながら乞うと、その要望に応えるかのように突起を摘まれた。待ちに待った刺激に藤丸は歓喜の声を漏らしながら、体を震わせる。岸波の胸を触っていた藤丸の手は止まった。
それに気を良くした岸波は藤丸の胸のを本格的に可愛がり始めた。片方は根本からこねくり回すように弄り、もう片方はリズミカルに摘む。望んでいた刺激に藤丸は体を震わせて蕩けながら甘く鳴いた。普段は青空のように澄んだ瞳は甘く蕩け、怪しくも艶めかしい夜のような深い青となる。
体を震わせ、へこへこと腰を揺らす藤丸。艶かしく体をくねらせる後輩を岸波は、その深い琥珀の瞳で見続けた。それに気付いた藤丸は一際強くびくりと体を震わせる。
「ゃ…やら…見ちゃ…ゃ…」
「どうして?恋人の可愛い姿を見たいのは当たり前じゃないか。俺に立香の可愛い姿を一杯見せて?」
「あ…!」
首を左右に振りながらの藤丸の懇願に岸波は濃い琥珀色の瞳を細めながら囁いた。静かだが、欲の込められた岸波のアーモンド色の瞳を見た藤丸の体を電撃のようなものが走る。それは脳髄まで駆け上がり、藤丸の意識を微睡ませる。
優しくて穏やかな先輩が初めて見せた凶暴さと激しい色欲。それに軽い恐怖と何とも言えない背徳的な甘美な感情を抱く。
食べられる。この草食動物の顔をした肉食獣の先輩に。頭の先から、爪先まで。
瞬時に理解させられた。
それが怖くて。でも、胸が甘く疼いて。
よく分からない感情の衝動のまま、藤丸は鳴く。
「や…ゃだ…!も…やぁ…!!」
「そっか」
「…ぇ?」
藤丸が叫ぶと岸波はそう言って離れた。いきなりの行動に藤丸は呆けながら、岸波を見る。すると岸波は背中に腕を回しながら藤丸を押し倒した。痛くないように押し倒すと、触れるだけの口付けを落とす。
「立香さん、このまま俺が上で進めるけど、良いかな?」
「…だ、駄目!」
岸波の言葉を聞いた藤丸はハッと我に返りながら、叫んだ。
そうだ、自分が上だ。上になって、夏にえっちなスポーツトレーナーを着ていた先輩の彼氏になるのだ。そうやるつもりで、挑んだのだ。
それを思い出した藤丸はきっと岸波を睨むように見る。何故か知らないが、この先輩は童貞なのに自分を翻弄してくる。恋人は愚か、恋愛だって自分が初めての筈なのに。
人類最後のマスターである自分が負けてはならない。負けては人理が終わってしまう。それは絶対に避けねばならない。
藤丸はそう決意を固めながら、恋人の先輩を見つめた。恋人の夜の営みに人理も何も関係ないのに。お馬鹿である。
そんな藤丸に「そっかぁ」とだけ言って笑うと、岸波は上に覆い被さったまま、体の位置を変えた。自分の顔は藤丸の股間に。藤丸の顔の位置に自身の股間がくるように。所謂シックスナインの体制になる岸波に性知識が覚束ない藤丸は首を傾げる。
「ここからは、分かり易くいこうか。先に相手の男性器から射精させたら、そちらが上。使うのは手でも口でも良いよ。これなら、経験のない俺達でも分かり易くて良いと思うんだけど」
どうかな?と爽やかに提案してくる岸波。声は爽やかだし、多分顔も爽やかな笑顔なのは想像に難くないが、藤丸の目の前にある股間はズボン越しに見ても昂りが分かる程なので、全然爽やかではない。目の前の岸波の昂った雄に軽く恐怖しながらも、藤丸は目を離せなかった。怖い筈なのに、不思議と目が離せない。
何の感情か分からないが、胸がドキドキするのを藤丸は感じた。
「そ、それで良いです…」
「じゃ、始めようか」
藤丸が頷きながら言うと、岸波はさっさと藤丸の白いズボンのベルトに手をかけた。器用にも、かちゃかちゃとズボンを脱がしにかかる岸波に藤丸も岸波の黒いズボンに手をかける。しかし、緊張からか手が震え、中々上手く脱がせられない。
漸く岸波のズボンのベルトを外し、ほっと息をついた瞬間、
「ふぁっ!」
股間にかけられた熱い吐息にびくりとした。と思ったら、性器が暖かくて湿り気のあるものに包まれる。やたら弾力のある硬いものが擦り合わせるように撫でてくると同時に自身の性器を包み込む暖かいものが締めつけてくる。その刺激に藤丸は甘い声を漏らしながら体を震わせた。
気持ち良い。
「は…ふ…きもちぃ…きもちいぃ…」
股間からの甘い刺激に蕩けながら藤丸は呟いた。刺激を受ける度に甘く腰が痺れ、あまりの気持ち良さに蕩けながら、藤丸はへこへこと無様に腰を揺らす。が、
「立香さんはしないの?このままなら、俺が上になるよ?」
その岸波の一言に藤丸はハッと我に返った。甘い痺れに体を震わせながらも、何とか目の前の黒いズボンに手を伸ばし、チャックを下ろす。下着をずらすと、若くて立派な雄がぼろんと飛び出た。大きさはそこまでではないが、若いからか硬く立派で反り返り、先端からは先走りらしい液体が出ている。
藤丸は初めて見る他人の性器に恐る恐る手を伸ばした。何とか捕まえると、岸波はそれを察したのか腰の位置を下げてくる。それに内心感謝しながら、藤丸が口の中に招こうと口を開くと、
「んぐっ…!」
その途端に口の中にそれが突っ込まれた。それと同時にとん、と後ろの孔を指で叩かれる。中ではなく、本当に外の入り口。まるで扉をノックするようにとんとんと孔を叩きながら、藤丸の口の中を岸波の雄が出たり入ったりして擦ってくる。
「ん…んん…!」
口の中を犯され、藤丸は呻く。とんとんと指が孔をノックする度に岸波の雄が藤丸の口内を犯していく。孔をノックされる度に甘い痺れが腰を中心に体に広がっていく。それに藤丸は錯覚を起こしていった。
指で孔をノックされる度に口内を犯すものが体を犯していくような、そんな錯覚。熱い吐息を漏らしながらも藤丸は体をくねらせる。その度に口の中を岸波の雄が犯していく。そのせいか、岸波の雄は昂り、匂いも撒き散らす。それを強制的に嗅がされた藤丸は鼻から脳内も犯された。何故かは分からないが口一杯に唾液が溢れ、自然と雄をしゃぶる。すると、まるでそれを褒めるように岸波は藤丸の性器を舐めしゃぶった。それをしながら腰を揺らし、孔のノックを続ける。
口と股間の刺激が連動し、藤丸は脳内まで犯される。まだ体の中には何も入っていないのに。
孔を犯されていないのに、藤丸は確かに岸波に犯されていた。それに最後の抵抗を示すように藤丸は弱々しく首を左右に振る。
何とか、快感から逃れようと体に溜まっていく甘い痺れに抵抗する。
しかし、
「ふ…ぁ…!」
遂に許容値を超えた快感に藤丸は精を放った。それを最後まで吐き出させようと指が根本を揉んでくる。袋の中すら吐き出させようとする手に藤丸は腰を揺らしながら、嫌々と首を振る。
「やらぁ…!も…出ないぃ…!!」
嫌々と体ごと左右に揺らしながら、藤丸は悲鳴をあげる。しかし、
「ひゃっ!」
尻をむんずと掴まれたかと思うと、遂に孔に指が入ってきた。藤丸が吐き出した精を纏わせたのか、滑りを持って出入りしてくる。最初は初めてだからか少ししか入らなかったが、ゆっくりととんとんと突いて行く内に段々慣れていき、奥まで侵入してくる。
一旦は止まった口の中の律動も再開される。指が奥を叩く度に口の中も奥を叩くように犯してくる。
その二つの刺激に藤丸は先程より強く犯される錯覚を起こした。体の奥と口内の奥。二つが連動し、藤丸の意識まで犯してくる。
体が熱い。熱くて熱くて堪らない。あまりの熱さにのぼせそうだ。
でも、何故だろう?何か体の中が寒い。寒くて寂しい。
口の中にはある熱が体の中には無くて寂しい。
そう思い始めた瞬間、
「ふぁ?!」
指がある一点を刺激してきた。口内を犯されながらも悲鳴を上げた藤丸の反応で分かったのか、指は何度もそこを犯してくる。刺激される度に藤丸の胎の中はきゅんきゃんと疼き出した。口内の熱が体の中にも欲しいと訴えてくる。
でも、胎の中を犯すのは指ばかりで。増えていっても指だけだから、足りなくて。欲しくて欲しくて。
渇望するまま、藤丸は口内を犯す熱に舌を這わす。溢れる精ごと貪っていく。もっと欲しい、もっと欲しい。その欲を満たすように。
だが、
「あ…」
欲しがる藤丸の口の中から、熱は出て行ってしまった。無情にも去っていく熱を藤丸は口から舌を出しながら、悲しそうに恨めしそうに見つめる。そんな藤丸の様子が分かったのか、微かに笑う声が聞こえてきた。藤丸に覆い被さっていた先輩は体を動かして体制を整えて藤丸に向き合うと場違いな程に爽やかな笑顔を浮かべながら、口を開く。
「俺が上で良いよね、立香?」
「ふぁい…」
とどめとばかりに耳をふにふに撫でながら岸波が言うと、藤丸は蕩けながら答えた。その青い瞳は砂糖を煮詰めたようにこれでもかと甘く蕩けている。
自分にめろめろな後輩兼恋人が可愛い過ぎる。
ある意味、自分も後輩馬鹿な事を考えながら、岸波は藤丸の唇に口付けを落とした。何度も優しく自分に口付けを落とす岸波に藤丸は目を細め、自らも可能な限り、口付けを返す。
陽だまりのような温かくて優しい穏やかな触れ合いを暫く堪能する。
「じゃ、続きをしようか」
戯れのような口づけを止めると岸波はそう言って少し離れ、藤丸の股間の辺りに陣取った。器用にも藤丸の足を抱え上げ、腰の下に準備していたクッションを置く。そして、藤丸の足を肩に乗せると体を折り曲げ、
「立香、いい?」
「あ…」
藤丸の孔に今までの触れ合いで昂った自身の性器の先端を押し付けながら、岸波は尋ねた。その顔は普段の爽やかで頼り甲斐のある先輩の顔とは違い、欲情しきった男の顔をしており…
自らを食べようとする雄の姿に藤丸は胸を高鳴らせた。普段、出来る限り人を気遣う姿は想像出来ない程に自分を欲する男に心臓の高鳴りがとまらない。
「白野さ…白野さん…」
疲労からか重い腕を必死に持ち上げて伸ばしながら、藤丸は懇願する。
「食べて…俺を食べて…」
岸波は必死になりながら自分に伸ばされた藤丸の腕を掴むと、その手の平に口付けてから自分の首の後ろに回し、
「よく出来ました」
「あぁっ!」
そう言って瞼に口付けを落とすと、容赦なく腰を進めて藤丸の中に侵入した。待ち望んだ熱が漸く体の中に与えられ、藤丸は喜びの悲鳴を上げる。
余程嬉しいのか、体の中の方も岸波を歓迎した。きゅうきゅうと甘えるように、だがきつい締め付けに岸波は歯を食い縛る。
「立香、嬉しいのは分かるけど、ちょっと締め付け過ぎだ。もうちょっと力を抜ける?」
「無理…むりぃ…!初めてだから…分からないよぉ…!!」
「くっ…!」
岸波が声をかけると藤丸は彼の体に抱きつきながら、嫌だ嫌だというように首を横に振って鳴き叫ぶ。そんな藤丸に中も連動したのか、更にきゅうと岸波を締め付けてきた。あまりにもきつい締め付けに岸波は呻く。歯を食い縛り、必死に耐える。
いくら初めてとはいえ、入れただけで達するのは情けなさ過ぎると思ったのだ。
何とか耐え凌ぐと、ゆるゆると腰を動かし、藤丸の中を開拓していった。最初は辛いのか眉を顰めながらも耐えていた藤丸だったが、段々慣れてきたのか、蕩け始める。
「ゃ…ゃ…きもちい…きもちぃ…白野しゃ…白野しゃあ…」
「はっ…立香、可愛い…凄く可愛いよ…!」
「んぅ…」
自分の腕の中で顔を歪めながらも甘く鳴く藤丸が可愛くて愛しくて。中の締め付けに眉を寄せて耐えながら、岸波は藤丸に口付ける。何度か顔に口付けを繰り返すと、唇を喰むように唇を重ねる。薄く開いた隙間から藤丸の口の中に舌を入れ、貪るように滅茶苦茶に舌で掻き回す。
そうしながら、腰を打ちつけるようにして中を犯し、最奥を目指す。痛く無いように優しく、けれど容赦なく。
「きもちぃ…きもちぃ…あ、そこ…だめ…だめ…」
「あぁ、ここ?立香はここがいいの?」
「ゃ…や…!らめ…らめらってぇ…!!」
口付けの合間にうわ言のように呟く藤丸の言葉を聞いた岸波は、その言葉通りの場所…胎の内側の浅い所を自らの雄でぐりぐりと刺激した。途端にびりびりと強く甘い痺れが腰の辺りから広がり、藤丸は善がり鳴く。その様子を見た岸波は浅い胎の内側も刺激するようにぐりぐりと擦りながら中を広げ始めた。その度に藤丸の体は脳髄まで快感が駆け抜け、甘い痺れと共に蕩けていく。
部屋の中が淫らな熱と濡れた音、そしてむせ返る程の甘さで満たされていった。
「ぁ…も、ゃ…!おにゃか…きゅんきゅんひて…くるひ…!!」
「はっ…立香、俺も…そろそろ…!」
「ちょうらい…!はくのしゃ…ちょうらぃ…!!」
岸波に抱きつきながら、藤丸が叫ぶ。それを宥めるように優しく口付けを落としながら、岸波が言うと、藤丸は更に一層強く抱きつきながら、岸波を求めた。必死に抱きついて自分を求める後輩の可愛さに岸波はめろめろになりながら、優しく穏やかに、だが確実に恋人を追い上げていく。
「ぁ…も…!」
「くっ…!」
限界を迎えた藤丸が促されるままに上り詰める。それと同時に締め付けられ、岸波も中に熱を放った。その熱さにも追い立てられた藤丸はびくびくと体を震わせる。体が震える度に藤丸の中は淫らに蠢き、岸波に甘えた。それに初めての岸波は耐える事も出来ず、
「あ…ゃ…掻き回しちゃ…やぁ…!」
まるで中に精を擦りつけるように犯された藤丸は熱に微睡みながら、腰をくねらせる。それに藤丸同様初めての岸波が耐え切れる筈がなく、
「っ…!こんなの、我慢出来る訳、ないだろ…!!」
「あ、ぁあ…っ!」
普段と違い、顔に似合わない悪態をつくと岸波は再び藤丸を犯し始めた。普段とは違い、余裕なさそうに眉を寄せて歯を食い縛りながら藤丸を犯す岸波。そんな岸波に藤丸は胸の高鳴りが止まらない。
皆を気遣う優しい先輩が、その仮面を捨て去り。余裕さえ感じる頼もしささえ無くして、自分を貪るように犯す男の顔をして。普段はあんなに人を気遣い、優しくて頼り甲斐のある先輩が。こんなにも余裕なく自分を求めてくれるのが嬉しかった。
言い様のない嬉しさに藤丸の心は満たされた。こんなにも自分を求めてくれる恋人が酷く嬉しくて幸せで。
ぽろりと涙を零すと、優しい先輩は口付けて拭ってくれた。それにも藤丸の心は満たされた。激しくも優しく、暖かなもので満たされていった。
結局、二人はお互いを求めに求めて、激しく貪り合い。気付けば、夜は明けていた。
「立香さん、大丈夫?」
行為の途中から気絶した藤丸が目を覚ますと、それに気付いた岸波が声をかけてきた。そんな岸波に藤丸はぐったりしながら口を開く。
「むぃ…」
「だろうね」
疲労で指一本も動かせないからか、振り返る事なく、呟く藤丸に岸波は苦笑しながら近付いた。ベッドの傍らまで来ると藤丸の体を起こし、クッションを挟めてからベッドヘッドに寄りかからせる。自らも傍らの椅子に座るとカップとストローを支えながら、それを藤丸の口元に差し出した。
どうやら、岸波自身もやり過ぎた自覚はあるらしく、徹底的に看病する気のようだ。それを察した藤丸は、その好意に思いきり甘える事にした。差し出されたストローを口に含み、ちゅーちゅーと中身を飲むと冷たくてほのかな甘さが喉を潤す。恐らく、中身はスポーツドリンクだ。喉がからからに乾いていた事もあり、藤丸はずぞぞぞーとストローが鳴るまで中身を吸い上げる。
「どうかな?」
「冷たくて美味しいです。お陰様で喉が潤いました。ありがとうございます」
「足りなくなったら言ってね。持ってくるから」
乾いていた喉が潤った事で機嫌が良くなったのか、目を細めながら藤丸が言うと、岸波はにこりと笑顔で言った。それにはい、と素直に頷く後輩兼恋人に岸波は尋ねる。
「感想は?」
「してやられたなぁという感じです。下にされたのもですが、今の手厚い介錯も狡いなぁって」
「今の立香さん、昨日ので疲れきっているだろうから、今日は付きっきりで誠心誠意、真心込めて介錯するね」
藤丸の答えを聞いた岸波はまた満足そうに笑いながら、そう言った。傍目から見ても上機嫌なのは明白だ。
誰のせいでと思いながら、藤丸がじと、と睨むように岸波を見る。その気持ちから、俺がこうなったのは誰のせいだと思ってますか?と藤丸が声に出して問えば、俺のせいだね、とにこにこ笑いながら、岸波はあっさりと答える。
流石は最弱から最強になった月のマスター。手強い。
そんな岸波を見た藤丸は、それなら、本当に今日一日、思いきり甘えてしまおうと決めたのだった。そんな藤丸の気持ちが分かったからか、岸波は先程言ったように藤丸の面倒を甲斐甲斐しく見る。
食堂から持ってきた料理を藤丸の口元に運んで、開いて待っていた口の中に入れたり。食べたら口元を拭いたり。食べ終わったら、片付けをして。
最後には軽く抱き締めながら優しく頭を撫でた。そんな岸波の胸元で藤丸はぐりぐりと頭を擦り寄せて甘える。
終いには折角だから、先輩が好きなあんみつが食べたいなぁと藤丸が我儘を言えば、岸波は本当に食堂からあんみつを持ってきた。岸波の手でスプーンを使って差し出されるそれを食べる藤丸。岸波はそんな藤丸を笑顔で静かに見つめる。その眼差しはどんなスイーツよりも甘く、優しい。それに気付いた藤丸は微かに顔を赤くしながら、あんみつを食べて行った。
本当に指一本動かさなくても良い岸波の介錯に藤丸は甘えに甘えた。そして、され続けて調子に乗ったのか、岸波が自分を寝かしつけに入ると、ちらりと彼を見て一言。
「次は俺が上で良いですよね?」
「昨日と同じ展開になるけど、それでも良い?」
「…良くないです」
自分の言葉に、にこりと笑いながら返す岸波に藤丸は内心がくりと項垂れながら、呟くように返した。
この甘やかしに乗じて、さり気なく次は上になるという約束を取り付け、以後は上でいけるようにしようという甘い考えは岸波にはお見通しだったらしい。これからも岸波が上で藤丸が下になる事が確定した瞬間だった。
流石は月世界の最強マスター。某月姫様も褒めた戦術眼は恋愛面でも有効であったようだ。
「先輩マスターの俺を出し抜こうなんて、千年早いよ」
「千年生きた白野先輩が言うと説得力が違いますね」
項垂れる藤丸を寝かしつけながら岸波が言うと、藤丸は目を細めながら呟いた。本当に岸波は千年生きたらしいので、説得力が違う。
そんな藤丸をまぁまぁと苦笑で宥めながら、岸波は彼の体を優しくぽんぽんと軽く叩き、寝かしつけた。それにうとうとと微睡みながら、藤丸は思う。
やっぱり白野先輩は狡いな。何だかんだ、自分の我を押し通しながらも、俺を骨抜きにもしてくるんだから、と。
月のマスターの誑かしは凄い、と思わず呟いたら、君のサーヴァント誑しの方が凄いよと苦笑混じりに返す岸波。その声色は何処までも暖かくて優しい。その優しさに導かれ、藤丸は眠りに落ちていった。
「と、いう感じだったんだけど、立香さんって本当に可愛いと思わない?アーチャー」
「こんな所で盛大に惚気るのはやめてくれ、月のマスター君。業務妨害だ」
厨房でカウンター越しに盛大に惚気てくる岸波にうんざりしながら、赤い弓兵は答えた。そんな赤い弓兵に件の青年は笑顔でまぁまぁ、いいじゃないかと言う。君が良くても私が良くないと言いながらも手元の料理は疎かにしないから、流石だ。藤丸が彼を影でお母さんと呼ぶのも納得である。
赤い弓兵は生前から、こういうのに慣れていたし、このカルデアでも料理中に雑談なんて何度もされているから、そういう意味からも本当に慣れてはいる。しかし、人のいる厨房や食堂で恋人同士の夜の話をされるのは自分を含め、迷惑でしかないので。
赤い弓兵はわざと咳払いを一つすると、皮肉を交えて岸波に言う。
「月の聖杯戦争を勝ち抜いたマスターともあろうものが、カルデアに来たからか、随分と色惚けをしたものだ。こんなに人がいる食堂で自身の恋愛、それも夜の話をするなんて」
「嫌だなぁ、アーチャー」
赤い弓兵の言葉を聞いた岸波はにこりと笑って一言。
「わざとに決まっているじゃないか」
それを聞いた赤い弓兵は苦虫を噛み潰したような顔をした。周りへの牽制も兼ねて、わざとここで自分に言っているのか、と。自分達はこんなにも仲の良い恋人同士だから、邪魔しないで下さいねと周りに知らしめ、邪魔が入らないようにしているのか、と。
未だにマスターを諦めていない勢がいるからなぁ、と赤い弓兵は心の中で呟いた。
元々の精神的な強さに加え、千年生きたからか中々の策士になったらしい月のマスターに赤い弓兵はため息混じりに呟く。
「君達の色恋沙汰に私を巻き込むのはやめてくれ」
「善処するよ」
苦々しく言う赤い弓兵に月のマスターは爽やかににこにこ笑いながら、即答したのだった。それを聞いた赤い弓兵は、そこはしないと言ってくれ、と思いながら、天を仰ぐしかなかった。

prev top next
index