ぴよぴよ亭ファイナルッ!


1


[chapter:熱獣]





壁に押さえつけられ、その大きくて逞しい手一つで頬を挟むように顔を上げさせられると、荒々しく強引に口付けられた。その勢いのまま、唇の隙間から舌を差し込まれ、口内を蹂躙される。
俺より厚い舌が俺の舌に絡まる。いつもなら、優しく労わるように撫でるように触れてくれるが、今日は大変ご立腹なのか、容赦がない。自身の武器である槍を振るうように荒々しく縦横無尽に俺の舌に自身の舌を激しく擦り合わせてきて、舐めとるように舌を絡め取ると俺の口から連れ去った。自分の口に連れ出すと得た獲物を堪能するようにねぶるようにしゃぶってくる、何度も何度も。自身の舌で俺の舌を抉るように擦り合わせて俺の舌を堪能し、奪い尽くしてくる。
あまりにも激しい刺激に視界がちかちかした。
そんな風に舌を貪られるからか、息も碌に出来ない。何度も彼の唇は俺の唇にぶつけるように重ねられる。俺の口内から溢れる唾液は一滴残さず奪ってやるというように吸い尽くされる。俺の吐息も喰らい尽くしてやるとばかりに口付けされるから、呼吸だってままならず、息苦しい。
確かに口吸いだ、昔はそう呼んでいたのも分かるな、なんて馬鹿な事を考えて現実逃避していたら、頭がくらくらしてきた。
でも、大好きな人にこんなにも激しく求められるのは嬉しくて。いつの間にか支えるように腰に回された逞しい腕が熱いのに、その暖かさが優しくて気持ち良くて。何なら、もう片方の腕が背中に周り、その逞しい胸元に強引に引き寄せられて、その熱い熱をじんわりと俺の体に伝えてくるように強く抱き締めて腕の中に閉じ込めるから、嬉しくて。
あぁ、幸せだなぁ、なんて馬鹿な事を彼から移された熱に浮かされた頭で考えてしまう。
苦しいけど、幸せで。体はぽかぽか、頭はぽやぽやしてくるから。
ただただ、暖かいな、幸せだなぁとしか考えられなかった。
「死んじゃ駄目ですよ、大将」
まるでその槍による攻撃のように激しく息も口内も舌も奪った男は、俺の口を貪り尽くした後、耳元で低く囁いてくる。
「あんたは俺と死に損なって死に損なって、一緒に死ぬんですからね」
力の抜けた俺の手の指に自身の指を絡めて手を繋ぎながら、長い赤の髪の下で黒い目を細めてうっそりと笑いながら。
赤毛の狼は、そう囁いたのだった。

- 3 -

*前次#


ページ: