おっす!オラ音無結弦!
なんの因果かトラックに轢かれて気が付くと鬼滅の刃の世界に転生してた元一般人だ!
なんでだ!と思いつつも優しい両親に蝶よ花よと育てられて数年
ある日両親が鬼に喰われてしまった!
その後鬼殺隊に助けられたものの、どうしようとなっていた俺を拾ってくれたのは
俺の師匠であり育ての親であるじいちゃんだ!
じいちゃんの厳しく辛い修行に耐え、雷の呼吸と技を会得した俺は最終戦別に挑む!
そこで恐怖心を紛らわせるため歌いながら鬼を斬ってたら呼吸が派生したぞ!
無事に鬼殺隊になれた俺だけど、声変わりを迎えた時にとんでもないチートが付与されていることに気付いたんだ!
俺、めっちゃ美声。
めっちゃ歌上手い。
歌うと鬼は聞き惚れて動きが止まり、動物が集まり雨が止んで太陽が射す。
こんなチートを手に入れてこれからどうなっちゃうの!?

…大変申し訳ありませんでした。
なんかそれっぽい感じのことを言ってみたかっただけなんだ…。
現実逃避をしたかったとも言う。
だってお前…お前…これ…
目の前に広がる庭の砂利の上に、縄で縛られた額に痣のある少年が意識を失って転がされている。
その後ろに佇む八人の個性の塊みたいな人々…
…アッこれ漫画で見たことある!!

「(柱合裁判じゃないですかヤダー!)」

どうしよう。
俺これ無駄に柱になんてなっちゃったもんだから居合わせちゃったよ!?
ああああ炭治郎かわいそう痛そう!せめて手当をして差し上げて!?
鬼を連れてたと言ってもがんばって鬼狩ってたんだからさあ!!
ほらあ!起きたけど君らが矢継ぎ早に色々言うから大混乱してんじゃん!
もうちょっと考えてあげなさいよ!そんなんだから継子が出来ないんだよ!
俺?もちろんいますよ継子!かわいい弟弟子で獪岳っていうんですけど!

「音無、お前がこういった場で黙っているのは珍しいな、お前はどう思うんだ」

はいすいません聞いてませんでした!
え、なにどこまで進んだの?っているかなんの話してたの?
流れ的に炭治郎をどうするかってこと?
おっけーそんなの決まっている。

「…殺すことはないかと。彼はこれまできちんと鬼殺隊として鬼を斬ってきたのですから」

まあ、俺は知ってるからこんなことが言えるんだけども。
実際もう一人の弟弟子から手紙で炭治郎のことは聞いてるし。
べた褒めだったよ。お兄ちゃんちょっと悔しい。

「うむ!結弦は相変わらずで参考にならんな!」

おいこら煉獄さんよ!意見求められたられたから述べただけだというのにその言い方!
怒るよ!?
まったくもうこの人らはそろいもそろってかったいんだよ頭が!

「困ります不死川様!」

あーほらもー、一番めんどくさいの来ちゃったあ…。
鬼への憎しみが人一倍強いからめんどくさいんだよ…実弥さん…。

「鬼が何だって?坊主ゥ、鬼殺隊として人を守るために戦える?そんなことはなァ」

あ、やっべ。
現実逃避してる間に色々話が進んでる。
このままでは箱越しに禰豆子ちゃん斬られちゃうのでは?それはいかん!
よーしチート発揮しちゃうぞお!

「やめなさい、不死川実弥」

「っ!」

声をかけると同時に実弥さんの動きが止まる。
止まると言うか固まるというか…
これが俺のチートの一つ、強く想いながら声を発すると、相手の動きを止めることができる。
まあ相手の名前を知ってないと成功率は低いんだけど。
今回はフルネーム知ってる相手だからね!綺麗に止まってくれたねやった!
…ん?なんか実弥さん以外も微動だにしないけどなんだろう…?
まあいいか、今のうちに箱回収して炭治郎に返してあげよう。

「俺の同胞がひどいことをしようとしたね、すまない」

「あ、え…いえ…いいえ!ありがとうございます!」

あーかわいい!
めちゃくちゃ目がきらきらしてるわ!かわいいわ!!








「やめなさい、不死川実弥」

その静かな一言に、呼ばれた当人どころか居合わせた全員が動けなくなった。
一言だ。殺気を込められたわけでもなんでもない、ただ静かな一言
それを聞いただけで誰も動けなかった。
いつも優しげに微笑む歌柱、美しい声で言葉を紡ぎ、歌を唄い鬼を斬る。
けれど、私たちはこの声を知っている。
これは…

「(怒って…いいえ違う…呆れているんですね)」

命令に従わない隊士を制止する声、それに一番近い声だ。
まるで親が子を「仕方のない子」だと叱りつけるような静かな声。
あの美しい声で紡がれた言葉は、破壊力が凄まじい。
それこそ今すぐ「ごめんなさい嫌いにならないで」と縋ってしまいそうになる…。
他の面々が動けないのも、縋り付きそうになるのを抑えているからだろう。
その証拠に、一番年下の霞柱は泣きそうな顔で視線が彷徨っている。
お館様がいらっしゃって、なんとか全員動ける様にはなったけれど
それでもしばらくは体がぎこちなかった。
縋りそうなままだったのだ。
彼が「言い過ぎましたね、ごめんなさい」と不死川さんに眉を下げて謝るまで。








さて。裁判も会議も無事に終わったし…善逸の見舞いじゃー!
しのぶさんに許可ももらったし、なんか手土産買って持っていってやろう。
獪岳はまだ任務中だから仕方ない。別のお土産を用意してあげればいいか。

「ゆ、ゆゆゆっ結弦兄ちゃああああああん!!」

「ああほら善逸、鼻をかみなさい。すごいことになってる」

「わああああああん!!すっげえ怖かったんだよ!俺蜘蛛になりかけたんだよ!見てこのかわいそうな短い手足!くっそ苦い薬を一日五回も飲まなきゃいけないしめちゃくちゃ女の子に怒られるし!!!」

「そうかそうか、ほらチーンして」

「チ“ー“ン“!!!」

部屋に入って数秒後にどえらいことになった…
お前…重症な割に元気ね…。手足短いのは萌え袖みたいでかわいいんじゃないか?
…そうでもないな。

「よく頑張ったね」

「うっ…うう…がんばったあああ…」

めちゃくちゃ腹に抱きついて来たけど、鼻をかんでも涙で顔がどぅるんどぅるんなんだよなあ…
まあ涙ぐらいならいいけども。
かわいい弟弟子がこんなにボロボロになりながらもがんばったんだし。
よーしよーし、めちゃくちゃ褒めてあげようねえ、子守唄もつけちゃる!

「こんこん小山の小うさぎは なぜにお耳が長うござる…」

善逸の横で炭治郎も寝てるし、小山の小うさぎを歌ってみた。
これ前世で気になって調べて歌えるようになったんだよなあ…
まあ聴かせる相手いなかったんですけど!

「(…唄い始めて数秒で落ちた…)」

美声チートで歌う子守唄つよい…。