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大正時代で鬼を殲滅するお仕事してて、死んだと思ったら現代日本ぽいところにオギャーしてた件。


…意味がわからんな?


安心して欲しい。俺が一番わかってない。
何も赤ん坊の頃から転生したという自覚があったわけじゃない。
3歳頃だろうか、生まれつき肺が悪かった俺は風邪で生死の境を彷徨い
意識が朦朧とする中、かつての記憶を取り戻したのだ。
3歳の子供に鬼狩りの記憶はきつかったんだろうな…もちろん入院は長引いた。
肺が悪いのも多分これ前世の影響ですね!?
鬼に心臓やら肺やら刺されて死んだからね!胸に痣あるしな!

さて、無事退院し快復した俺は、記憶はあれど普通の子どもとして生きていくと決めた。
まあ肺については悪いままだと困るので、それは前世で会得した全集中の呼吸でなんとかした。
なんとかなるもんだ。
その後は体をできるだけ鍛えた。まあこれに関しては目的があるわけじゃなくて
前世でのこともあって、鍛えないとなんか不安だったからだ。

平和だった。
優しい母に、子煩悩な父。幸せな日々だった。
このまま、幸せなまま日々を過ごして平和に生きていく、
そう、思っていたのに。


俺が小学校に上がって数年後、両親が死んだ。


交通事故だった。

教えてもらえたのは直接の原因だけで、事故の内容までは教えてもらえなかった。
親戚や近所の人が何やら話していたのは知っているが
小学生に聞かせるべきでない内容は、遠縁の仲良くしてくれていた親戚のお兄さんが耳に入らないようにしてくれているようだった。

葬式や諸々の手続きの間、お兄さんはずっと一緒にいてくれた。
両親が亡くなったというのに、泣きもしない俺を気味悪がることもなく、世話を焼いてくれた。

「我慢しなくていい」

そう言って抱きしめてくれたお兄さんに、一気に涙腺が崩壊したのは今でも覚えてる。
お兄さんはそのまま俺の後見人になってくれて、施設に入らなくても済むように便宜を図ってくれた。
本当は養子に入るか、とも言われてたけど
お兄さんはまだ20代だし、もしお嫁さんができた時に気まずくなるだろうからと断った。
でもさすがに小学生である俺を1人暮らしさせるわけにもいかないから、と
仕事が忙しいだろうに引き取って、高校入学と同時に一人暮らしをするまで一緒に過ごしてくれた。
頭が上がらないし、足を向けて寝られない。

家を出てからもお兄さん…銃兎さんはこまめに連絡をくれるし、たまにご飯にも誘ってくれる。
大事にされていると思う。

そして様々な人に助けられながら過ごすこと数年。


『世界は女性によって新生する!』


世界は一変した。










その日はちょうど縁があって仲良くなった年上の女性と出かけていたところで、
該当のモニターに映し出された内容に、食事をしていた俺たちは絶句した。

政権が変わるのはいいだろう。
紛争が終わるのも大歓迎だ。
だが、発表の仕方と言葉選びが最悪だ。

「…結弦くん…」

「…合歓さん、帰ろう。大混乱になる前に」

「う、うん…」

あんな発表の仕方をすれば、一般の何も知らない女性に危険が及ぶであろうことも考えられないのか。
それが政を行う人間のやることか、と腹立たしさで思わず拳に力が入る。

「(今はそんなことより、合歓さんを無事に送り届けないと…)
 合歓さん、左馬刻さんに連絡できる?迎えに来てもらった方がいい」

「うん。電話してみるね!」

会計をして、店内から出る前に連絡をお願いしておく。
下手に動いて帰るより、合歓さんのお兄さんである左馬刻さんに迎えに来てもらった方が安全だろう。
そう思って大人しく待機してたわけだけど…

「きゃあ!」

「何怯えたふりしてやがる!」

「ふざけんなよ!何が女主体だ!」

「お、お客様!乱暴は困ります!」

「うるせえ!!」

店内にいた男性の数人が激昂して女性客や女性店員に絡み出した。
案の定、と言っていいだろう。
そりゃあんな言い方をされれば誰だって怒る。
けれど絡まれているのは、政府とはなんの関係もない女性だ、
いくら腹が立ったからといってなんの関係もない相手に絡んでいい理由にならない。

「…合歓さん、耳塞いでて」

「え、うん」

幸い店内にいるのは数えるほどの人数だ。
なら、「力」を使っても問題ないだろう。多分。

左馬刻さんと電話をしている最中の合歓さんに声をかけて、息を吸い込む。
この店の広さなら大声を出す必要はないだろう。
ただ強く意思を込める。
「言葉」に強い意思を。


「ーー黙りなさい」

一言だ。
一言告げれば、騒いでいた男たちはシンと静まり返る。

「口を閉じて店を出なさい。誰一人として傷つけることは許しません」

ふらふらと男たちはそのまま店を出て行く。
…あ、お会計したんだろうか。
まあ、店内が何も損傷することなく終わったのでそこは勘弁して欲しいし、そこまでの責任は取れない。

「はあ…」

小さくため息をついて、合歓さんに手でOKサインを出せば、耳から手を離してこちらに慌てた様子で駆け寄ってくる。
そのまま俺の体をぺたぺたと触って…これは多分怪我がないか確認してくれているんだろう。

「だ、大丈夫だった?ケガは?ケガはしてない?」

「大丈夫。無傷だよ」

「本当に?」

「本当に」

そのまましばらく合歓さんはじーっと俺を眺めて、ようやくケガがないと信じてくれたようだ。
疑り深い。

「左馬刻さんは来てくれそう?」

「うん。10分ぐらいで迎えに来るって」」

「よかった。じゃあ合歓さんはこのまま左馬刻さんが来るまで店内で待ってて」

「結弦くんは?まさか歩いて帰るつもり?」

「え、うん」

「ダメだよ!危ない!」

「ええ…俺そんな弱くないよ…」

「知ってるけどダメ!ほらお兄ちゃんも待ってろって言ってる!」

「え“、電話繋がってんの?」

「はい」

そういってずずいと渡されたスマホの画面には、確かに通話中の文字が…
え、ほんとにつながってるんですけど…
なんだろう、スマホの向こうからかすかに怒気が…そんなわけないのに。

合歓さんが差し出したということは、出ろということなのか。
めちゃくちゃこわいんですけど。

「も、もしもし…」

『送ってやる。待ってろ。いいな』

「いやでも」

『 待 っ て ろ 』

「…はい」

めっちゃこわい。
なぜかその日はそのまま碧棺家に連れて行かれました。
この兄妹、押しが強い。






で、政権が交代し、H法が発令されてから少し経って
幼馴染のお兄さんや、左馬刻さん、俺の主治医だった先生が『The Dirty Dawg』というチームを組んで
そこでやっと思い出した。


「…これ、ヒプノシスマイクじゃん…」


また二次元の世界に生まれたんかい。
そう呟いて三日三晩寝込み、銃兎さんにしこたま心配されたのはまた別の話である。