兎の昼寝(B面)


立て付けの悪い玄関が開いた音で振り返った。そこに居たのは自分達の父であり家長であるとみとめておそ松は「おはよう」と声を掛けたが、


「……え?なに…?」


はぁとため息をつかれて、まだ眠い目をしぱしぱさせる。
彼にそれまでの父と隣のビルの住人の会話など知るすべはない。
大家である松野は先程の儚げな探偵を思い浮かべた。
色素の薄い髪をアップにし、朝も早いというのにパリッとしたパンツスーツにコート…勤勉な性質がそのまま表れたような服装だ。
真珠のように輝く白い肌に、憂いの影は胸を締め付けるようだった。服の上からそれと分かる細い肩は、雨を受ける花弁のように震えていたようだ。
悪いことをした。
苦労を一身に背負いこむ美しくうら若い女性に思う。
身内の不幸、健気に耐える過酷な現実、そして美しくうら若い女性ーーー…重要なので二度いった…ーーーは、朝ドラや大河ドラマが大好物なこの年代にはクリーンヒットであった。

完全に騙されている。

それに比べて、ともう一度我が長男を眺める。寝起きと分かるぼさぼさの髪に垂れた目。ずり下がったパジャマのズボンからパンツが覗き、ぼりぼりとなまっちょろい腹を掻いていた。
上から下まで眺め、もう一度ため息を吐く。


「おまえが娘ならなー…」

「え?なに根底からディスられてんの」


神すらどうにもならない現実を、今さら嘆いてみせた。

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