「どしたんだ遊戯くん」
 獏良がいつになく険しい表情をしていた。
 三人の胸中にも不安が広がっている。
「勝負を急ぎすぎて、攻撃が単調になってやがる。同じ手に引っかかるなんて…アイツらしくねぇぜ!」
「遊戯…どうしちゃったの?」

「クッ」
 フィールドでは攻撃力が半減したデーモンと、サイバーボンテージで強化されたハーピィが対峙している。
「ガッカリしたわ…私が追い求めていたデュエリストの実力が、この程度だったなんて。」

「(遊戯…いえ、千年パズルの闇の人格。貴方には拭いきれない傲慢さがある。このままでは私にすら辿り着かないわ。)」
 なまえは目を細めて遊戯を見据えていた。腰の千年秤のウジャド眼がチラリと光るのを、間に並び立つ3人の隙間から、獏良の横目が捉えている。

「私には見えていた。デュエルリングに立った時、見えないプレッシャーに押し潰されそうなアナタの姿がね!デュエリストはお互いが向かい合った時、闘いのオーラを感じ合う…だけど今のアナタに、そのオーラは無い!」
「オレに戦意が感じられないと言うのか!」
「そうよ!アナタは既に、ペガサスと闘う自分の姿しか思い描いていない!…私もナメられたもんね。まったく、自惚れの強い男!デュエルが始まる前から、私には勝ったつもり。そのくせペガサスの視線には敏感で私とのデュエルは空回り。…今のアナタなら、クイーンに挑む事すら届かないわ!」
「…!オレが、なまえにすら届かないだと」

 チラリとなまえを見上げれば、なまえは遊戯ではなく舞に視線を送っていた。その目は既に、彼女と闘う事になるであろうという闘志の篭ったものだと遊戯にはすぐ気付かされる。つまり、この場で彼女は、遊戯が相手にならないと判断している事に他ならなかった。
「(なまえ…!なぜオレを見ない!舞の言う通り、オレではお前にすら届かないと言うのか!)」

 横目に此方を見る遊戯を見て、なまえはあくまで舞にだけ視線をやった。
「(…舞さんの言う通りよ、遊戯。これで少しは頭を冷やしたかしら。)」

 ペガサスも反対の観覧席から遊戯となまえを眺め、面白そうに低く笑っていた。
「(フフ…遊戯ボーイ、そのレディの言う通り、今のユーのマインドでは、私はおろかクイーンを倒す事すら不可能デ〜ス。)」

 そのペガサスの視線にすぐ気が付いた遊戯は、その銀の髪の間に光る千年眼と、余裕のあるペガサスの笑みに苛立ちを募らせる。
「…クッ!舞!ゴタクはオレを倒してからにしな!デュエルを続行するぜ!」
「打たれ弱い男にかぎって、すぐ相手を威嚇しようとする。自分の弱さを隠すためにね!」
「ふざけるな!」


- 57 -

*前次#


back top