「いけー!城之内!」
「頑張るのよ〜!」

 デュエルリングに立つ城之内に、本田と杏子が声を掛ける。だが城之内のやる気の矛先行方むなしく、肝心のキースはまだ観覧席のソファーに横たわって欠伸をしていた。
「ふわぁ〜…ねみぃ」
「キース!!オメェもさっさとリングにつけ!」
 苛立ちを隠せない城之内に、キースは飄々として笑う。
「あぁん?なんだぁ?ド素人の分際で、本当にこのオレ様とデュエルするつもりなのかぁ? このバンデッド・キース様とよぉ!」
「最初に言ったはずだぜ。オレのカードでお前をぶっ倒すってな!」
「ほぅ…お前がオレをぶっ倒すねぇ。」
 キースの目がサングラス越しにぎらりと光る。城之内と既に乱闘を起こさんばかりの雰囲気に、クロケッツは淡々と職務をこなした。

「では参加カードを提示してもらう。」

 キースは何のためらいもなく、まるで金貨でも見せびらかすように懐からその黄金に輝くカードを出した。そしてサングラスの奥に嘲笑を隠したまま、城之内を焚きつける。
「ほらよ!小僧、テメェも見せな。」

「けっ、偉そうに…」
 その真意も知れない城之内がポケットに手を入れると、その顔はもののすぐに青くなった。
「……あれ?」

「カードの提示を。」
 城之内の異変に気付いたのか、クロケッツが追い打ちとばかりに声を掛ける。
「あぁ! あれ?確かに上着のポケットに…」


「まさか城之内、カード無くしたんじゃ…」
「城之内くんならありえる。」
「あのバカ!」
 杏子が半ば呆れたように口を開くと、バクラと本田も次々に焦り出す。

 その場へなまえが戻ってくると、トラブルのような騒ぎに城之内が見えるデュエルリングを見下ろした。遊戯はなまえに気付き、手すりに手をやったまま顔だけ向けて笑いかけると、なまえは舞の言葉を思い出して少し照れたような顔を返した。

「おいおいおい」

 そこへその場の空気を一変させるようなキースの声が響く。
「それじゃあデュエルもできねぇってことじゃねえのか?ペガサスさんヨォ。」
「ちょ…ちょっと待て!!絶対あるはずだ!」
 必死にキースの言葉を遮る城之内に、追い討ちをかけるようなクロケッツの言葉が降りかかる。
「確かに。」


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