「これが!!! かっとビングだァ!!!」
ドローした《死者蘇生》により、《
No.39 希望皇ホープ》を復活させた遊馬とアストラルが叫ぶ。
「『カオス・エクシーズチェンジ!!! 現れろ、───
《
CNo.39 希望皇 ホープレイ》!!!』」
《
CNo.39 希望皇 ホープレイ》(ランク4・光・
ORU1・攻/ 2500)
「これは……?!」
「
CNo.だと?!」
「なんだ、この
No.は?!」
実際に対峙するVやWだけでなく、珍しく顔色を変えたXに、\までもが驚愕を隠せない。
「こんな
No.、見たことない……!」
\の口から「まさか」という言葉が出る前に、Xが遊馬のデータを開く。
「この少年……
九十九 遊馬、……九十九?」
「……?」
まるで聞き覚えがあるとばかりに声を落としたXを見上げれば、Xは\を見下ろしてじっと見つめる。その理由がわからず、\は小さく息を飲むだけだった。
「……まさか」
「見たか!!! ホープの真の姿を!!!」
純白の騎士から、黒鉄の鈍い輝きを放つ戦士へと姿を変えた《ホープレイ》を前に、VもWも僅かに足を退く。《
銀河眼》とはまた違った威圧感と威厳のある《ホープレイ》。一度対峙したことのある
CNo.を、遊馬のタッグパートナーとしてその背中を見上げることになるとは、おそらくカイトも想像していなかっただろう。
「まさか、オマケかこんなカードを……」
まだオマケと呼称するWも、そろそろ相手のどちらもが強敵なのではないかと気付き始めていた。その首を頷かせでもするように、遊馬が《ホープレイ》に向けて手を振り上げる。
「《ホープレイ》の、モンスター効果発動!!! オーバーレイユニットをひとつ使うことで、このターン、攻撃力を500ポイントアップさせる!!!」
《
CNo.39 希望皇ホープレイ》(攻/ 2500→3000)
『遊馬、《マシュマック》は既にオーバーレイユニットを使い果たしている。だが、オーバーレイユニットを残している《ジャイアントキラー》が次のターンて効果を使ってくれば、我々は、終わりだ』
「分かってる。……さらに!!! この効果で相手モンスター1体の攻撃力を、1000ポイント下げる!!! オレは、《ジャイアントキラー》を選択!」
《
No.15 ギミック・パペット-ジャイアントキラー》(攻/ 1500→500)
「いっけェえ《ホープレイ》!!!」
遊馬の攻撃宣言、《ジャイアントキラー》は破壊され、衝撃に舞い上がった粉塵がWを飲み込む。
『Wのライフは2400。この攻撃で……』
「Wを倒したぜ!!!」
「───フッ ハハハハハ……」
遊馬だけでなく外野で応援していた小鳥やオービタルの上げた歓喜の声。それを嘲笑うWは、無傷のままその粉塵の中を立っていた。
「えぇ……?!」
「ハハハハ、……フッハハハハハ!!! 永続
罠、《ギミック・ボックス》」
「なに?!」
笑い声はW1人のものではなくなり、やがて地獄の亡者達の不気味な笑い声が幾重にも重なって響き渡る。
「このカードは、プレイヤーへのバトルダメージが発生したとき、それを無効にし、モンスターカードとなって特殊召喚される。そして無効にしたバトルダメージの数値が、このカードの攻撃力となる」
罠モンスター《ギミック・ボックス》(★8・闇・攻/ 2500)
「そんな、《ホープレイ》でも仕留められないなんて……!」
仕留める、そんな遊馬の言い草にWの眉が動いた。
『我々の攻撃を、読んでいたのか』
「くっ…… オレはカードを1枚セットして、ターンエンド!!!」
遊馬のエンドフェイズ、《ホープレイ》のモンスター効果の適用も終わり、攻撃力が2500に戻る。
「この俺を倒せると本気で思ったのか? 見せてやる、本当の絶望ってやつを…… 俺のターン、ドロー!!!」
癇癪に触れた、という方が正しかっただろう。怒りに呼応するように、Wの左目を覆うARビジョンアイの刻印が強く光る。
「俺は
魔法カード《ジャンク・パペット》を発動! このカードは、墓地にいる攻撃力1000以下のギミック・パペットを、守備表示で特殊召喚する。蘇れ!!!《ギミック・パペット-ネクロドール》!!!」
《ギミック・パペット-ネクロドール》(★8・闇・守/ 0)
召喚され棺から起き上がった《ネクロドール》がふふふ、と微笑む。Wがすぐさまディスクから2枚のカードを取り上げると、カードを持つ右手に紋章が輝いた。
「俺はレベル8の《ギミック・ボックス》と《ネクロドール》をオーバーレイ! 2体の闇属性でオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!!! 現れろ!!! 《
No.40》!!!」
《
No.40 ギミック・パペット-ヘブンズ・ストリングス》(ランク8・闇・
ORU2・攻/ 3000)
「そんな、ここへ来て攻撃力3000の
No.?!」
巨翼を伸ばした体躯が肩から腹にかけて割られ、その間を弦が張り巡る。天使とも悪魔とも、まして死神とも形容し難い新たな
No.を前に、遊馬とアストラルは萎縮した。
「ファンサービスもそろそろ終わりだ。……カイト、お前は一足先に地獄へ行ってろ!!!」
「ぐ……ッ」
カイトのフィールドには、攻撃力0でモンスター効果を失ったままの《
銀河眼》が無防備なまま置かれている。その残りライフは1600。
「今度こそ終わりだ、カイト!!! 《ヘブンズ・ストリングス》!!! 《
銀河眼》を攻撃!!!」
攻撃宣言に振りかざされる《ヘブンズ・ストリングス》の刃。なんの手立ても残されていないカイトは、ただ焦燥に強張らせた顔でそれを見上げることしかできない。
「(───ハルト、)」
自らの絶対的な敗北を前に、自然と溢れたハルトの名前。これが、あの時のなまえも同じ心境だったのかと察した。これが因果応報。彼女に《
銀河眼》の攻撃宣言をしたとき、彼女は確かに家族の名前とカイトの名前を口にした。それが今になって、彼女の復讐を望むWから同じ矢面に立たされ、カイトもまた同じようにハルトの名が口をつく。
「このままじゃカイトが……、!!!」
《ヘブンズ・ストリングス》からカイトへ視線を戻して遊馬が見たものは、遊馬の知るカイトの行動ではなかった。
カイトは構えていたデュエルディスクの腕を下ろしたのだ。諦めか、贖罪か。カイトはライフを失う直前で、戦う意思を捨てたと見られるようなことを。
その目を見た瞬間、遊馬に込み上げたものがなんなのか、今は本人にもわからない。
「(……、なまえ)」
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