「私もナンバーズハンターの1人! お前がカイトの何であろうと、その魂ごと
No.を回収させてもらう!!!」
デュエルディスク、セット!!! ARビジョン、リンク完了───
「「デュエル!!!」」
始まってしまったデュエルに、遊馬が手を握り締める。アストラルも今は黙して遊馬の背中越しにフィールドを眺めた。まだ謎のままの\のデッキと
No.。……ドロワが勝てば
No.はハートランド側に渡ってしまう。だが、今はドロワを応援するほか選択肢はない。
カイトもまた険しい顔で見つめた。
───[ターン1:ドロワ]
「先行は私が貰う! ドロー!(手札5→6)
私はフィールド魔法《
古の森》を発動!!!」
ARビジョンがあたりの森を様変わりさせていく。早速のフィールド魔法に、遊馬や小鳥たちは当たりを見回すが、カイトやW、もちろん対戦相手である\も動じない。
「このフィールドでモンスターが攻撃を行なった場合、そのモンスターはバトルフェイズ終了時に破壊される」
「なるほどね、
No.は
No.でないと破壊できない。だけどフィールド魔法による自壊なら別…… それで牽制したつもり?」
「いいや、お前を持て成す準備はこれからだ。
さらに
魔法カード《乱蝶幻舞》を発動! このカードはフィールド魔法が発動している時のみ発動可能な
魔法カード。この効果により、私はデッキから《幻蝶の刺客》と名のつくレベル4以下のモンスターを2体まで特殊召喚できる」(手札5→4)
《幻蝶の刺客アゲハ》(★4・闇・攻/ 1800)
《幻蝶の刺客モルフォ》(★4・闇・攻/ 1200)
「私はさらに手札から、もう一体の《幻蝶の刺客アゲハ》を通常召喚!」(手札4→3)
《幻蝶の刺客アゲハ》(★4・闇・攻/ 1800)
「そして戦士族モンスターの召喚に成功したことで、私は《幻蝶の刺客オオルリ》を特殊召喚!」(手札3→2)
《幻蝶の刺客オオルリ》(★4・闇・守/ 1700)
「私は《幻蝶の刺客アゲハ》《モルフォ》の2体、そして《アゲハ》《オオルリ》の2体でオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!!! 現れろ、《フォトン・バタフライ・アサシン》、《フォトン・アレキサンドラ・クイーン》!!!」
『レベル4のエクシーズ召喚を、先行ターンで2体だと……!』
「すげぇぜドロワ!!!」
感心している場合か、と諭すアストラルに、遊馬が頭をかく。
《フォトン・バタフライ・アサシン》(ランク4・光・
ORU2・攻/ 2100)
《フォトン・アレキサンドラ・クイーン》(ランク4・光・
ORU2・攻/ 2400)
「フォトン……?!」
やっと少し驚いた顔をした\に、ドロワがフッと笑う。
「どうした。いまさら怖気づいたか?」
アドバンテージは完全にドロワが先取した。1ターン目でエクシーズモンスターを2体並べ、攻撃を仕掛ければモンスターが破壊されるフィールド魔法が張られているのだ。……だが、まだ足りない。ドロワは残る手札に目を落とす。
手札を惜しんでいる場合ではない。
「悪いが手は抜かない。さらに永続魔法《
死蝶の誘惑》を発動! このカードがフィールドに存在する限り、相手フィールドの表側攻撃表示モンスターは攻撃しなければならない。攻撃しなかった場合、そのモンスターはエンドフェイズに破壊される。
まだだ。永続魔法《アサシン・ゲート》を発動! 《アサシン》以外のモンスターが攻撃したとき、その攻撃を無効にして、そのモンスターを破壊する。
どうだ、これでお前のモンスターはほぼ潰せる!!! 私のターンは終了だ」(手札2→0)
『徹底したモンスター破壊コンボ。
No.への完璧な対処というわけか』
淡々としつつも、ドロワの戦術にアストラルが目を細めた。日に日に
No.へのサポートだけでなく、対処までも急速に編み出されている。今後の激しく、そして厳しくなるであろう闘いを予言するドロワのフィールドに、今は圧倒されるしかない。
だが、果たしてそれが現在の当事者、……対戦相手である\も恐れているのかどうか、というと、それは別だった。
「ふ、」
俯いたまま、一度だけ小さく肩を揺らした\にドロワが身構える。
「ふふ、あはは、アッハハハハ!!!」
「な、なんだアイツ」
突然お腹を抱えて笑い出した\を訝しむ遊馬の後ろで、小鳥は背筋が寒くなった気がした。カイトも険しい顔のまま\を見つめながら、\の向こうに立つWの表情にも目を凝らす。
「《フォトン》!!! なぁんだ、ラッキーだったじゃない、W。これなら文句ないでしょ?」
Wはもう口出しする気はないとばかりに「ケッ」と吐き捨てる。
「な、なんのことだ?!」
ケラケラと笑う\が、氷よりも冷たい目でドロワを射抜く。
「別に。あなたを潰す理由が増えただけよ」
「……!!!」
ゾ、と背中が震える。だがそんなものに屈するドロワではない。カイトと遊馬のタッグデュエルのデータは収集済みだ。それはつまり、WとVのデッキ傾向も把握済みということ。
「(彼らは《
No.》をメインアタッカーにしたデッキだった。おそらくこの\という女のデッキ構成にも、同じ傾向があるはず)」
『WやV、そして私たち《
No.》を所有するデュエリストには、共通のデッキ傾向がある』
「デッキ傾向?」
顔を向けた遊馬を見下ろすと、アストラルは『そうだ』と頷く。
『前提として《
No.》のカードは強力だ。それ1枚で強豪に並ぶほどの力を秘めている。しかしデュエリストが所有する《
No.》の枚数は少ない。一度のデュエルで、VとWが2枚ずつ使ったのが、今のところの最大数だろう』
アストラルが遊馬から\、そしてその向こうに立つWへと目をやれば、遊馬もそれを追うように2人を見る。
『モンスターエクシーズを呼ぶには、同じレベルのモンスターが最低でも2体必要になる。……WやV、そして我々のデッキに共通することは、《
No.》を呼ぶための構築になっているということ。ドロワのフィールドは、その2つの弱点を見事に突いている』
「(ランクの高いモンスターエクシーズは、本来なら並べるのも難しい高レベルモンスターが求められる。裏を返せば、メインデッキのモンスターはレベルに対して元々の
攻撃・守備力が低い可能性が高いということ。フィールド魔法と永続魔法を凌いで場に残したとしても、私の《フォトン・バタフライ・アサシン》と《フォトン・アレキサンドラ・クイーン》の効果と攻撃力があれば、バトルダメージでライフを削り切れる。
仮に《
No.》をフィールドに出したとしても、永続魔法《
死蝶の誘惑》と《アサシン・ゲート》がある限り、例え《
No.》といえど破壊は免れない)」
「(なるほどね、相手も馬鹿じゃないってわけ。……カイトと九十九遊馬のタッグデュエルをこの女もそれをデータとして収集してたなら、VとWのデッキはある程度解析されてる。確かにこの布陣をされていたら、WやVなら対抗手段を取る前に沈められていたかもしれない)」
目を伏せて手札を一瞥すると、\は「フッ」と小さく笑った。
「《古の森》、《
死蝶の誘惑》、さらに《アサシン・ゲート》…… あなたの死を覚悟した愛の証明、最愛の森を守る美しい蝶は、時には戦士にもなる。それがあなたってわけ」
「……」
「あなたの心に満たされているカイトへの想い、カイトへの愛、……それで全部? ふふ、アッハハハ! いいわァ、もっと見せてよ! そして私にも思い出させてよ、カイトを愛していた気持ちをさ」
「思い出す頃にはこの森に沈んでいるさ。このデュエル、さっさと終わらせてやる!!!」
手を振り上げたドロワのフィールドには、フィールド魔法に2枚の永続魔法そして2体のランク4エクシーズモンスター。完璧な布陣で先行制圧をしたと言っても過言ではない。
だが顔を上げた\の笑みは、あまりにも冷酷だった。
「終わったな」
静かにそう呟いたWに、カイトとアストラルが顔を向けた。
「はぁ? あなたに次のターンなんて、ありませんけどぉ?」
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