「な、……なに?!」
 Wも分かりきった結末に、むしろ相手を憐れむような顔を向ける。
「あっはははは!!! 悪いけど私、Wみたいに悠長なファンサービスはしないの。恐怖と絶望に歪む瞬間の顔もいいけど、圧倒的な力を前にして愕然とする顔の方が好みだからさァ。……思い知らせてあげるよ、私とあなたの格の差ってやつを!!!」


[ターン2:\]

「私のターン、ドロー!!!(手札5→6)
 私は手札からレベル8の《堕天使スペルビア》を墓地へ送ることで、魔法マジックカード《トレード・イン》を発動! デッキから2枚、カードをドローする(手札6→4→6)
 そして手札の《堕天使イシュタム》のモンスター効果発動! 手札からこのカードと《堕天使》カード1枚を捨て、さらにデッキからカード2枚ドロー!」(手札6→4→6)

「手札の入れ替え……?!」

「さぁ、今度は私が“お持て成し”してあげるよ。手札から魔法マジックカード《堕天使の戒壇》を発動!!!(手札6→5)
 このカードは自分の墓地の《堕天使》モンスター1体を守備表示で特殊召喚する! 蘇れ、《堕天使スペルビア》!!!」

《堕天使スペルビア》(★8・闇・守/2400)

「そして《スペルビア》のモンスター効果発動! このカードが墓地からの特殊召喚に成功したとき、墓地から天使族モンスター1体を特殊召喚する。現れよ、《堕天使イシュタム》!!!」

《堕天使イシュタム》(★10・闇・攻/2500)

「さぁ、私は2体の《堕天使》を生贄に、《堕天使ルシフェル》をアドバンス召喚!!!」(手札5→4)

《堕天使ルシフェル》(★11・闇・攻/ 3000)

「《ルシフェル》のモンスター効果発動! このカードがアドバンス召喚に成功したとき、相手フィールドの効果モンスターの数まで、私は手札・デッキから《堕天使》モンスターを特殊召喚する!!!」


「そんな、ドロワのフィールドにモンスターは2体……!」


「モンスター展開をしてくれてありがとう。私はデッキから《堕天使ゼラート》、《堕天使テスカトリポカ》を特殊召喚!!!」

《堕天使ゼラート》(★8・闇・攻/ 2800)
《堕天使テスカトリポカ》(★9・闇・攻/ 2800)

「そして、私は《死者蘇生》を発動!!! 再び甦れ、《堕天使スペルビア》!!!」(手札5→4)

《堕天使スペルビア》(★8・闇・攻/ 2900)

「そして《スペルビア》が墓地から特殊召喚されたことで、再び墓地の《堕天使イシュタム》を蘇生!!!」

《堕天使イシュタム》(★10・闇・攻/2500)

 \のフィールドには、モンスターゾーン全てを使い5体もの堕天使が並んだ。
「な、……ッ だが私のフィールドは完璧だ。いくらモンスターを並べたところで攻撃は無効になり、破壊される!!! さぁ、攻撃してくるがいい!!!」
「焦んないでよ。あなたのその森、いま燃やし尽くしてあげる」
「なに……?!」

「私は《堕天使テスカトリポカ》のモンスター効果を発動!!! ライフを1000支払い、……ッ あう、ぐ、ぅう───」

\(LP:4000→3000)

「……ふ、ふふふふ、自分の墓地の《堕天使》魔法・罠カードの効果をモンスター効果として適用し、その後その対象となったカードをデッキに戻す。私が選択するのは───トラップカード《背徳の堕天使》!!!」

「墓地からトラップカードの効果を?!」
「いつそんなカードを、───ッ!!!」
 は、と息がドロワの喉を裂く。


『《堕天使イシュタム》の手札交換で、彼女はあのカードを捨てていた。……最初から見越した戦術』
 遊馬にしか聞こえないアストラルの答えと同じものを、ドロワやカイトは自分で導き出す。


「《背徳の堕天使》は、手札かフィールドの《堕天使》モンスター1体を墓地へ送り、フィールドのカード1枚を選んで破壊する。私は手札から《悦楽の堕天使》をリリース!(手札4→3)
 破壊するのはもちろん、フィールド魔法《いにしえの森》!!!」
「くっ……!!!」
 ARビジョンが砕かれ、フィールドは元いた庭園に戻る。
「だが私には、まだ2枚の───」
「無駄だよ。私はさらに《堕天使ゼラート》の効果発動!!! 手札から闇属性モンスター1体を墓地へ送り(手札3→2)
 ふっ、あはは、相手フィールドのモンスター、全てを破壊する!!!」

「なんだと?!」
 あっけなくドロワのフィールドからモンスターが破壊される。
「あなたのフィールドから《アサシン》と名のつくモンスターがいなくなればどうなるか。……ふふ、これで永続魔法、《アサシン・ゲート》も、自らの効果で破壊される!!!」
「そ、そんな……」
 残った永続魔法は《死蝶の誘惑デス・バタフライ・チャーム》。その効果は、このカードがフィールドに存在する限り、相手フィールドの表側攻撃表示モンスターは攻撃しなければならず、攻撃しなかった場合、そのモンスターはエンドフェイズに破壊されると言うもの。だがこれは《いにしえの森》、《死蝶の誘惑デス・バタフライ・チャーム》のコンボによって初めて成立する。
「ただし、この効果を使った《堕天使ゼラート》は、このターンの終わりに破壊される。まあ、関係ないけど」
 あっけなく丸裸も同然にされたドロワの足が震えだす。これにはアストラルも目を見張り、彼女が相当な実力者であると認めざるを得ない。

『\のフィールドにはレベル8のモンスターが2体』
「くるのか、《No.ナンバーズ》が……?!」

 そう声に出した遊馬に\がクスクス笑うと、首を伸ばしてドロワを見下げた。
「ザコ相手に《No.ナンバーズ》は使わない。言ったでしょ? 格の差を思い知らせてあげるって。私の《No.ナンバーズ》は決勝トーナメントまでのお楽しみ」

「もうやめろ!!! 勝負はついてるじゃねぇか!!!」
 身を乗り出した遊馬を一瞥すると、冷たい眼差しをカイトにも向ける。
「カイト、あなたは私を止めないの? いいのよ? 私の前で、この女の好意に答えたって」
「……俺には関係ない。ドロワが俺をどう思おうと、それにかけてやる情など、俺は持ち合わせていない」
「(そんな、カイト、……)」
 見ていられなくなって顔を覆う小鳥とは対照的に、ドロワは青ざめた顔で唇を噛んだ。女にしか分からない悲壮感は、\の最も深い傷をも抉りかえす。

 ───『その女はもう用済みだ。……デュエリストとして使う価値もない』

 ひとつだけ鮮明に覚えている、カイトから突き放された時の記憶。ドロワの心を砕かせておいて、ドロワを追い込んでおいて。自分勝手で醜悪なのは分かっている。それでもカイトが許せない。
 どうして最後くらい、嘘をついてあげられないの。
「そう、……そうよね」
 あは、と込み上げる乾いた笑いに、本当ならドロワの方が流すべき涙が溢れかけ、\はそれを隠すように目元を覆う。
「冷たくて薄情な男、そうであってくれなきゃ。あぁカイト、もっと恨ませて、もっと憎しませて!!! これからもカイトを好きになった私以外の女は全員、目の前で擦り潰してあげる! カイトの罪が生み出した化け物は世界で私だけ。ふふ、あっはははは!!!」
 ぐるりと顔を向けた\に、ドロワの体が強張る。
 彼女は私。カイトに何もかも捧げる前の、綺麗な私。だからここで折らなくちゃ。大丈夫、優しくしてあげるから。
「ドロワ、あなたの気持ちは本物だった。覚悟も、情熱も、純粋さも。カイトに愛を誓うあなたは女として本当に美しい。だからここで終わらせてあげる。醜くなる愛なんか忘れていい。カイトに裏切られることも知らず、あなたは美しいままいられるの」
「……ッ」
ムシムシらしく標本がお似合いよ。でも安心して、あなたはきっと、カイトの心の部屋に飾ってもらえるわ。…… 私なんかと違うもの」
「あ、あ……」
 ドロワの前に5体もの最上級モンスターが並び見下ろす。

《堕天使ルシフェル》(★11・攻/ 3000)
《堕天使イシュタム》(★10・攻/2500)
《堕天使テスカトリポカ》(★9・攻/ 2800)
《堕天使スペルビア》(★8・攻/ 2900)
《堕天使ゼラート》(★8・攻/ 2800)

「14,000のオーバーキルを喰らえェドロワ!!!」
「やめろォォォ!!!」
 


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