「「デュエル!!!」」

カイト(手札 5/ LP:4000)
\(手札 5/ LP:4000)



『フフフフ、……ついに始まったねぇ』
 人知れずトロンがスペースフィールドで2人を見下ろす。紋章の力を通して、カイトのデッキに目を凝らすと、予想通り彼が最初に奪った\の《No.ナンバーズ》を持ち出して来ているのを確認し、満足げに目を細める。
『このデュエルは僕にとって、紋章の力を完全にするための大事な一戦。\、僕の期待に応えられるのは、……君だけだよ』



[ターン1:カイト]
「先攻は俺が貰う!!! 俺のターン、ドロー!!!(手札5→6)
 俺は《フォトン・クラッシャー》を通常召喚」(手札6→5)

《フォトン・クラッシャー》(★4・光・攻/ 2000)

「そして俺のフィールドに《フォトン》モンスターがいる時、このカードは手札から特殊召喚することができる。来い、《フォトン・アドバンサー》!」(手札5→4)

《フォトン・アドバンサー》(★4・光・攻/ 1000)

「そして《フォトン・アドバンサー》のモンスター効果発動! フィールドにこのカード以外の《フォトン》モンスターが存在する場合、《フォトン・アドバンサー》の攻撃力は1000ポイントアップする」

《フォトン・アドバンサー》(攻/ 1000→2000)

「(攻撃力2000のモンスターが2体、……)」
 早速揃えてきたカイトに、\が小さく笑う。
「俺は攻撃力2000になった《フォトン・アドバンサー》、そして《フォトン・クラッシャー》の2体をリリース!!!

 闇に輝く銀河よ、希望の光になりて、我がしもべに宿れ、光の化身、ここに降臨!!! ───現れろ!!!」(手札4→3)

銀河眼の光子竜ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン》(★8・光・攻/ 3000)

 広大な宇宙を背に 銀河眼ギャラクシーアイズが咆哮を上げ、\の髪や服の裾が吹き上げられる。声を上げ終えて\を見下ろした 銀河眼ギャラクシーアイズと目が合った時、\に小さな痛みが走った。
「……ッ」
 ぱち、と視界が煌めく。
 ───『きれい』
 喉に込み上げたそんな言葉を飲み込んで、視線をカイトに落とす。何かを思い出したところでもう遅い。ならば知らないまま、今の気持ちのまま、闘いに集中したい。
 ふ、と笑った\に、カイトは黙したままじっと見つめ合った。そしてゆっくりと手札に目を向け、カードを取り上げる。

「俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド」(手札3→1)




「カイトを含むナンバーズ・ハンター達がなぜ、No.ナンバーズの取り憑いた人間から魂ごとカードを狩りとれるか教えてやろう。彼らが使う《光子フォトン》カード同様、あれはフェイカーが生み出した科学技術だ」
 忌々しそうに顔を顰めるXに、遊馬の横でアストラルが腕を組んだまま目を細めた。カイトは確かに、カードだけでなく能力の様々に《光子フォトン》というワードを使う。
「技術開発に実験は付き物。……フェイカーは\にNo.ナンバーズを与えて取り憑かせ、実験台に仕立て上げた。そしてカイトに狩らせたのだ! フェイカーは私の父を犠牲にするに事足りず、一馬さんの仲間を大切にする心も裏切り、カイトまで私が信頼して妹を預けた心をも踏み躙ったのだ。君は許せるのか?! Dr.フェイカーを、その息子を!!!
 \が実験室へ連れ出されたと聞き、駆けつけた時には、……全ては終わっていた。私は忘れることができない。あの時のカイトの背中を。カイトの顔を。そして全ての真実を知ったとき、私は……ッ!!!」




[ターン2:\]
「私のターン、ドロー」(手札5→6)
 ドローカードを手札に加えたところで、\は対峙するカイトと 銀河眼ギャラクシーアイズを見上げる。

「私は《堕天使ユコバック》を召喚」(手札6→5)

《堕天使ユコバック》(★3・闇・攻/ 700)

「召喚に成功したことで、私は《堕天使ユコバック》のモンスター効果を発動。デッキから『堕天使カード』1枚を墓地へ送る」
 デッキからカードを抜き取って墓地へ落とす\の手を、カイトが眉間を寄せて眺める。ドロワとのデュエルを見たことは、決して無駄ではなかった。\のデッキは墓地にカードを落とすことで回転する。エクシーズ召喚こそしなかったものの、1ターンでオーバーキルをするほどのモンスター展開力を見せた。高レベルのエクシーズ素材を揃えることなど、\にとっては造作もないと言うこと。
「(……だが、\も《 銀河眼ギャラクシーアイズ》のモンスター効果は知っているはず)」
 警戒するカイトの顔にクスクスと笑いながら、\は手札に手を掛ける。

「そして私は手札の《堕天使イシュタム》の効果を発動。このカードと手札の『堕天使カード』1枚を墓地へ送り、2枚ドロー」(手札5→3→5)
「(やはりな)」
「ふふ、さらに私は《トレード・イン》を発動。手札のレベル8《堕天使スペルビア》を墓地へ送り、2枚ドロー」(手札5→3→5)
「……」
「(カイト、……ドロワとのデュエルを見ていたのに、私の墓地肥やしとデッキ圧縮に対策をしてない? ナメられたものね)」
 黙ったままのカイトに、「まぁいいか」と\はドローした2枚のカードに目を落とす。手札は揃いつつある。
「さらに魔法マジックカード《闇の誘惑》を発動。デッキから2枚ドローし」(手札5→4→6)
 さらにドローした2枚を手札に加え、その中から\は1枚を抜き取る。
「その後、闇属性モンスター1体をゲームから除外する。私は手札の闇属性《享楽の堕天使》を除外」(手札6→5)
「準備はできたか?」
 まるで「待ってやっている」と言わんばかりのカイトが不敵に笑う。\はハッとしたあと、顔を顰めた。


 ───『まってカイト』
 涼やかな風が真っ白なレースカーテンを撫でる昼下がり。窓際のテーブルに並べたカードを挟んで、カイトは手札をテーブルに置いてこちらを覗き込んだ。
『えっと……この《リチュア・アビス》で、モンスターを手札にくわえる、の、わすれちゃった』
『じゃあ、戻そうか』
 手の中でデッキを広げて首を傾げていると、デッキのカードの向こうでカイトの腕が動くのに目を向ける。カイトはドローしたカードをデッキの上に戻して、そのターンに召喚していたモンスターカードやセットしていたカードも手札に戻した。律儀になまえのエンドフェイズ状態になるよう盤面を巻き戻し終えるのを眺めたあと、ふと顔を上げれば、優しく笑うカイトが待っている。
『……あ、』
『ゆっくりでいいぞ』
 肘をついて目を細めたカイトの視線を広げたデッキで遮り、火照った顔を隠す。すぐに何もなかったようなふりをしてカードを選んで抜き取ると、カットシャッフルのためにカイトへデッキを差し出した。
『準備できたか?』
 デッキを受け取るカイトの手が僅かに触れる。なまえは声にならない返事の代わりに、頷くことしかできなかった。───


「……ッ ナメないで!!! 私はもうカイトに教えてもらってた初心者なんかじゃない!!!」

 手札を持つ手がギリ、と軋む。顔を歪めた\を見つめたまま、カイトはじっと黙って佇んだ。

「私は手札から《堕天使マスティマ》の効果を発動! このカード以外の『堕天使カード』2枚を墓地へ捨てることで、《堕天使マスティマ》を特殊召喚する!!!」(手札5→2)

《堕天使マスティマ》(★7・闇・攻/ 2600)

「そして《堕天使マスティマ》もうひとつの効果を発動! ライフを1000支払い、墓地にある『堕天使』魔法・トラップカードの効果を適用し、その後そのカードをデッキに戻す。私が選ぶのは、トラップカード《堕天使降臨》!!! ───ッ あぐ、う……」

\(LP:4000→3000)

 ライフダメージに歯を食いしばる\の前に、墓地のトラップカードが開かれる。
「《堕天使降臨》、このカードは相手フィールドの表側表示モンスター1体を選び、そのモンスターと同じレベルを持つ《堕天使》モンスターを2体まで、自分の墓地から守備表示で特殊召喚する。私はカイトの《 銀河眼の光子竜ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン》を選択! ……そのレベルは、8!!!」
 
「(レベル8を2体……!)」
 思わず身構えたカイト。それを目にして\は歪に笑う。
「もう遅い!!! カイト、あなたもこのターンで沈める!!! 私は墓地のレベル8《堕天使ネルガル》《堕天使スペルビア》を特殊召喚!!!」

《堕天使ネルガル》(★8・闇・守/ 2500)
《堕天使スペルビア》(★8・闇・守/ 2400)

「(《スペルビア》の効果は特殊召喚に成功した時の発動。モンスター効果として適用した《堕天使降臨》のカードをデッキに戻す処理のために、ここでは《スペルビア》のもう1体蘇生できる効果は発動できない、……でも)」
 ここからは自分のライフをさらに削りながらのチキンレース。どこか覚悟の決まった目をした\に、カイトは嫌な予感を抱いた。
「私は《堕天使ネルガル》の効果を発動!!! ライフを1000支払い、墓地の堕天使魔法マジックトラップカードの効果を適用し、その後そのカードをデッキに戻す。……ッあああ!!!」

\(LP:3000→2000)

「……! ライフを、……お前」
「ふふふ、私は、墓地からトラップカード《背徳の堕天使》を発動! 自分フィールドから《堕天使ユコバック》をリリースして、カイトの《 銀河眼の光子竜ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン》を破壊する!!!」

「永続トラップ発動!!!《フォトン・チェンジ》!!!
 1ターンに1度、自分フィールドの表側表示の《フォトン》または《ギャラクシー》と名のつくモンスターを墓地へ送ることで、2つの効果から1つ選んで発動できる。だが墓地へ送ったモンスターが《 銀河眼の光子竜ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン》だった場合、その両方を選択できる。
 これで《背徳の堕天使》は効果対象を失い、不発に終わる」
「くっ……」

「俺は《 銀河眼ギャラクシーアイズ》を墓地へ送り、《フォトン・チェンジ》以外の《フォトン》カード1枚を手札に加える。(手札1→2)
 そしてさらに、墓地へ送ったモンスターと元々のモンスター名が異なる《フォトン》モンスター1体を、デッキから特殊召喚する。来い、《フォトン・レオ》!!!」

《フォトン・レオ》(★6・光・守/ 1100)

「《フォトン・レオ》のモンスター効果を発動!!! 相手の手札を全てデッキに戻してシャッフルし、相手はデッキに加えた枚数分、カードをドローする!」

「くっ……!!! 悪あがきを」
「(確かにこれは賭けだ。だがライフを大幅に削ってまでの\のプレイング、おそらくこのターンでケリがつけられるカードが手札に揃っていたと言うこと)」
 カイトの読みは当たっていた。手札に揃っていたカードは、このターンでカタをつけるのに必要なもの。 \にとって、たった2枚とはいえこれはかなりの痛手である。デッキの圧縮はしたが、また揃うとは限らない。
 \は手札2枚をデッキに戻し、2枚ドローした。
「……!」
 は、と目を見開いた\に、カイトが背中に汗を垂らす。……これは賭け。ドローさせることで、さらに状況を悪くする可能性もある。それも\のドローセンスが良いほど、カイトには自殺行為。

「(……)」
 きゅ、と唇を噤み、目を瞑って\は静かに手札を持ち直した。その様子にカイトが少し訝しむ。
 だがすぐに\はフィールドを見渡して冷静に考えを巡らせた。……いまドローしたカードについて考えてたら、きっと負けるから。

「(……私のフィールドにはレベル8が2体、《No.ナンバーズ》を召喚することはできる。だけど、カイトは《フォトン・チェンジ》の効果でデッキからカードを手札に加えた。間違いなく次のターン《 銀河眼ギャラクシーアイズ》をフィールドに戻してくる。もし迂闊にモンスターエクシーズを召喚して、カイトのターンに《 超銀河眼の光子竜ネオ・ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン》を出されたら、……)」
 一撃で敗れたWとVの光景が脳裏によぎる。
「(勝ち目はない)」

「バトル! 私は《堕天使マスティマ》で、《フォトン・レオ》を攻撃!!!」
 撃破された爆風がカイトのコートをはためかせる。だが守備モンスターの撃破に、ライフの変動はない。

「私はカードを1枚伏せて、ターンエンド」(手札2→1)




「カイトがどうして\にそんな事をしたのか、オレにはわからない。だけどこれだけは分かる。カイトは、アイツは今でも、\のことを、いや、きっとDr.フェイカーのことも諦めちゃいねぇんだ!」
「結局君とは分かり合えないようだ。残念だよ、一馬さんの息子である君が、最後までカイトの肩を持つとはな」
「当たり前だ! 言っただろ、カイトはオレの仲間だって!!!」
 尚も食らい付く遊馬に、Xが苛立ちを顔に出す。
『遊馬、これ以上彼に何を言っても無駄だ。君が彼に本気で何かを伝えたいのなら、このデュエルに勝つ以外方法はない』
「ああ、わかってるぜアストラル。……このデュエル、絶対負けらんねぇ!!!」
 しかし、遊馬のフィールドにモンスターはゼロ。伏せカードはあるが、手札も無い。
『この引きに全てが懸かっている……!!!』

「オレのターン、ドロー!!!」
 遊馬のデッキから伸びる一閃の先、遊馬とアストラルの最後のドロー。返した手の指にしっかりと挟まれた運命の1枚を目にして、遊馬はニッと笑った。
「……来たぜ、アストラル!!! オレはトラップカード《エクシーズ・リボーン》を発動!!! その効果で墓地の《希望皇ホープ》を特殊召喚! さらに! このトラップカードは《ホープ》のオーバーレイ・ユニットになる!!!」

No.ナンバーズ39 希望皇ホープ》
 (ランク4・光・ORUオーバーレイユニット1・攻/ 2500)

「そしてオレは《希望皇ホープ》で、オーバーレイ・ネットワークを再構築!」
「『カオス・エクシーズ・チェンジ!!! 現れよ、CNo.カオスナンバーズ39! 混沌を光に変える使者───』」

CNo.カオスナンバーズ39 希望皇ホープレイ》
 (ランク4・光・ORUオーバーレイユニット2・攻/ 2500)

「オレはオーバーレイ・ユニットを全て使い、《ホープレイ》の効果を発動! オーバーレイ・チャージ!!! そしてこのターン、《ダイソン・スフィア》の攻撃力を1000下げる!!!」

CNo.カオスナンバーズ39 希望皇ホープレイ》(攻/ 2500→3500)

No.ナンバーズ9 天蓋星ダイソン・スフィア》
 (ランク9・光・ORUオーバーレイユニット2・攻/ 2800→1800)


「無駄だ。私の《ダイソン・スフィア》の効果は無敵。オーバーレイ・ユニットがある限り、攻撃を無効にする効果がある」
「『それはどうかな?!』」
「……!!!」
『いくぞ、遊馬!!! 勝利の方程式は、全て揃った!!!』
「ああ!!! オレは《希望皇ホープレイ》で、《ダイソン・スフィア》に攻撃!!!」
「ならばオーバーレイ・ユニットをひとつ使い、私は《ダイソン・スフィア》の効果発動! 攻撃を無効にする!!!」

「この瞬間、俺は速攻魔法《フューチャー・ドライブ》を発動!!!」

 天上を覆っていた《ダイソン・スフィア》から光が消えていく。天に向かって飛び立っていく《希望皇ホープレイ》を見上げたまま、Xは目を見開くことしかできない。
「なんだと、私の《ダイソン・スフィア》が……?!」

『《フューチャー・ドライブ》は、自分フィールドの《希望皇》エクシーズモンスターを対象に発動できる』
「このカードの対象となったモンスターが攻撃するとき、相手モンスターの効果は無効化される!!!」

「私の、《ダイソン・スフィア》が……?!」
 《希望皇ホープレイ》の放った一撃が成層圏を穿ち、空を割る。《ダイソン・スフィア》の効果は無効化され、ゆっくりと墜落していった。その衝撃はXを襲う。
「ぐぅ……!!!」

X(LP:4000→2300)

「そして《フューチャー・ドライブ》のもうひとつの効果! 破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを、相手に与える!!!」
「!!!」
 ハッと見上げた先、遊馬はなんとも言えない顔でXを見つめていた。その目には見覚えがある。慈しみのある、真っ直ぐな目。「親子というものは、……」そう呟きかけた言葉を飲み込んで、Xは目を閉じた。


X(LP:2300→0)


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