大きな鈍い音を上げて扉を開くと、暗い部屋に一筋の光が道となって照らされる。その先のベッドで眠るVの方へ、Xはゆっくりと足を踏み入れた。だがあと少しでVの元へたどり着くと言うところで、その胸に紋章が戦慄く。
「───ッ」
 気力だけでVのベッドの横へ膝をつき、そのまま体をシーツの上へと預けると、Xは霞んだ目でVを見上げる。
「……一緒に、眠ろう」




カイト(手札 2/ LP:4000)
\(手札 0/ LP:800)

 宇宙に漂う船の上。\のフィールドには《堕天使スペルビア》が1体、手札はない。対してカイトには《 銀河眼ギャラクシーアイズ》と、永続トラップが1枚。
 それでも、負けるわけにはいかない。
 ───『私たち家族の行く末は見えている。たとえ復讐を果たしたとしても、私もWも、Vと同じ運命を辿るだろう』
「(X兄様……)」
 ───『私は兄として、君が望む男に、\…… 君をくれてやる日が来るのを、君が幸せになる未来を信じていた。……わかるね?』
「(わからない。わからないよ、……兄様、だって私は───)」


[ターン4:\]
「私のターン、ドロー!!!」(手札0→1)
 引いたカードを持った手を返せば、\は小さく口を噤む。

「……私はカードを1枚セットして、ターンエンド」(手札1→0)

「(何もできないのか? それとも……)」
 見極めようと鋭くなるカイトの目に、\はただ黙した。\の残りライフは800。次のターンで仕留めれば終わる。だが、まだ\は《No.ナンバーズ》を出していない。
「……」
「(いいや、次の俺のターンで決める!!!)」


[ターン5:カイト]
「俺のターン、ドロー!!!」(手札2→3)
 発動から2回目の自分スタンバイフェイズに、《フォトン・チェンジ》は墓地へ送られる」
 カイトのフィールドから永続トラップ《フォトン・チェンジ》が自壊する。

「俺は魔法マジックカード《ギャラクシー・サイクロン》を発動! 相手フィールドにセットされたカード1枚を破壊する」(手札3→2)

「くっ…… 対象となったトラップカード、《神属の堕天使》を発動! 私はフィールドの《堕天使スペルビア》を墓地へ送り、カイトの《 銀河眼ギャラクシーアイズ》の効果をターン終了時まで無効にし、その攻撃力分、ライフを回復する!」

\(LP:800→3800)

 《神族の堕天使》の効果により《 銀河眼の光子竜ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン》のモンスター効果はこのターン使えなくなった。だがこれで\のフィールドは完全にガラ空き。
 沈黙に見つめ合うカイトと\。これで攻撃力800以上のモンスターを召喚すれば、ダイレクト・アタックで\は敗北する。

「……俺のフィールドに《ギャラクシー》または《フォトン》モンスターがいる時、《銀河騎士ギャラクシー・ナイト》はリリース無しで手札から特殊召喚できる。(手札2→1)
 ただし、この方法で召喚した《銀河騎士ギャラクシー・ナイト》は、ターン終了時まで攻撃力・守備力は1000下がる。……だが、充分だ」

銀河騎士ギャラクシー・ナイト》(★8・光・攻/ 2800→1800)

 俯く\にカイトは手を握り締めた。
「\、……俺はもう、お前から魂を奪いたくない」
「……」
「サレンダーしろ。大人しく《No.ナンバーズ》を俺に渡せば、見逃してやる」
「……」
「───\、俺は……!」
「《No.ナンバーズ》は渡さないし、サレンダーもしない」
 顔を上げた\に、カイトが顔を顰める。
「カイトが勝って私を殺すか、私が勝ってカイトを殺すか。その覚悟もなく私と闘ったの?」
「……ッ お前は、本当に俺を殺すつもりでいたと言うのか」
「カイトには分からない。私の気持ちなんて。……カイトも私が嫌いでしょ? まだ、恨んでるでしょ」
「違う! ハルトの病気も、母さんが死んだのもお前のせいじゃない。あれはお前を追い詰めるためにMr.ハートランドが吹き込んだ嘘だ! お前に責任はない」
「今さら遅いよ、カイト。V兄様やWやVは、何があっても私の事を家族のままでいさせてくれた! だから私は家族のために、トロンの娘であるために最後まで闘わなきゃいけないのよ!」
 腕を振り下ろして激昂する\にカイトが戸惑いすら浮かべる。そんなカイトを指差して、\はさらに声を荒げた。
「あなたはハルトのために私を狩った!!! 地獄だと分かってて選んだ道なら、躊躇わず私をもう一度狩ってみろ、天城カイト!!!」




 溶岩を噴き上げる火口に、流れ続けるマグマの大河。灼熱のフィールドへ辿り着いた凌牙の前に、Wが待ち構えていた。
「ようやく捕まえたぜ、もう逃さねぇ!!!」
「フッ、人聞きが悪い」
 鼻で笑うWを遮るように、炎が一つ吹き上がる。
「逃げてた訳じゃないさ。そう見せかけて君を誘い込んだんだよ、この灼熱のマグマフィールドへ。この熱と炎の世界では、君は圧倒的に不利だからねぇ。なぜなら君のデッキは水属性、君のモンスターもここでは生きていけないからさ」
 不敵に笑い、紳士然とした物言いをするWに凌牙はデュエルディスクを構える。これ以上の問答は必要ない。

「「デュエル!!!」」

凌牙(手札 5/ LP:4000)
W(手札 5/ LP:4000)

[ターン1:凌牙]
「選考は貰った!!! オレのターン、ドロー!!!」(手札5→6)
 確かに灼熱のマグマフィールドは、一見不利。
「だが、オレを甘くみるな!!! 俺は速攻魔法《プレート・サルベージ》を発動! その効果により、2ターンのあいだフィールド魔法を無効にする」(手札6→5)
 フッと笑う凌牙にWが舌打ちをする。


『こっちでも、やっと始まったねぇ』
 Wと凌牙を見下ろすトロンに、Wはチラリと目を向ける。\と違ってすぐ気付くWに、トロンは目を細めた。
『流石は僕の息子、か…… ふふふ、まあいい。存分に闘うといいよ。僕が見届けてあげるから』


「オレは、《トライポッド・フィッシュ》を召喚!!!(手札5→4)
 そして、自分の場に魚族モンスターがいるとき、コイツを手札から特殊召喚できる! 来い《シャーク・サッカー》!」(手札4→3)

《トライポッド・フィッシュ》(★3・水・攻/ 300)
《シャーク・サッカー》(★3・水・攻/ 200)

「オレは、レベル3の《トライポッド・フィッシュ》と《シャーク・サッカー》でオーバーレイ! エクシーズ召喚!!! 現れろ───」

《潜航母艦エアロ・シャーク》
(ランク3・水・ORUオーバーレイユニット2・攻/ 1900)

「いきなりエクシーズ召喚か、……フッ」
「《エアロ・シャーク》のモンスター効果発動! オーバーレイ・ユニットをひとつ使い、手札1枚につき、相手に400ポイントのダメージを与える。オレの手札は3枚、よって、1200ポイントのダメージだ!!!」

W(LP:4000→2800)

「ぐぅッ……! あぁ!」
 先攻ターンから効果ダメージでライフを削られ、いきなり吹き飛ばされたWが背中から倒れる。

「オレはカードを2枚伏せて、ターンエンド」(手札3→1)



『フッ フフ、……初っ端からモンスターエクシーズを召喚して効果ダメージ、……やってくれるじゃねぇか、潰し甲斐があるってもんだぜ!!!』
 早々にファン向けの仮面を破られ、顔色を変えたWに観衆が騒めく。だがそんな事など気にも留めないWは、立ち上がってデッキに手を伸ばす。
「W様?」
 見たこともないWの顔にどよめく会場のモニターの映像が、突然途切れて砂嵐しか映さなくなった。スタッフがどうチャンネルを変えても、もうWと凌牙のマグマフィールド、そして\とカイトのスペースフィールドを映すことはない。

『悪いけど、カメラは壊させてもらったよ。ここから先は、どちらも見るに堪えないデュエルになるからね、ふふふ』



[ターン2:W]
「俺のターン、ドロー!!!(手札5→6)
 俺の場にモンスターがなくお前がモンスターエクシーズを召喚している場合、《ギミック・パペット-マグネドール》は、手札から特殊召喚できる!」(手札6→5)

《ギミック・パペット-マグネドール》
 (★8・闇・攻/ 1000)

「さらに俺は、《ギミック・パペット-ギア・チェンジャー》を召喚。このカードは、フィールドにいる他の《ギミック・パペット》と同じレベルにすることができる」(手札5→4)

《ギミック・パペット-ギア・チェンジャー》
 (★1→8・闇・攻/ 100)

「俺はレベル8の《ギミック・パペット-マグネドール》と《ギミック・パペット-ギア・チェンジャー》でオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!!! 現れろ、No.ナンバーズ15!!!」

No.ナンバーズ15 ギミック・パペット-ジャイアント・キラー》
 (ランク8・闇・ORUオーバーレイユニット2・攻/ 1500)

「お前が本気で来るなら、俺も受けて立ってやる。最高のファンサービスを見せてやろうじゃねえか!!!
 《ギミック・パペット-ジャイアント・キラー》のモンスター効果発動!!! フィールド上のモンスターエクシーズを破壊し、その攻撃力分のダメージを相手に与える! 受け取れ凌牙、まずは\を殴った分だ!!!」

「ぐあァ───ッ」

凌牙(LP:4000→2100)

「さらに俺は、《ギミック・パペット-ジャイアント・キラー》で、ダイレクト・アタック!!!」
「永続トラップ《バブル・ブリンガー》を、発動!!! このカードは、相手のモンスターのダイレクト・アタックを無効にする!」
 取り逃したことに舌打ちをするが、Wの優勢に変わりはない。
「フン、まあいい。俺がターンエンドすれば《プレート・サルベージ》の効果も消える。次からは灼熱地獄だ。……俺はこれでターンエンド」
 Wのエンド宣言と共に、フィールドは元のマグマフィールドへと様相を一変させる。
「強がりかどうかは、オレのデュエルを見てから言え!」


[ターン3:凌牙]
「オレのターン、ドロー!(手札1→2)
 オレは《ハンマー・シャーク》を召喚!」

《ハンマー・シャーク》(★4・水・攻/ 1700)

「さらに! 永続トラップ《バブル・ブリンガー》の効果発動! このカードを墓地に送り、代わりに、《トライポッド・フィッシュ》を墓地から特殊召喚! 特殊召喚に成功した時、《トライポッド・フィッシュ》のレベルはひとつ上がる」

《トライポッド・フィッシュ》(★3→4・水・攻/ 300)

「バカめ、フィールド魔法《マグマ・オーシャン》は、水属性モンスターを召喚した時、それを破壊する!!! 貴様のモンスターはここでは生きられないのさ」
「それはどうかな。永続トラップ、《逆境適用》!!!」
「なに……?!」
「このカードは、魔法マジックトラップによるモンスターの破壊を無効にする! これでオレのモンスターは、この灼熱地獄でも耐え抜ける!!!」
 凌牙の握り締めた右手、2本の指輪に肌が軋む。
「Wォ、……オレは、お前たち兄妹から受けた屈辱は忘れない。全国大会ではお前に罠に嵌められ、そして……ッ なんの関係もない妹まで、あの女に傷付けられた。絶対に、……許さねぇ!!! たとえどんな手を使っても、貴様を倒す!!! W、お前をここで潰し、\にオレが味わった苦しみを思い知らせてやるぜ!!!」
 凌牙の言葉にWが目を見開く。
「(……!!! まさか、\のやつ)」

「《バブル・ブリンガー》で特殊召喚したモンスターは、2体分のエクシーズ素材となる。オレは2体分となった《トライポッド・フィッシュ》と、《ハンマー・シャーク》でオーバーレイ! 3体のモンスターで、オーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!!! ───現れろ!!! No.ナンバーズ32!!!」


No.ナンバーズ32 海咬龍かいこうりゅうシャーク・ドレイク》
 (ランク4・水・ORUオーバーレイユニット3・攻/ 2800)


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