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―――遠征が終わった。次回は二週間後だ。
バスに乗り、宮城へと帰る。
「リエーフでかかったよなー!」
日向のはしゃぐ声を聞き流しながら、影山は前のほうに座っている由貴に目を向ける。
無理にこの遠征の手伝いに誘ってしまったが、彼女は大丈夫だっただろうか。音駒の人たちとは上手くやれただろうか。黒尾は掴めない性格だったし正直心配だった。彼女のことだ、なんだかんだ不遜な態度で先輩に接してしまったに違いない。中学の時、その性格が災いして先輩たちと仲違いしてしまったことを思い出す。
「そういえば影山の双子もこの遠征に参加してたんだよな」
山口の何気ない一言に日向がそうだったな!と反応する。
「でも全然話さなかったよなー」
「まああの子は音駒担当だったしね」
「山口と月島って影山さんと同じクラスだろ?どんな子なの?」
日向の何気ない質問につい耳をそばだててしまうのは仕方のないことだろう。
「うーん。俺もあんまり話したことないしなぁ…まあ見た目通りクールな人だよ」
「成績も優秀みたいだしね。新入生代表って確かあの子だったデショ」
月島の一言にそういえばそうだったなと思い返す。彼女は何故か影山の知らぬこともよく知っていて、昔から博識であった。
「王様と違って頭良いみたいだね、彼女」
「あ゛!?」
「そうなんだ!なあ影山、何であの子に勉強見てもらわなかったんだよー!」
不躾な日向の質問に影山は答えられなかった。不仲だから頼みづらかったんですだなんて言える筈もない。「なっ何でも良いだろ!?」適当にあしらえば日向から不満の声があがる。
「………ふーん」
なんとなく察したのか月島が含み笑いを見せる。思わずガンを飛ばせば「おお怖い」と彼はおどけた。
「日向、あんまりからかったら駄目みたいだよ。どうやら王様はあの子と仲悪いみたいだからさ」
「えっそうなの?」
何で何で?と訊く日向の目から顔を背ける。
「まっ王様の性格じゃあ女子から敬遠されて当たり前かもねー」
「……お前に言われたかねーよ」
「ツッキーはモテるぞ?」
「山口黙って」
「ごめんツッキー!…あ、モテるといえば、俺この前影山さんがコクられてるとこ見たよ」
唐突な報告に思わず山口をじろりと見やる。何故睨まれたのか分かっていない山口は困ったように笑う。その表情が、影山を更に苛つかせた。
「で、誰?誰にコクられたの?」
「ボゲ日向!そんなもん訊かなくていい!」
「興味ないんだったら王様だけ聞かなかったらいいデショ。あ、なんだったら僕のヘッドフォン貸してあげようか?」
「いらねーよ!!」
“で、誰?”“ほら五組のサッカー部の…”“あー!女子がカッコいいって言ってた!”“そーそー!”
影山のことなんて意に介さず、日向と山口は盛り上がる。影山は知らないのに、彼らだけ妹のそういう姿を知っているというのが気に入らない。それは独占欲なのか、それとも単に関わりが少ない彼らのほうが彼女を理解しているように見えるのが悔しいだけなのか。影山には分からない。
前方に視線を移す。相変わらず、妹の濡れたような黒髪がふらふらと揺れていた。


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