スイカを食べ終え、赤葦と残りの休憩時間をのんびり過ごしていると黒尾がニヤニヤしながらやって来た。
「ちょっとちょっと二人ともォ。なーにイイ雰囲気になってるの?」
オヤジみたいなからかい方だなと思いつつ、由貴は黒尾にスイカは食べたのかと訊ねる。二つ食べたと返ってきた。
「つかお前ら俺のセリフ無視?」
「アホに付き合う義理はありません」
「そうっスね」
「………後輩が冷たい」
しかもアホって…アホって…。だなんて呟く黒尾。今まで遠慮していた由貴だったが、少なくとも彼に関しては遠慮することをやめた。木兎や彼のように謙虚になるだけ無駄な人間がいることを悟ったからである。
「影山さん」
ここで黒尾越しに声をかけてきたのは澤村であった。隣には菅原もいる。
「あら、キャプテンどしたの」
「黒尾があんまりにもからかってるから心配で来たんだよ」
黒尾のおどけた体裁も軽やかに避ける澤村。本当に高校三年生かと驚く。由貴が出会った高校生の中で一番大人っぽい。
「からかってねーよ。俺は第三者の意見を二人に素直に述べたまでだよ」
「それで月島怒らしたって言ってたのはどこのどいつだべ」
「そうそう。……君も影山さんと仲良くしてくれてるみたいだな。梟谷のセッターの…」
「赤葦です」
別に仲良くしてもらっているつもりなどないが、それを言うとややこしくなりそうなのでここは沈黙を貫くことにした。(にしてもあんたは私の親か)主将とはいえ後輩の行動に目を光らせすぎではないだろうか。
「影山さんずーっと音駒や梟谷の人らといるから俺らと話す機会ないべ。な、今ちょっと話そうよ」
「あーダメダメ。残念ながらできませーん」
菅原の厚意をへし折ったのは黒尾であった。
「非常に残念なことに由貴チャンは赤葦クンとイチャコラしてるんでまたの機会をお待ちしてまーす」
「「えっ」」
「………またこの人は話を拗れさせて…」
瞠目する澤村と菅原に、あーあと溜息をつく。困っているであろう赤葦のほうを見てみれば、昨夜の木兎に妙なことを言われた際のような当惑した表情で視線を下げていた。―――まただ。
「違います。今のは馬鹿な黒尾さんの妄想なんで気にしないでください」
「いやー由貴チャン随分遠慮がなくなったな。赤葦から俺に乗り換える?」
「冗談は顔だけにしてくれませんか」
「コノヤロウイケメンニムカッテ」
ぎりぎりと歯軋りする黒尾を無視して澤村たちに本当に何の関係も持っていないことを告げる。
「………ただの先輩後輩の関係なんで」
そう述べた時に、視界の端で赤葦が僅かに身じろいだ気がしたが見なかったふりをした。


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