彼女がそう望むならと何でもした。“俺”は決して“俺”の独り善がりな願いを彼女に押し付けはしなかった。彼女の視線の先にいるのが“俺”ではないと知っていたから。彼女が彼と男女の関係でなくとも、“俺”には彼を超えることはできなかった。そのくらい彼と彼女の信頼は絶対的だったのだ。
ならばせめてと。“俺”ができる限りのことで彼女に尽くそう。彼女がそう望むのならそうなるように手を貸そう。それが“補佐官”として唯一彼女に必要とされるすべだった。
そう、思っていた。

『は?馬鹿じゃねーのお前』

以前、とある奴に言われた。

『お前だって“補佐官”とか“兵士”の前に男だろ?惚れた女の横に自分以外の男がいたらそりゃ嫉妬だってする。別におかしいことでもなんでもねーよ。だから、気に食わねえことがあったら素直に言えばいいじゃねーか。何で我慢するんだよ』

その通りだった。まさかあんな奴にこんな当たり前のことを言われるとは思わなかった。その時つい笑ってしまった。
――――“俺”は、彼女に死んでほしくない。怪我だってしてほしくない。本音を言えば、兵士だって危険だから辞めてほしい。
だがまあ、兵士であるのが彼女らしさの一つであるから、流石にそこまで我儘は言わない。
でも――絶対に死のうとしないでほしい。

「生きろッ!!!」

その日、“俺”は初めて彼女の意思に背いた。彼女を庇った。結果、右腕がなくなった。
でも彼女の命に比べれば安いものだった。
“俺”は、“俺”の全てを投げ打ってでも彼女を助けたかったのだから。


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