36:きっと出会う前から貴方に恋をしていた

あの日見た真っ赤な夕焼けを思い出す。
あの日貴方を感じてそれと混じり合う事を望んだのかもしれない。

「俺そういうのあんま分かんなかったんだけど多分名前が好きだ。
なんか他の奴らとは違うっつーか、守りたいって思うし泣いてたら困るから笑ってたら嬉しいし、でもその笑ってる時も俺といる時が良い。
困るけど泣いてたら抱き締めてやりたいって思うしそうしたい。
泣いてなくても抱き締めたいって思うんだ」

十代君の飾らない真っ直ぐな言葉が私の中にどんどん暖かな空気を送りこんだ。

「俺じゃダメか?名前は俺の事嫌い?」

私の顔を覗きこむようにしてそう問いかける十代君。
私は気づけば当初決めていた物語の主役達に関わらないという決意に反するように私は自ら動いていた。

大好きだったアニメの主人公が今目の前にいて私を好きだと言う。
当たり前だが本来のあらすじにはない展開。

仮に恋人同士になったとしてもそれは限られた時間だけだろう。

今私を好きだと言う彼は時が来れば自分の元からいなくなってしまう。

だって彼には魂を共有する程に大切な人が現れるのだから。

もしかしからいなくなるのは私かもしれない。

学生時代の恋なんてそんなものでいいのかもしれない。

大人になったって別れも沢山あるのだから。

それでもそれを辛く思う程に彼に、十代に惹かれてしまった。

「私ね、きっと貴方に恋をしているわ、今も····昔も、これからもずっと。
だからね、貴方を手に入れてそれを失う未来が怖いの」

私よりもずっと年下の子供に何を言っているんだろうか。
どうしてこんなに甘えてしまうのだろうか。
身体と共に心まで幼くなってしまったのだろうか。
これでは慰めてとすがっているも同然だ。

「俺は先の事とかわかんねぇ。
でも今名前を手に入れなきゃ絶対後悔する。
それだけは分かってるんだ。
だからこれは俺の我儘だ。
お願いだから、俺の為に俺の事好きでいてくれないか?」

ああ、なんて優しい人なんだろう。
なんて残酷な人なのだろうか。
私に言い訳を作ってくれた。
彼はアニメの主人公だった頃よりずっと大人に見える。

だめだと分かっていたのに。

それでも、私はこの甘い誘惑に抗う事が出来なかった。

とっくに彼らは、彼は私の中でアニメのキャラクターなどではなくなっていた。


そして私はその甘い誘惑に首を縦に振った。

この日の私を恨む日が来ようとも今は彼を好きだと伝えたい。


「なぁ、俺の名前呼んでくれよ」


「····十代君····大好きよ」


太陽は今夜も私を照らした