35:何度貴方と同じ景色を見られるだろう

思えばそれはいつも夜だった。
月明かりが照らすその時間、太陽はいつだってそこにいた。

「やっぱり会えた」

「···私も何となく遊城君に会えるかなって思ってた」

会えると思っていた、会いたいと思って私は外に出た。
私はそれを認めるしかないのだ。
どんなに否定したところで私が彼に羨望の眼差しを向けていることにもう嘘はつけそうにない。

「なんつーか、終わってみれば早かったな」

「···それだけ大変だったんだよ、遊城君達は·····お疲れさま」

普通の高校生が命を削ってここまで傷つき合うことはあり得ない。
それがまだ終わっていないことを私は知っている。

これからも何度も何度も十代君、みんなは傷付いていく。
それは彼らの成長に必要なことであったのかもしれない、だがそれしか道がなかったのだろうか?
もっと緩やかで穏やかに、そうあって良かったのかもしれない、そう考える。

だが十代君は違う、きっとここで経験する全てが彼にとって意味のある事なのだろう。

だからこそ十代君だけでなく彼と関わる全ての人達にとってもそれは成長過程において必要な道だったのだろう。

「名前だってそうだろう、大変だったろ」

「·····わ、私なんて、なにも····」

私は結局のところ見ていただけだった。
私がでしゃばったところで結果は何も変わらなかった。
それを変えられたところでそれが良い方向に動いたかなんてわからない、だからこそとそれに安堵してしまうような安易な事を考えてしまう人間だ。

「何もしてないなんて言うなよ、少なくとも俺は今こうして名前と話が出来る事が嬉しいんだよ」

「···どう、して····」

私は都合の良い夢を見ているのかもしれない。
十代君は無条件で私に優しい。
形は人によって違えど彼は誰にだって優しい人だ。
だからこそ私にだって優しく出来る、そう分かっているのに、私は。

「なぁ、···今名前が泣いてる理由ってなんだ?」

「····え?」

目の前が眩んだ、十代君の顔がよく見えない。
瞬きをして落ちたそれを見て自覚した。
私が今みっともなく涙を流していることを。

「····なぁ、泣いてるのって俺のせい?」

「え、ち、違う」

十代君は私のすぐ側まで近付いた。
私はそんな彼から距離をとろうと後ろに一歩下がった。
すると彼ももう一歩私に近付いた。

「俺が名前を泣かせたってんなら俺の手で泣き止ませたい」

「違うの、本当に、私が勝手に···」

言い終える前に私はそれ以上言葉を発することが出来なくなってしまった。
それは彼に抱きしめられた事によって。



「俺、名前が好きだ」