いよいよ最後の最後、丸藤君と十代君のデュエルの日だ。
十代君は普段より緊張しているらしく空気が張り詰めていたので私からの接触は控えた。
出来る限り彼の視界に入らないように過ごし本番を迎えた。
デュエル場に向かえば明日香ちゃんに声をかけられ彼女達と二人のデュエルを見守ることになった。
「名前さんはどちらを応援されてるんですか?」
明日香ちゃんに不意にそう問いかけられた私は間の抜けたような声を出してしまう。
「えっと···それは勿論、両方、かな?」
「ふふっ、気を使う必要なんてありませんよ、愛とは何よりも美しく尊い。
貴方は十代君を応援していいのです」
私のその言葉に後ろにいた吹雪君がそう言った。
明日香ちゃんはその言葉に呆れたように笑いながらも同意した。
「兄さんの言い種はともかく、私もそれでいいと思いますよ」
二人がそう言うと翔君と三沢君は大きくうんうんと首を縦に振る。
万丈目君は呆れた顔で趣味が悪い女だと言った。
「え?あ、あの、え、皆、十代君に···聞いたの?」
「聞かなくてもわかるっすよ!こう二人を纏う空気がもう桃色なんすから!」
当然のようにそう答えた翔君の言葉に一気に体温が上昇した。
言わずとも人から察っしられる程自分が浮かれていただなんて。
「名前さんもそんな顔をなさるんですね」
明日香ちゃんは内心あわてふためく私を見て綺麗に笑う。
それを見て私は彼女が十代君に対して持ち合わせていた感情を思い出す。
その途端生まれた感情は焦りか嫉妬、それとも罪悪感だろうか。
何れにしてもその全ての感情は彼女にとって失礼極まりない事だ。
「名前さん、私名前さんの事好きですよ」
「えっ」
明日香ちゃんはそんな私にどこまでも優しい笑顔を浮かべてそう言った。
私は彼女の言葉にどう反応していいか分からず戸惑っていれば再び吹雪君が私に話しかけた。
「久々に会った明日香は前より楽しそうに見えたよ。
それはデュエルが強い十代君達との出会いだけが原因じゃない、貴方をお姉さんのように慕っているんですよ」
「ちょ、ちょっと兄さんは余計なことを言わないで!」
吹雪君の言葉に明日香ちゃんは顔を赤らめる。
それは彼の言っていることが本当だとものがたっていた。
明日香ちゃんはそれを誤魔化すように一つ咳払いをして私に向き合った。
「とにかく!私は名前さんの事が好きですから、私は名前さんの味方です、だから妙な心配は不要です」
自分よりずっと若い彼女にこんな事を言わせるだなんてなんとも恥ずかしい話だ。
けれども私は明日香ちゃんのその言葉がとても嬉しかった。
それでも私が存在することで彼女の十代君への気持ちをねじ曲げてしまったことには違いない。
けれど、それでも私は明日香ちゃんのその言葉が嬉しかった。
「私も明日香ちゃんみたいな可愛い妹、いたらいいなって思うから嬉しいよ」
つい最近ややこしいからという理由で明日香ちゃんと吹雪君から名前で呼んでほしいと頼まれた。
十代君と恋人同士になってからというもの自然と他の生徒との距離も縮まったように感じる。
明日香ちゃんは年相応の笑顔を返してくれた。
皆が私がここにいてもいいと言っているように思えた
それがどうしようもなく幸せだ