42:ほんの少しのさよならですら

「名前、····俺····、いや、悪い、なんでもない」

「····そっか」

エド君との2度目のデュエル、それは十代君に大きなダメージを与えた。
鮎川先生は十代君がカードが見えなくなった原因さデュエルに負けた事によるショックが引き起こした精神的なものだろうと診断した。

結果を知っているデュエルを見守る事しか出来ない事はやはり心が痛かった。
それでもこの世界で意味のないデュエルはない、全てが彼らにとって必要なものだ。
だから私はそれを見守ると決めた。

それでも

「悪い、俺もう行く」

「····ごめん、少しだけ待って」

それを私に話してくれないんじゃないかってことは分かっていた。
私がこれ以上望めないことは分かっていた。
それでも私は我儘な人間だから少しだけ欲を出した。

「ごめんね、十代君」

十代君の背中にほんの数秒、抱きついた。
私からそんなことをしたのは初めての事だった。
だから十代君はそれに驚いて振り返った、けれどきっと今彼が私を抱きしめ返してくれるとは思わなかった。
それを身を持って実感するのが怖かった。

だから私はすぐに彼から距離をとった。

「ありがとう、···十代、君」

彼が帰ってくることを知っている。
それでも悲しかった。
この出来事がなければ十代君がネオス達と出会えない。
分かっている。
それでも

「おやすみなさい、十代君」


一時でも貴方が私の前から消えてしまう、それが辛くて辛くて十代君の顔を見る事が出来なかった

どこにも行かないで、それを口に出せたらどんなに幸せだろうか