44:向けられた熱い信頼

剣山君とのデュエルの後翔君はエネルギーを使い果たし眠ってしまった。
目の下にはくっきりと隈が現れていた。
彼は身体も小柄だ、きっと体力も人より少ないだろう。

「····あれ?····僕は一体?」

「おはよう、少しは体調良くなった?」

翔君が目を覚ました。
久しぶりにぐっすり眠ったおかげか彼の顔色は随分良くなっていた事に一先ず安堵のため息を洩らした。

「あ、名字さん!あ····そっか、僕剣山君とのデュエル中····」

「うん、疲れてたんだよ、何か食べられそう?」

翔君はなんとも困った表情で口を閉じてしまった。
だがそんな中で静かな部屋に彼の胃袋が空腹を訴えるように鳴いた。

「何か胃に優しいもの用意するね」

翔君は恥ずかしそうに頷いた。
空腹を自覚出来ているようなら安心だ。



「アニキは名前さんの手料理食べた事があるんすか?」

「ううん、まだ作ったことないけど」

「だとしたらこれアニキにバレたら怒られそうっすね!」

手料理と言っても私が翔君に出したものはただのかき玉うどんだ。
手料理だなんて呼べる程の代物ではないのだけれど。

あくまでも帰ってくることを前提に話す翔君に私にはない強さを感じた。

翔君はそれを完食することが出来た。
たっぷり眠ったこともあり顔色は昨日よりマシになったように見える。

「アニキ、絶対帰ってくるっす」

翔君は誰に言うでもなく自分に言い聞かせるようにもう一度そう言った。
私はただそれに頷くことしか出来なかった。
励ましてほしかったのかもしれない。

必ず帰ってくる、来ないなら連れ戻してやると言わんばかりに眠ることも食べることも忘れて走った彼に

十代君に向けられた強い信頼の気持ちが私には眩しかった