外れかかった歯車

きっかけは十代の部屋で起こったことだった。
学校帰りにそのまま十代の部屋に来た名前が今日の授業で使った体操服の入った袋を忘れていったのだ。

最初何か分からなかった十代は中身を確認する為にそれから中身を取り出した。

「あ、名前の体操服じゃん」

それを確認した後名前に知らせる為にメールを出そうとするもなぜかその指が止まった。

微かに香る名前の匂いと汗が混じりあったそれにぞくりとするものを感じた。
それを嗅ぐと十代のソレは熱を帯び硬くなったのだった。

「いや、そんなの駄目、だよな」

そう思いつつも十代は自身のソレに手を当てた。
駄目だと思いつつも今度はその服を顔に押し当て思い切りその香りを吸い込んだ。
そしてその行為に対する罪悪感は消し飛びそのまま自慰行為に及んだ。
そうしてそのままそれに欲をぶちまけた。
それは今までに経験したことが無いほどの耽美な時間となった。
射精後の心地のよい気だるさを感じたまま床に転がった。
その時には名前に対する罪悪感が消えていた。




「十代のそういう所本当にだいすき」

デュエル馬鹿と呆れられる自分を本当に好きでいてくれる名前。

「十代ってゴールデンレトリバーっぽいよね。私大型犬ほんと好きなんだ」

そう言ってぎゅうぎゅう自分を抱き締める名前に十代は満更ではなかった。

しかし同時に好きな女性に真っ直ぐな好意をぶつけられ、密着されることは十代にとっては嬉しくも苦しくもあった。

その柔な身体に直接触れてみたいと考えたことは少なくない。

しかしそうする事を名前は望んでいるのだろうか。
子供のような純粋な自分を求めているのではないか。

名前を失う事を恐れる十代は関係を進める事を躊躇する。

(何よりも名前を失うことになる未来だけは食い止めたい)

こんなもので射精してしまえる程十代は名前を求めていた。
しかしその躊躇が十代の思想を歪めてしまった。

(そうか、こうすればきっと名前を傷付けることなく名前が抱ける)

名前に起こった事件は十代のその歪んだ愛が原因だった。
暴走せぬようにと理由を付け行う行為はとっくに逸脱した行動であるにも関わらず十代はそれに気が付かない。

(名前、名前、名前)

何度も何度も名前の名前を呼び頭の中で数えきれない程名前を汚した。

そして名前自身の前ではいつも通りの自分を演じ沢山の愛情を送った。

十代の心は潤っていた。

(俺、お前の為だったらなんだって耐えられるよ。
だからこれだけは許してくれ)

心の底から愛している、溺愛しているか故に名前の本心に十代は気がつかない。

それと同様に名前も十代の本心に気がつかなかった。

そしてそれは歪な状態のまま、歪んでおかしな回転をしながら歯車は周り続けた。
ほんの少し手をくわえればスムーズに回る歯車を正せる日はいつになるのだろうか。



(ああ、水泳の授業が始まれば今度は下着が手にはいるのか)