よくも悪くも彼は純粋で真面目で強い。
だからこそこういう時利用されてしまうのかもしれない。
そしてそれはまた明日香ちゃんも同じなのではないだろうか。
「万丈目の奴やっぱり強かったけど、なーんか変だったよな。
明日香もいつもよりおっかねぇ雰囲気になっちまったし」
十代君は彼らの変化をさほど気にしていないように見える。
彼にとってはたとえ少しおかしなところがあっても万丈目君は万丈目、明日香ちゃんは明日香ちゃんなのだろう。
十代君はよく言えばおおらか、悪く言えば無頓着なところもある。
「名前も怒ると明日香みたいになんのかな」
「どうだろうね。
もしかしたら明日香ちゃんなんて比べ物にならない程ずっと怖いかもよ」
「それ、おっかねぇけど見てみたい気もするな!」
十代君はそう言ってけらけらと笑う。
彼にとって私は私。
きっとどんな私も受け入れてくれる、なんてそれは彼に期待を持ちすぎているのだろうか。
あまりこちらが勝手にイメージした人間性を彼に押し付けるのは良くないと分かっているのに時々そんな事を考えてしまう。
それ程彼が身近だと錯覚させられてしまうのだ。
でも私は知っている。
彼が全てをさらけ出しているようでそれだけではないことを。
けれど私はそれを知りながら何も出来ない。
「でも名前がおっかないほど怒るなんて多分俺がなんか良くないことした時だと思うからさ、そん時は遠慮なんてしなくていいからな。
俺バカだから全部言ってもらわないと気付けないんだ。
それが分からないまますれ違っちまうのとか、なんか寂しいじゃん?」
「···うん、なんでも言うね、ありがとう」
十代君がバカだなんて思ったことはない。
言っていることはとても大人だ。
それでも大人になればなる程言いたい事を我慢してそしてそのまま疎遠になってしまう機会は増えていく。
それは別に悪いことではない。
全ての人と分かりあえるなんて理想論だ。
それでも時には大好きな人とすれ違い、そのまま疎遠になってしまうこともある。
それもきっと100%間違いではない時だってあるだろう。
だけどやはり少し寂しい。
「あ、そういや翔に聞いたけどあいつが倒れちまった時名前が飯作ってやったんだって?」
「うん、···まぁ作るって程のものじゃないけどね」
翔君本人から聞いたのだろうか。
それを口にした十代君が少し不貞腐れた顔をしていたことを少し嬉しく感じてしまった。
翔君の予測は当たっていたらしい。
「俺もなんか食べたい。
俺にもなんか作ってくれよ」
「うん、わかった。それじゃあ明日お昼用意するね」
素直にお願いしてくれる十代君は可愛い。
私もそんな彼を見習いたい。
私の了承を得てまた喜ぶ十代君を見て彼が帰ってきたのだと改めて実感した。
明日は何を作ろうか