「じゃあ精霊がいたんだね」
「ああ、立派なカエルの王子様がついてた。
いつかはあいつにも見えると思うぜ」
約束通り彼の昼食を作ってひっそりと二人で食べていた。
私達は先程行われたデュエルについて少し話をした。
この世界にはどのくらいカードの精霊が見える人がいるんだろう。
十代君は精霊だけではなく大徳寺先生も見える。
この世界では所謂霊感というものを持つ人達にも精霊が見えているのかもしれない。
「万丈目君にも見えているんだよね」
「ああ、あいつ部屋に凄い数の精霊を住まわせてたんだ。
今はあいつ変になっちまっててどうなってるのかわかんねぇねど、でも万丈目は悪い奴じゃないから、まぁ大丈夫だと思う」
奇行とも言える行動を取るようになった万丈目君も十代君にとっては万丈目君は万丈目君でしかない。
それは私や翔君、剣山くん、白の結社に洗脳されていない人間にとって救いだ。
学園のヒーローが動じずに普段通りに過ごしていることにホッとするのだ。
「あー美味かった!名前って料理上手いんだな!
また作ってくれよ!」
私はまだ半分程食べたところだったが十代君は既に食べ終えてしまった。
レッド寮で普段から成長期には足りないのではないのかと心配になる量の食事しかとれていないことを知っていたので量は私の倍以上入るお弁当箱に詰めたにも関わらずだ。
「茶色いお弁当になっちゃって、なんかごめんね」
冷蔵庫の中身があまり充実していなかったのもあるが若い男の子であればやはりお肉が食べたいだろうとの考えからなんとも地味な色合いのお弁当になってしまった。
初めて恋人の為に作ったものとしてはなんとも色気がないお弁当だ。
「美味かったから問題ないしそもそもそんなの気にしたことないぜ。
まぁ結局俺だけじゃなく翔や剣山にまでやったのは複雑だけどな」
「···十代君達いつも一緒にいるから十代君にだけ用意するのはちょっと居たたまれなかった、って感じだから勘弁して?」
十代君は案外と嫉妬する人だということを最近知った。
人は人、という考え方の彼がそんな風に言うのは私が特別だと言われているようでなんだか嬉しく感じてしまう。
「じゃあ夜部屋に行ったら俺の為だけに作ってくれんの?」
「···えっと···それは違う意味で問題になっちゃうから、ご、ごめんね?」
十代君にはきっと深い意味はないのだろう。
ただ私の料理を一人占めしたかっただけだと思う。
けれども他人の目から見れば夜、女性の部屋に上がり込んでいる異性というものはどうしてもそういう想像をされてしまう。
一部の人に私達の関係は知れている。
それは十代君の仲間達であるからこそまだ広がっていないがそうでない生徒にそれを知られてしまえば娯楽の限られた空間で過ごす生徒達にとっては格好の娯楽だ、十代君にとって不名誉な噂が一気に広がってしまうだろう。
「王子様、なんて柄じゃねぇけど俺は名前の王子様にだったらなりたいって思ってるから。
いつか俺だけの為に作ってくれよな!」
「えっ···」
十代君はどういう意味でその言葉を口にしたのだろうか。
それはまるで未来を約束するような、その言葉に速くなる心音。
「約束、な?」
十代君は私の前で小指を立てた、私は同じように小指を立ててそれを絡ませた。
心臓の音は大きくなる一方だ。
「へへっ···約束、な!」
私はその約束を守れないかもしれない。
十代君はその約束わ守らないかもしれない。
それでも私はきっとこの日した指切りを忘れない