「大変だったんだね···取り敢えず無事帰ってこられて良かった」
「でも遊戯さんのじいちゃんにも会えたし楽しいこともいっぱいあったぜ」
修学旅行から帰ってきた十代君は真っ直ぐに私の元に会いにきてくれた。
因みに私は同行していない、留守番組だ。
彼らのいない学園は至って平穏だった。
そして比較的のんびりとした空気の中で時間に余裕もあったので普段はあまり話せていない先生方ともお話をさせていただいた。
皆個性は強いが良い先生ばかりだった。
この修学旅行で十代君達がどれ程大変な思いをしていたか知っている私にとっては楽しくもあった、と言ってしまう十代君に尊敬の念を抱いてしまう。
「でも名前がいないの、やっぱなんか物足りないって言うか、うん、寂しいなって思った」
「···私をほっぽって行っちゃった前科のある人がよく言うね」
柄にもなく十代君が嬉しい事を言ってしまうものだから照れ隠しでなんとも可愛げのない言葉が口から出てしまった。
私の皮肉のような言葉に十代君はもうしないから許してくれよ、なんて。
「冗談だよ、意地悪してごめんね」
「名前が冗談とか言うイメージないから全部本気に聞こえちまうんだよな」
十代君は安心したような顔で私を抱きしめた。
以前よりその行為に十代君の躊躇いが感じられない。
私も躊躇せずに彼の背中に手を回す。
華奢に見える彼だがその背中も胸も触れてみると彼が男の人なのだと私に改めて自覚させた。
「いつかまた名前と一緒に行きたい」
「···うん、私も十代君と一緒に行きたいな」
やりたいことが増えていく
行きたいところが増えていく
伝えたい言葉も
それはきっとこれからもっと増えていくだろう
それが幸せなものか辛いものとなるか
私達はその答えをまだ知らない