神田君と十代君のデュエルが終わると明日香ちゃんは彼に興味を無くしてその場を後にした。
表情はやはりどこか冷たくて私は少し寂しさを感じた。
彼女はとても優しい女性だから、それを知っているからこそあの表情は堪えた。
「明日香先輩、人が変わってしまったドン」
私の隣で十代君達のデュエルを見ていた剣山君が同じように明日香ちゃんを見てそう言った。
彼はアニメで得た印象通り素直な良い子だった。
十代から何を聞いているのかはわからないが初めて挨拶を交わした日にはとても友好的に私に接してくれた。
「···きっといつまでも続く事じゃないと思うよ。
彼女も万丈目君も、本当はとても優しくて明るい子達だから」
「きっとアニキがなんとかしてくれるドン!」
それを解決するのは十代君だけでなく貴方も随分活躍してくれるのだけれど、と内心考えた。
だがそれは口に出してはいけない言葉。
絶対に歪ませてはいけない道標。
「名前さんはアニキ達の言ってる通り優しい人ザウルス」
剣山君の笑顔はとても可愛らしい。
身体付きはかなりがっしりとしているがその表情はやはりまだ彼が15歳なのだと語っていた。
「剣山君は私なんかよりずっと優しいよ。
十代君を、皆を助けてあげてね。
剣山君でしか出来ない事が沢山あると思うから」
「任せるドン!」
剣山君は自信に溢れた表情で胸を張った。
彼の前向きでポジティブな所を見習いたい、そう強く思った。
「二人でな〜に話してんだよ」
剣山君と話していたから気付かなかった。
十代君が目の前まで来ていた事に。
剣山君は慌てて誤解を解こうと口を開く。
「十代のアニキがどれだけ素晴らしい人かということを話し合っていたところだドン!」
「なんだそれ、名前、ほんとか?」
十代君は剣山君をじとりと見て今度は私にそう訊ねた。
私は少し歪になってしまっただろうが笑顔を作りその問いに首を縦に振った。
「まぁ別にそれならいいけど、名前も褒めるなら俺に直接言ってくれよな!」
怪訝な顔をしながらも十代君はそう言って私に顔を近付けた。
驚いて彼を押し返せば不機嫌な反応をされてしまった。
「···こ、ここは人がいるから」
「なら部屋に行ってもいいのか?」
十代君の言葉に剣山君は顔を赤らめた。
これは勘違いさせてしまっている。
「女性の部屋に簡単に上げられるわけないでしょう?」
遠回しに日常的に部屋に上げているわけではない、そう匂わせるような言葉を口にすれば隣で剣山君がほっとした顔をしたので私も胸を撫でおろした。
それは嘘でなければ真実でもない。
けれど私が頻繁に彼を招き入れているような誤解を生むわけにはいかないのだ。
彼と今後も良い関係でいる為には。
「アニキがそんな風に嫉妬するなんて意外だったドン」
「(私もそう思う)」
十代君は剣山君の言葉に首を傾げる。
基本的に鋭いのにどこか鈍感だ。
でも私はそんな彼が大好きだ。