「貴方は一体何者だ」
夜シャワーを浴び小さなベランダに出て涼んでいたその時、私は声をかけられた。
「さい、お、う····君」
ここは4階だ。
部屋の鍵は勿論掛けてある。
それでも彼は突然私の目の前に現れた。
なんの気配も、音も無く。
「貴方の未来が見えない、この私にすら」
彼の目は全てを見透していた。
だがそんな彼にも私の未来が見えないと言う。
それは私に未来が無いということなのか、それとも·····
「見えない貴方にこそ託すべきなのかもしれない。
だがそれは違うと私の心が訴えている」
おそらく彼は本来の斎王琢磨なのだということに気が付いた。
十代君とエドに鍵を託す、本来の優しい人。
「···私は何かを託される程の器ではありません。
だから貴方の選択はきっと正しい」
何か一つ違えばどんなことが起こるか分からない。
今から起こる事は一寸の狂いもあってはならない、そんな事態だ。
「これは私の経験による私の直感のようなものでしかない。
だがきっと貴方はこの世界を変える、そんな特別な存在になるでしょう」
斎王君の言ったそれは良い意味なのか悪い意味なのか。
その意味合いで随分結果は変わる。
その意味合いで私は振る舞い方を変える必要がある。
「貴方はきっと誰かの為に生きている。
貴方にはなにか大きな力のようなものを感じる。
だがそれを貴方自身の為に使っている様子はまるでない」
私が持つ大きな力、もしそんなものが存在するのだとしたらそれは私が次元を越えられた事、ここに存在していることそのものに対してではないだろうか。
「買いかぶりすぎですよ、そんなの」
「私には力が足りない。
だから今は力を持つ、無限の可能性を持つ彼らに希望を託す他ありません」
今から十代君達の元に行くのだろうか。
彼は私の目の前からすーっと姿を消していく。
「人は誰しも役目を持っています。
貴方にもきっと、それから逃げ出してはいけません。
貴方には、貴方にとってもきっとそれは、とても大切な事なのですから」
そう言って彼は完全に私の前から姿を消した。
私は部屋に戻ってベッドに横になる。
私の役目とはなんだろう。
それについて考える事は何度目だろうか。
一度目は考える事を放棄して距離を取った。
二度目は堪えられず自ら物語に足を踏み込んだ。
三度目はこの世界の住人の優しさに甘えた。
そしてこの世界で生きたいと願った。
そんな私が成すべき事、それは····