53:情熱的なその想い

「(“アニメだから”なんてもう言えない)」

私は万丈目君とレイちゃんのデュエルを明日香ちゃんと見守っていた。

成長期だからだろうか、一年ぶりに見た彼女は随分成長して見える。
こんな物言いは年寄り臭いかもしれないのだが。

それにしたって好きな人に会う為に年齢や性別を偽ってまでここに来る、その行動力は尊敬に値する。

だが十代君と恋人関係になってしまった私としては複雑だ。
私とレイちゃん、あまりそういう傾向は見えないのだけれどアニメでは明らかに十代君に好意を持っていた明日香ちゃん。
比べるまでもなく彼女達の方が十代君とお似合いなのだ。

「···きっと私は嫌われたくないからこんなことを考えてしまうんだ」

十代君は勿論、それだけでは飽きたらず、そこには明日香ちゃんや万丈目君、三沢君や翔くん、クロノス先生、鮫島校長···名を上げればきりがない。
私はここに来て少しの絆で繋がった彼らを好きになってしまったのだ。
勿論ずっと前から彼らが好きだった。
手の届かぬ場所にいま彼らが今ずっと近くに。
思いは強くなってしまった。

「(···斎王君の言った言葉が本当であればいいのに)」

大好きな彼らに、尊敬する彼らに何か、何か···
自惚れだと笑われるだろうか。


「誰が名前さんを嫌うんですか?
···まさか十代が何か失礼なことでも?」

不安で頭の中がごちゃごちゃと騒がしくなっていたその時だった。
明日香ちゃんにそう声をかけられたのは。

「大丈夫ですよ、正直十代は学業の成績は良いとはとても言えないです。
でも愚かではないです。
だから名前さんを嫌うだなんて、そんな勿体無い事、絶対にしませんよ」

私にそう声をかけてくれた明日香ちゃんの横顔は驚く程綺麗でかっこよくて、こちらに視線を向けた明日香ちゃんと目が合った瞬間私は恥ずかしくて顔を伏せてしまった。

「(明日香ちゃんは本心で言ってくれている。
あれはそういう眼だ。
本来であればこんなに素敵な女の子が積み重ねていく筈だった想いを私が横取りしてしまったんだ)」

私が泣くのはおかしい。
そんな資格は無い、何より彼女に失礼だ。

「勿論十代だけではなく、前にも言いましたよね?私も名前さんの事が大好きな人間の一人です。
忘れないでくださいね」

とこまでも良い子な明日香ちゃん。
明日香ちゃんに私の真実を伝える日は来ないだろう。
それでも私は彼女が大好きで、それでもやっぱり私は十代君が大好きで。

「···ありがとう、私も、私もね···みんなのことが···」

私を見る優しい目、それを裏切りたくない。

もしも何かの意思が働き私がここに送り込まれたのだとしたら。

どうか、どうか私に出来る事がありますように。

私はきっと頑張ることが出来るから。