「十代はちっとも変わりませんね」
留学生として本日よりこの島にやってきたエメラルド色の瞳をした少年と早速一戦交えた十代君。
2人は半ば強制終了のような形で終えてしまった勝負の後もデュエル談議を繰り広げていた。
その場に観戦していた生徒はもういなくなっていた。
「そこは彼の素敵なところだと思うから...」
少し呆れたように呟かれた明日香ちゃんの言葉。
彼女のその言葉はけして十代君を本気で貶しているわけではないということは彼女の本質や声色からすぐに分かったのでそう返事をした。
本当に変わっていないなんてこと、あり得るのだろうか?という疑念を隅に追いやって。
未来を知っている私、それはただ表面的な情報でしかない。
今こうして私と同じように存在している彼の心の中まで全て知っているわけではない。
彼は今現在本当に変わっていないのだろうか?
「名前さんって学生の頃はどうだったんですか?今とは違いましたか?」
明日香ちゃんの問いに少し記憶を辿ってみた。
私が高校生の頃はどうだっただろうか。
ただただ平凡でよく言えば平和な、悪く言うならば退屈な日々の繰り返しとさえ感じていた覚えがある。
「自分で自分を分析するのは少し難しいけれど私は明日香ちゃん達のようにしっかりした子どもではなかったと思う」
これは本心だ。
私は当然世界はおろか自分の命を賭けて戦った経験など一度もない。
平和な世界で安全な籠の中で大人に守られた上で生活していたようなものだった。
きっとこの世界の子ども達は私よりずっと早くに大人にならなければならない状況に身を置いている。
無論それを哀れんでいるわけではないが自身が世間的に大人側になった今、やはり少し心配に思う気持ちがないとは言えない。
「意外ですね。あまり想像出来ないですよ、名前さん凄く落ち着いた大人の女性って感じがして…正直私にとっては憧れの女性ですから」
明日香ちゃんはそう言って少し照れくさそうに笑った。
私は彼女の魅力を十分すぎるほど知っていると思っている。
確かに自身が大人になった今しっかりとした彼女にまだ幼い部分が残っている事も気付いている。
だが私を含め私の周りに学生時代こんなにしっかりとした女の子はいただろうか。
記憶を辿ったところで無意味だろう。
答えは分かりきっているのだから。
「私はみんなを守ってあげられる程の力はないの。だからそれは私には勿体無い言葉だと思う。
でもね、守る事は出来ないけれどほんの少し荷物を一緒に持つ事は出来ると思いたいから」
私がいなくても成立している世界に紛れ込んだ私。
異物でしかない私を認めてくれた彼女。
「自惚れに聞こえるかもしれない。
それでも私を信頼してくれてありがとう」
その気持ちを裏切らぬよう、彼女を失望させぬよう、私は生きていきたい。
私の言葉に彼女は嬉しそうに笑った。
それはまだ幼さを残したとても愛らしい笑顔だった。