「ここにいる以上当然そうなるわよね」
こちらに来てから自室に帰れば一人言が増えた気がする。
それは吐き出してしまえる時吐き出してしまわないと十代君達の前でうっかり口を滑らせてしまうかもしれないから、なんて。
意識していなくて気付かなかっただけで私は元々そうだったのかもしれない。
自分と向き合う機会が増えた。
けれど答えは出ないまま。
だからこそ何度も悩むのだ。
「デュエルゾンビになっている間私の心はどうなってしまうんだろう」
手首に装着したそれを見てため息をついた。
ここにいる以上それは逃れられなかった。
まるで理屈の分からない、元いた世界ではあり得ない代物。
それがどんなものか知っているからだろうか。
それ程重量があるわけではないそれは手枷を着けられているかのよう感じられた。
デュエルゾンビになった生徒が元の人格を取り戻した後その時の事に触れる描写は描かれていない。
当然だろう。
そんなことは人として配慮に欠ける。
覚えていない、そう思うべきだ。
いや、そうであってほしいと願っているだけかもしれない。
けれどそれだって自分が気付かない間に時が進んでしまっていた事を知った彼らはどう感じたのだろうか。
この世界の子ども達はきっと私より数奇な事象に慣れている。
それを実感する度に自分の弱さ、無力さを感じて嫌になる。
そんな事を考えていたその時だった、PDAが着信を知らせたのは。
「...よかった」
連絡をくれたのは明日香ちゃんだった。
一緒にお弁当を作りませんか、と。
突然のお誘い。
少し考えて彼女がなぜそのお誘いの声を私にかけてくれたのか気が付いた。
ヨハン君同様にこの島にやって来た留学生、オブライエン君と十代君がデュエルをおこなったのだと。
無事なのは知っている。
十代君はこの後元気よく弁当を平らげて元気に保健室を飛び出していく、分かっている。
私は彼女に了承の返事をして通話を終了した。
精一杯動揺を隠し普段通りの声色で彼女と話したつもりだ。
PDAを握りしめる手が震える。
大丈夫、大丈夫だから。
目を瞑りゆっくりと深呼吸した。
ゆっくりと目を開ける。
自身の頬をぱちんと叩いて気合いを入れる。
自惚れているかもしれない、でもここにはもう私を気をかけ私を認めてくれている人達がいる。
だから怖がってはいけない。
怖がっていることを悟られてはいけない。
いつ終わるかも分からない。
それを惜しむ程私にとってもうここで出会った人達は特別な存在になっている。
会いに行こう、きっと彼は、彼女は私を笑って迎えてくれるのだから。